Buddy Miles - Them Changes (1970)
Buddy Miles『Them Changes』(1970年)について
Buddy Milesの『Them Changes』は、1970年にMercuryから発表されたソロ・アルバムである。Jimi HendrixのBand of Gypsysでドラムとボーカルを担当した直後に出た作品で、Milesが単なる名脇役ではなく、歌い手であり作曲家でもあることを前面に出した一枚として知られている。ジャズ、ロック、ファンク/ソウルをまたぐ内容で、ブルース・ロックやフュージョンの要素も見える。Band of Gypsysの余韻がまだ強く残る時期の作品だが、ここではその延長線上にあるだけでなく、Buddy Miles自身の名前で成立する音楽がはっきり示されている。
Band of Gypsys直後のソロ作という位置づけ
本作の核になるのは、表題曲「Them Changes」である。この曲はBuddy Miles自身のオリジナルで、もともとは1970年1月1日のフィルモア・イースト公演でBand of Gypsysによって演奏され、ライブ盤『Band of Gypsys』では「Changes」という題で収録された。その後、1970年6月に本作でスタジオ録音としてあらためて発表された流れになる。つまり、この曲はHendrix周辺の現場から生まれ、Miles本人のソロ表現へ戻ってきた楽曲でもある。
アルバム全体を通してみると、Buddy Milesのドラムはもちろん、ボーカルの存在感が強い。演奏はタイトで、リズムの置き方が明確だ。ギター、ベース、ホーン、鍵盤が前に出る場面でも、曲の芯は崩れない。Band of Gypsysの重心の低いグルーヴを受け継ぎながら、よりソウル寄り、ファンク寄りの運びになっているのがこの作品の特徴だろう。
「Them Changes」の強さ
代表曲である「Them Changes」は、アルバムの顔として十分に機能している。リフが分かりやすく、歌のフレーズも耳に残りやすい。Billboard Hot 100では62位止まりだったが、FMラジオを中心に広く浸透し、結果としてBuddy Milesを語るうえで外せない一曲になった。後年にはCarlos SantanaやThundercatが取り上げており、ヒップホップを含む後続のアーティストにもサンプリングされている。単発のヒットに終わらず、長く参照される曲として残ったわけだ。
実際に聴くと、この曲は派手な技巧で押すタイプではなく、反復するグルーヴと歌の勢いで引っ張る作りになっている。Hendrixの周辺で鳴っていたロックの攻撃性と、ソウル・ミュージックの身体性が近い距離で混ざっている感触がある。そこが、同時代のファンク・ロックやソウル・ロックの中でも印象を残す部分である。
アルバムとしての評価と時代背景
『Them Changes』は、ジャズ・アルバム・チャートで8位、Billboard 200で35位を記録し、翌1971年にはR&Bアルバム・チャートで14位に入っている。ロックの文脈だけでなく、R&Bやソウルのリスナーにも届いたことが数字からも分かる。評論家Steve Kurutzが「ソウルに根ざしたロックの、知られざる名盤のひとつ」と評しているように、Hendrix一派の周辺作という見方だけでは収まりきらない内容だ。
1970年という年は、ロックがブルース、ソウル、ジャズの境界を越えていく動きが加速していた時期でもある。Milesのこの作品も、その流れの中にある。Milesはもともとセッションマンとしても名を上げた人物だが、このアルバムではそうした経歴を踏まえつつ、リーダーとしての輪郭を見せている。Wilson PickettやMichael Bloomfield、そしてJimi Hendrixといった名前が並ぶキャリアの中で、本作は「誰かのバンドにいた人」という印象を越えて、Buddy Miles自身の作品として強く立ち上がる一枚である。
Mercuryオリジナル盤について
このUS盤はMercuryのSR 61280で、1970年に出たオリジナル盤である。MercuryのLPラベルとしては、1969年以降に使われたオレンジ/レッド系のデザインの時期に当たる。7桁のカタログ番号体系が1970年4月から導入されたため、この盤はその時期以降のリリースとして位置づけられる。Buddy Milesの初期ソロ作を手に取るうえでは、まさに当時の空気を反映したオリジナル期の一枚として見るのが自然だ。
『Them Changes』は、Band of Gypsysの記憶を引き継ぎながら、Buddy Milesのソロ・アーティストとしての輪郭を明確にした作品である。代表曲の強さ、ソウルとロックの接点、そして後年まで残る影響力。そうした要素が、1970年という年の熱をそのまま閉じ込めている。
トラックリスト
- A1 Them Changes 3:20
- A2 I Still Love You, Anyway 4:13
- A3 Heart's Delight 4:06
- A4 Dreams 4:52
- B1 Down By The River 6:20
- B2 Memphis Train 2:55
- B3 Paul B. Allen, Omaha, Nebraska 5:31
- B4 Your Feeling Is Mine 2:11