Argent - Encore (1974)
Argent『Encore』――移行期のバンドを記録したライヴ盤
Argentの『Encore』は、1974年にUSのEpicから出たライヴ・アルバムである。Rod Argentを中心に、元Zombiesのメンバーとして知られる彼が率いたこのバンドは、70年代前半のブリティッシュ・ロック/プログレッシブ・ロックの文脈で語られることが多い。本作はスタジオ盤の完成度を競うタイプの作品というより、当時のArgentがステージ上でどんな演奏をしていたかをそのまま残した記録として位置づけやすい一枚である。
このUS盤はゲートフォールド仕様で、ランアウトはスタンプ/エッチング入り。レーベルはEpic、カタログ番号はPEG 33079。オリジナルの年は1974年で、ライヴ録音としての空気感を強く持つ盤である。後年の再発では音の見え方が変わることもあるが、この盤はまず1974年当時の空気を伝えるアナログ・リリースとして見てよさそうだ。
バンドの転換点にある作品
Argentは1969年にロンドンで結成され、Rod Argent、Russ Ballard、Jim Rodford、Bob Henritを核に活動してきた。『Encore』が出た頃は、共同創設者のRuss Ballard脱退後の編成移行期にあたり、John VerityやJohn Grimaldiを加えた体制の演奏が収められている。つまり、いわば“次のArgent”へ向かう途中の姿を切り取った作品であり、固定された代表作というより、バンドの流れの中で聴くと輪郭がつかみやすいアルバムである。
収録曲には「Hold Your Head Up」や「God Gave Rock and Roll to You」といったバンドの代表曲につながる曲群が含まれ、さらに「Time of the Season」や「I Don’t Believe in Miracles」など、過去のレパートリーを見渡す構成になっている。単なるライヴの記録というより、当時のステージでバンドが持っていた曲の層をまとめて見せる内容である。
演奏の特徴と聴きどころ
本作でまず目立つのは、曲の尺が伸びることによる展開の多さである。AllMusicの評でも、Argentはプログ寄りの要素と硬質なポップ/ロックを両立し、長めのジャムでも推進力を保っていたとされる。実際、代表曲「Hold Your Head Up」も11分超の長尺で収められており、シングル版の骨格とは別の、ステージ上での引き延ばしや応酬が前に出る。
一方で、冒頭曲「The Coming of Kohoutek」はやや寄り道の多い構成として受け取られたようで、ライヴ盤ならではの“曲を広げる”性格が前面に出ている。ここはスタジオ版のような整理された見通しより、演奏の流れを優先した場面といえる。そうした部分も含めて、当時のブリティッシュ・ロック・バンドがライヴでどこまで曲を拡張していたかが見えやすい。
同時代の文脈
Argentは、Zombies由来のメロディ感を持ちながら、より硬質なロック色やプログレ的な組み立てへ寄っていったバンドとして見られることが多い。70年代前半の英国では、YesやGenesisのような大規模なプログレ勢だけでなく、Emerson, Lake & PalmerやJethro Tull、さらにはハード寄りのバンドまで、ライヴで曲を伸ばしながら構成を見せる流れが強かった。『Encore』はその中で、技巧の誇示に寄りすぎず、ロック・バンドとしての推進力を残している点が印象に残る。
また、代表曲「Hold Your Head Up」は全英5位、「God Gave Rock and Roll to You」は全英18位を記録しており、Argentが一時期しっかりヒットを持っていたことも確認できる。本作はそうした代表曲を含むライヴ盤ではあるが、作品単体で大きなチャート成果を残したアルバムとして語られることは少ない。むしろ、バンドの中盤以降の動きや、編成変化の過程を知るための資料性が高い。
音質について
初期アナログ盤はプレス状態があまり良くなかったとされ、後年のCD再発では音の改善が評価されたという。ライヴ盤では音の輪郭が作品の印象を大きく左右するが、『Encore』はその点でも後年の再発で聴きやすさが増したとされる。とはいえ、元来がステージ収録の作品なので、整いすぎた均質さより、会場の響きや演奏の揺れを含めて受け止めるタイプのアルバムである。
『Encore』は、Argentの代表曲を含みつつ、バンドの編成変化とライヴでの実践をそのまま残した一枚である。スタジオ盤のように完成形を示すというより、1974年時点のArgentがどこにいたのかを示す記録として、位置づけがはっきりしている作品だ。
トラックリスト
- A1 The Coming Of Kohoutek 10:24
- A2 It's Only Money (Part One) 3:48
- A3 It's Only Money (Part Two) 4:58
- B1 God Gave Rock'N'Roll To You 6:45
- B2 Thunder And Lightning 6:10
- B3 Music From The Spheres 9:08
- C1 I Don't Believe In Miracles 3:26
- C2 I Am The Dance Of Ages 9:08
- C3 Keep On Rolling 5:20
- D1 Hold Your Head Up 10:45
- D2 Time Of The Season 6:25