The Albion Band - A Christmas Present From The Albion Band (1985)
The Albion Band 1985

The Albion Band - A Christmas Present From The Albion Band (1985)

Folk, World, & Country Folk

The Albion Band『A Christmas Present From The Albion Band』について

The Albion Bandは、アシュリー・ハッチングスを軸に英国フォーク/フォークロックの流れをつないできたバンドで、この『A Christmas Present From The Albion Band』は、その名前どおりクリスマスをテーマにまとめられた作品だ。オリジナルは1985年のリリースで、ここで取り上げる盤は1987年にUKのSpindrift Recordsから出たものになる。タイトルから想像できるように季節盤ではあるが、単なるキャロル集ではなく、伝統曲、オリジナル曲、語りや朗読を交えた構成になっているのが特徴だ。

アルビオン・バンドは、もともとシリー・コリンズの伴奏者たちを指す名前として使われ、その後アシュリー・ハッチングスが中心となって独立したグループとして発展した。フェアポート・コンヴェンションやスティーライ・スパンとも地続きにある英国フォーク・ロックの文脈の中で、アコースティックとエレクトリックを行き来する編成感が一貫している。この作品も、その系譜を保ちながら、年末の題材を扱った企画盤として位置づけられる。

作品の性格と聴こえ方

収録は16曲構成で、伝統的なクリスマス・ソングや民謡的な素材に加え、語りの要素が差し込まれている。中心的な歌声としてはキャシー・レスーフの存在感が大きく、作品全体の印象をかなり左右している。実際に聴くと、曲ごとの色合いをつなぐ役目を担っているのがわかりやすい。合唱的な場面、素朴なトラッドの進行、朗読を挟む構成が続くため、1曲ずつの独立性よりも、アルバム全体でひとつの年末の風景を作るような流れがある。

この盤の面白さは、クリスマス・アルバムでありながら、いかにも定番のヒット曲を並べた作りではないところにある。英国フォークの演奏でよく見られる、歌い継がれた素材を丁寧に扱う姿勢が前面に出ていて、そこに朗読や引用が加わることで、単なる季節商品よりも少し文学寄りの手触りが出ている。音の密度は派手すぎず、楽器の鳴りや声の重なりを追いやすい作りだ。

1985年のアルビオン・バンドにおける位置づけ

1980年代のアルビオン・バンドは、メンバー変動を重ねながら活動を続けていた時期で、この作品もその中で出てきたものだ。バンドの核にあるのは、英国フォークの伝統を現代のバンド・サウンドに置き換える感覚で、フェアポート・コンヴェンションと比較されることが多いのも納得できる。とはいえ、この盤では通常のライヴ感や土臭さだけでなく、季節企画としてのまとまりが前に出るため、バンドの別の側面が見える。

また、後年のアルビオン系クリスマス企画へつながる下地としても見ておきたい。年末の歌を扱うだけでなく、読み物のような構成を持たせた点は、単発の記念盤というより、のちの再演や継続的なクリスマス・ショウの感覚に近い。フォーク・クラブやホールでの季節公演をそのまま一枚に閉じ込めたような性格がある。

1987年盤について

ここでのUK盤はSpindrift Recordsからの1987年リリースで、ラベルにはMaking Wavesによる製造・流通のクレジットが入る。オリジナルの1985年盤から時間をおいて出た再発盤にあたるため、作品そのものの内容は1985年時点のものとして捉えるのが自然だ。なお、この盤ではジャケット表記とセンターラベルの曲数表記に違いがあり、A面の「Bells Of Paradise & I Sing Of A Maid」は2曲に、B面の一部は3曲に分かれて記載されている。こうした表記差も、レコード盤ならではの面白さだ。

収録素材とエピソード

収録曲には伝統曲のほか、テキストを朗読するパートも含まれている。「Extracts From Parnell's “History Of The First World War”」は、実際にはPurnellから刊行された8巻本の書籍から取られた文章で、表記に綴りの揺れがある。こうした引用の使い方からも、この作品が単なる音楽集ではなく、言葉と歌を並べた構成作品として作られていることがわかる。

また、曲の分割表記の違いが示すように、レコードの見た目と実際のトラック構成にズレがあるのもこの盤の特徴だ。音楽そのものに加えて、盤面やクレジットを読み解く楽しみがある。フォーク作品では、こうした細部が作品理解につながることが多い。

同時代の文脈

同時代の英国フォーク/フォークロックでは、伝統曲を現代的な編成で鳴らす動きが続いていた。アルビオン・バンドはその中心的存在のひとつで、フェアポート・コンヴェンション、スティーライ・スパンと並べて語られることが多い。『A Christmas Present From The Albion Band』は、その中でもクリスマスという題材に寄せた珍しい一枚で、バンドの歴史の中でも企画性の強い作品として見られる。

チャート面では大きな成功作として扱われた形跡はなく、むしろフォーク・ファン向けの季節盤として受け止められた作品だと考えられる。それでも、年末のレパートリーをアルビオン流にまとめたことで、バンドの持つ英国的な民謡感覚と、アンサンブルのまとまりがよく伝わる内容になっている。

クリスマス・アルバムという枠の中で、伝統曲、語り、バンド・サウンドをひとつにまとめた作品。その性格は、アルビオン・バンドの活動史の中でもかなりはっきりした輪郭を持っている。

トラックリスト

  1. A1 In The Bleak Midwinter
  2. A2 Tomorrow Shall Be My Dancing Day
  3. A3 Extract From Phillip Stubbes' "Anatomie Of Abuses", 1583
  4. A4 The Official Brandle (Ding Dong Merrily On High)
  5. A5 Worcester
  6. A6 Christmas Must Be Tonight
  7. A7 Bells Of Paradise & I Sing Of A Maid
  8. A8 Extract From Charles Dickens' A Christmas Carol
  9. A9 Welch Rabbit
  10. B1 Shepherds Arise
  11. B2 Personent Hodie
  12. B3 Extract From Thomas Hardy's "Under The Greenwood Tree"
  13. B4 On The Christmas Night All Christians Sing
  14. B5 While Shepherds Watched Their Flocks
  15. B6 Keep The Homefires Burning, Extracts From Parnell's "History Of The First World War" & Es Ist Ein Ros
  16. B7 Somerset Wassail

動画プレイリスト

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Folk"

toast