Eloiteron - Lost Paradise (1981)
Eloiteron『Lost Paradise』(1981)について
スイスのクラシカル・ロック・バンド、Eloiteronが1981年に発表した『Lost Paradise』は、キーボードとブラスを前面に出した編成感がはっきり伝わる作品だ。アーティストプロフィールでも示されている通り、中心は鍵盤と金管の厚みで、その上にロックの推進力を載せていくタイプの音作りになっている。出身地はスイスだが、演奏の骨格にはドイツ圏のロックを思わせる流れがあり、ヨーロッパ大陸のプログレ/シンフォニック・ロックの文脈で捉えやすい一枚になっている。
リリースはスイス国内での自主制作盤、レーベル表記も「Not On Label (Eloiteron Self-released)」となっている。大手レーベルの色がつかないぶん、バンド自身の意図がそのまま出やすい作品でもある。1981年という年は、70年代的なプログレがひと区切りを迎えたあとで、なおその語法を引き継ぐバンドが各地に残っていた時期にあたる。『Lost Paradise』も、その流れの中で作られたアルバムとして見ると輪郭がつかみやすい。
作品の全体像
このアルバムの基本は、メロディを追うよりも、曲の中で音の層がどう重なるかにある。ギター主導で押し切るタイプではなく、キーボードの和声、ブラスの鳴り、リズム隊の進行がまとまってひとつの景色を作る構成。クラシカル・ロックという言葉がそのまま当てはまる場面が多く、組曲的な組み立てや、途中で表情を切り替える展開にも耳が向く。
作品全体には、華やかな装飾を並べるだけではない、やや端正な運びがある。音数は多いが、むやみに詰め込む感じは薄く、各パートの役割が比較的はっきりしている。ブラスが入ることで、シンフォニック・ロックの中でも室内楽的な密度より、もう少し厚みのある推進感が前に出るのも特徴だろう。
同時代の文脈
1981年のヨーロッパでは、プログレはすでに初期のピークを過ぎていた一方で、各国に独自の継承者が残っていた。Eloiteronもその一角として見ると、英国式の大仰な組曲路線というより、ドイツ圏のロックに近い硬質さと、シンフォニックな広がりを合わせ持つ存在に映る。ジャーマン・ロックの影響を感じさせるというプロフィールの説明にも、実際の音の方向性は重なるはずだ。
比較対象を挙げるなら、英国プログレの流麗さよりも、欧州大陸のバンドに見られる実直なアレンジ志向が近い。派手な自己主張より、曲の進行の中で少しずつ景色を変えていく手つき。そうした作りが、1981年という時代の中で独特の位置を作っている。
注目したい曲の聴きどころ
収録曲の詳細な曲順情報が手元にないため、ここでは曲単位の断定は避けるが、このアルバムでまず注目したいのは、キーボードが主導権を握るパートだ。Eloiteronの持ち味は、単なる伴奏としての鍵盤ではなく、楽曲の構造そのものを動かす鍵盤の使い方にある。和音の置き方、フレーズのつなぎ方、ブラスとの受け渡しが見どころで、そこにバンドの性格がよく出る。
もうひとつの聴きどころは、展開の切り替えだ。プログレ/シンフォニック・ロックでは、静と動の落差や、途中でテンポ感を変える構成が重要になるが、『Lost Paradise』でもそのタイプの作りが核になっているように感じられる。長いフレーズをただ伸ばすのではなく、場面ごとに音の密度を調整していくあたりに、作編曲面の意識が見える。
この作品の立ち位置
Eloiteronにとって『Lost Paradise』は、バンドの方向性をそのまま示す初期の重要作と捉えやすい。自主制作という形も含めて、外側の流行に寄りかからず、自分たちの編成と音色を前面に出したアルバムとしてまとまっている。メンバーにはChristian Frey、Michi Winkler、Dani Reimann、Harry Schärer、Martin Frey、Stefan Freyが名を連ねており、複数の楽器が絡み合う前提のアンサンブルだったことがうかがえる。
派手なヒット曲を前提にした作品ではなく、アルバム全体の流れで聴く性格が強い。だからこそ、1曲ごとの印象よりも、通して聴いたときに残る音の配置や、ブラスと鍵盤の重なり方が記憶に残りやすい。1981年のスイスで、こうしたクラシカルなロックの語法をまとった作品が自主制作で残されていること自体が、この時代のヨーロッパ・ロックの広がりをよく示している。
トラックリスト
- A1 Time Reflection 3:32
- A2 Once 4:54
- A3 Fantasia 5:01
- A4 Where 3:32
- A5 Yapituttiperslikkenberg 3:18
- B1 Hommage À M... 3:07
- B2 Octopus 3:58
- B3 Tree Of Conflicts 6:45
- B4 Old Man's Voice 7:02