Devendra Banhart - Ma (2019)
Devendra Banhart 2019

Devendra Banhart - Ma (2019)

Folk, World, & Country Folk

Devendra Banhart『Ma』

デヴェンドラ・バンハートが2019年に発表した10作目のスタジオ・アルバムが『Ma』だ。タイトルは「母」を意味する語として語られつつ、日本語の「間(space)」にも結びつくものとして本人が説明している。作品の中心には母性があり、個人的な記憶や家族へのまなざしが曲ごとに置かれている。

制作背景と録音の経緯

制作は、長年の盟友ノア・ジョージソンとの共同作業で進んだ。きっかけのひとつになったのは、日本ツアーの直後に京都の由緒ある寺院で録音する機会を得たことだった。寺での録音は滞在1時間ほどとされ、その後は米カリフォルニアでも録音を続けている。録音場所が寺院からスタジオへ移っていく流れも、この作品の経緯を語るうえで重要な要素になっている。

参加面では、ケイト・ル・ボンが「Now All Gone」にコーラスで参加し、ヴァシュティ・バニヤンが「Will I See You Tonight」でデュエットしている。曲ごとの人選も印象的で、アルバム全体のクレジットの中でも目を引く部分だ。Nonesuchからのリリースで、140gの透明な赤盤仕様、500枚限定、インディー・ストア限定という形で出された。

時代の文脈

『Ma』は、初期に築いた“フリーク・フォーク”的な実験性から、より整ったソングライティングへ移っていった時期の到達点として扱われている。2019年時点のバンハートは、ラテン諸語や多文化的な感覚を自然に曲へ織り込む存在として見られ、アルバムもその延長線上に置かれている。ヴェネズエラとの結びつきや、政治的・社会的な緊張も背景として語られていて、個人的な記憶と地理的アイデンティティが重なる作品として紹介されている。

批評では、親子関係、喪失、家族への視線が軸にあるとされ、同時代のインディー/フォークの中でも、言葉と土地の距離感を詰めていくような作品として受け止められた。The FADERはバンハートの静かな側面に触れつつ、初期作を思わせる感触もあると述べている。音の印象については、musicOMHが“mellow, contented songs”と評し、Uncutは「13曲のグルーヴする、質感豊かな歌曲詩」と要約。Pitchforkは「やさしさと鋼のような強さ、憂いと高揚が同居する」と書いている。寺院録音由来の空気感や、余白を生かした音づくりに触れる日本語媒体もあった。

評価と反応

批評面では概ね好評で、Metacriticの平均スコアは79/100、12件のレビューが集まっている。チャートでは、全英アルバム・チャートで最高16位、Americana Albums Chartで最高5位を記録した。大きなヒット作というより、制作背景と曲の配置がはっきりしたアルバムとして受け止められている印象が強い。

「Now All Gone」のケイト・ル・ボン、「Will I See You Tonight」のヴァシュティ・バニヤンという参加者の並びも含めて、『Ma』は2019年のバンハートの仕事を知るうえで外しにくい一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Is This Nice? 2:54
  2. A2 Kantori Ongaku 3:41
  3. A3 Ami 3:55
  4. A4 Memorial 4:38
  5. A5 Carolina 2:32
  6. A6 Now All Gone 3:37
  7. B1 Love Song 4:22
  8. B2 Abre Las Manos 3:34
  9. B3 Taking a Page 3:36
  10. B4 October 12 3:12
  11. B5 My Boyfriend's In The Band 3:30
  12. B6 The Lost Coast 3:10
  13. B7 Will I See You Tonight? 3:23

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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