Chicago - Chicago 13 (1979)
Chicago 1979

Chicago - Chicago 13 (1979)

Rock Pop Jazz Funk / Soul Pop Rock Jazz-Rock Disco Jazz-Funk

Chicago『Chicago 13』(1979)について

Chicagoの『Chicago 13』は、1979年にUS Columbiaから出た通算13作目のスタジオ・アルバムだ。オリジナル・リリースは同年で、レーベル表記はFC 36105。シカゴというバンドが、ホーンを前面に出したジャズ・ロックの大編成サウンドから、70年代後半のポップ寄り、AOR寄りの流れへ移っていく時期の作品として位置づけられる一枚である。

この時期のChicagoは、すでに60年代末から70年代前半にかけて築いた「ブラス・ロック」の代表格という印象に加えて、ピーター・セテラの存在感が強まり、ヴォーカル中心の楽曲が前に出る編成になっていた。『Chicago 13』もその流れの中にありつつ、ファンク、ディスコ、ポップ・ロック、ジャズ・ロックが同居する内容になっている。70年代末のアメリカン・バンドらしい、時代の変化に向き合った作品集だ。

制作背景とバンドの状況

録音は1979年5〜6月、カナダ・ケベック州モラン・ハイツのLe Studio、ハリウッドのA&M Studios、ニューヨークのA&R Recordingで行われた。プロデュースはフィル・ラモーンとバンド自身の共同。ラモーンは当時、ポップ寄りの洗練された録音で知られており、その手つきは本作にもはっきり出ている。

前作までのChicagoと比べると、ここではホーン・アンサンブルの押し出しが少し整理され、リズム隊とヴォーカルの比重が増している。これは70年代末のディスコ、ファンク、都会的なロックの空気とも重なる。バンドとしては、テリー・キャスの死去後に迎えたドニー・ダカスが参加した最後のアルバムでもあり、編成面でも節目の一作になっている。

収録曲の中心にある「Street Player」

本作を語るうえで外せないのが冒頭曲「Street Player」。作曲はダニー・セラフィンとデヴィッド・“ホーク”・ウォリンスキーの共作で、Chicago版はディスコ・トラックとして再構成されたものだ。リード・ヴォーカルはピーター・セテラ。ドラムをループさせたような推進力のある作りで、メイナード・ファーガソンのトランペット・ソロやアイアート・モレイラのパーカッションも加わり、バンドの従来のホーン・ロックとは少し違う手触りになっている。

この曲は後年、1995年にThe Bucketheadsの「The Bomb!」でサンプリングされ、さらに2009年にはPitbull「I Know You Want Me (Calle Ocho)」でもホーンが使われた。1979年時点ではシングルとして大きなヒットにはつながらなかったが、ダンス・ミュージック側から再評価された経緯がある。Chicagoの曲が90年代以降のクラブ・シーンに接続していく流れは、この曲の存在感を強めている。

「Must Have Been Crazy」とアルバムの輪郭

先行シングルの「Must Have Been Crazy」は、ドニー・ダカスが作曲とリード・ヴォーカルを担った曲で、1979年8月に発表された。Hot 100では83位止まりだったが、アルバム全体の中ではギター主体のロック色を示す一曲として機能している。Billboardは本作について、バンドのトレードマークであるブラスを強く前面に出すのではなく、ファンキーでギター主体の南カリフォルニア風ロックとして捉えていた。

実際、全体を通して聴くと、ホーンが主役として鳴り続けるというより、楽曲ごとの色分けの中で必要な場面に入ってくる印象がある。Chicagoの初期作にあるような組曲的な展開や、分厚いブラス・アレンジに比べると、かなりコンパクトで、1979年のラジオ向けの感触が前に出る。とはいえ、その中でも演奏の精度は高く、アンサンブルのまとまりは崩れていない。

作品の位置づけ

『Chicago 13』は、バンドにとって商業的にも転換点の一枚だ。Billboard 200では最高21位、ゴールド認定を獲得したが、トップ20入りを逃した初めてのスタジオ・アルバムでもあった。デビュー作以来、最も低い順位という点も含めて、70年代後半のChicagoが以前ほど一枚岩のヒット街道ではなかったことを示している。

一方で、このアルバムにはメンバー全員が作曲に関わっているという特徴がある。Chicagoの作品の中でこの条件に当てはまるのは『Chicago VII』と本作だけで、バンド内の役割分担が広く機能していた時期の記録でもある。Terry Kathの不在後、Peter Ceteraのヴォーカルが中心になりつつ、Danny Seraphineらリズム面の意匠も強く出ている点が、作品の性格を決めている。

サウンドの印象

この盤を聴くと、Chicagoが単なるホーン・ロックのバンドではなく、時代に応じてファンク、ディスコ、ポップ・ロックへ寄っていく柔軟さを持っていたことがわかる。特に「Street Player」のような楽曲は、後のダンス・ミュージックとの接点まで見える作りで、70年代末のクロスオーバー感覚をよく表している。逆に、初期のChicagoを期待すると、ホーンの密度や長尺の展開はかなり抑えめに感じるはずだ。

US盤にはカスタムの歌詞インナー・スリーブが付き、トラックタイムの記載はない。なお、このUSプレスはSanta Maria工場由来の「S」刻印がランアウトに入る仕様で、当時のColumbia盤らしい情報も残している。ジャケットや盤面の細部も含めて、1979年のアメリカン・ロックの空気がそのまま封じ込められた一枚である。

Chicagoの中では、黄金期の大作感とは少し違い、よりコンパクトで都市的なアルバムとして聴かれる作品だ。ホーン・ロックの看板を背負いながら、ディスコやファンクの側へ踏み込んだ、その移行の途中に置かれた記録である。

トラックリスト

  1. A1 Street Player
  2. A2 Mama Take
  3. A3 Must Have Been Crazy
  4. A4 Window Dreamin'
  5. A5 Paradise Alley
  6. B1 Aloha Mama
  7. B2 Reruns
  8. B3 Loser With A Broken Heart
  9. B4 Life Is What It Is
  10. B5 Run Away

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
Share
戻る

あわせて聴きたい "Disco"

toast