The Subterraneans - Down To Earth (1967)
The Subterraneans『Down To Earth』について
The Subterraneansの『Down To Earth』は、オランダのビート系再発レーベルOp Artから1995年に出た1枚で、オリジナルは1967年の作品として扱われるレコードだ。アーティストはオランダ出身のデュオで、Henk Jansen(Downy Boy Jason)とJohn Bakker(Sleepy John Baker)によるもの。名前の通り、派手な装飾よりも、曲そのものの骨格や演奏の手触りを前に出すタイプの作品として捉えやすい。
この盤は、ブルース、フォーク、カントリー、R&Bといったアメリカン・ルーツの要素を、1960年代後半のヨーロッパの感覚でまとめた内容として見えてくる。オランダのグループが、英米の流行をただなぞるのではなく、自分たちの小さな編成と歌の距離感で鳴らしているところに、この作品の面白さがある。大編成のロックでも、サイケデリックな実験盤でもなく、歌と演奏の関係が近い、素朴で直接的な作りだ。
作品の位置づけ
The Subterraneansは、Henk JansenとJohn Bakkerの2人組として紹介される。個々の名義も含めて、いかにも地元のシーンから出てきたプレイヤーらしい気配がある。『Down To Earth』というタイトルも、その音の方向とよく合っている。気負ったコンセプトより、演奏の芯、歌の運び、曲の輪郭をそのまま置いたような印象が残る。
1967年という年を考えると、英米ではロックの拡張が進み、ブルースやフォークも電化・長尺化・サイケ化へ向かっていた時期だが、この作品はそうした大きなうねりの外側で、もっと地に足のついたルーツ志向を保っているように見える。オランダのグループが同時代の流行に対して、あえて素材の原型に近いところを掘っている、そんな位置づけが感じられる。
音の手触りと聴きどころ
このアルバムでまず耳に残るのは、演奏の距離の近さだ。ギター、歌、リズムの組み立てが、派手に広がるより先に、言葉やフレーズの細部を見せる方向に寄っている。ブルース由来の推進力と、フォークの語り口のような素直さが同じ画面に収まっていて、曲ごとの温度差も大きすぎない。録音全体にも、スタジオ作品としての整え方と、演奏をその場で置いたような感触が同居している。
実際に聴くと、まず派手なフックで押すタイプではなく、反復するリズムと短いフレーズで耳を引いていく作りに気づく。1曲ごとの情報量を増やしすぎず、歌の節回しやギターの刻み方で変化を出すので、アルバム全体が一本の流れとしてまとまりやすい。こうした作りは、同時代の英米フォーク・ブルース系の録音や、アコースティック寄りのビート作品と並べて聴くと、共通点が見えやすい。
注目したい楽曲の聴こえ方
『Down To Earth』というタイトル曲は、作品の方向をそのまま示すような存在として耳に入ってくる。大きく展開するより、歌と伴奏の関係を保ちながら進む構成で、アルバム全体の基準点になっている印象だ。曲の骨組みがはっきりしているので、メロディの置き方やリズムの揺れ方がそのまま伝わりやすい。作品名を冠した曲にふさわしく、過不足のないまとめ方になっている。
ブルース寄りの曲では、ギターの刻みと歌の応答関係が見どころになる。リフで引っ張るというより、語りの流れの中で少しずつ熱を上げていくタイプで、演奏の派手さよりも、テンポ感と間の取り方が印象に残る。フォーク寄りの曲になると、さらに輪郭が細くなり、声の置き方やコードの変化が前に出る。どの曲も、英米の有名バンドのような大仰さではなく、近い距離で鳴る小編成の強みがある。
1960年代後半の文脈で見ると
この作品は、1960年代後半のヨーロッパにあった、アメリカン・ルーツへのまなざしをよく示している。ブルースやフォークは、当時の若い演奏家にとって単なる輸入音楽ではなく、歌詞の運びや演奏の基本を学ぶための土台でもあった。その文脈で見ると、The Subterraneansの『Down To Earth』は、英米の有名グループを追うのではなく、素材を自分たちの編成に落とし込んだ記録として読める。
オリジナルの1967年盤と1995年のOp Art盤では、時代がかなり離れているぶん、聴き手が受ける印象も変わりやすい。オリジナルは当時の空気の中で出た作品としての意味があり、1995年盤はその音源を後年に再び手に取れる形にしたものだ。再発盤としては、作品そのものを別の時代へ運び直した存在であり、60年代のローカルな記録を現在に残す役割が大きい。
まとめ
The Subterraneans『Down To Earth』は、オランダのデュオが1960年代後半に残した、ルーツ志向のはっきりした作品だ。ブルース、フォーク、カントリー、R&Bの要素を、派手さよりも演奏の近さでまとめていて、作品全体に一貫した地味さと誠実さがある。大きな名声や強い物語で語られるタイプではないが、1967年という時代の中で、ローカルな視点からアメリカン・ルーツを鳴らした記録として見ると、輪郭がはっきりしてくる一枚だ。
トラックリスト
- A1 Psycho-Brainwashing Blues
- A2 Mister Judge
- A3 Trouble In Mind
- A4 Lost Train Blues
- A5 Poor Boy
- B1 Bring It On Home
- B2 Help Me
- B3 Everybody Will Need K.J.
- B4 Confessin' Up My Mind
- B5 Long Time Gone
- B6 Inside Out/Upside Down
- B7 Explain All This Stuff To Me