George Harrison - All Things Must Pass (1970)
George Harrison『All Things Must Pass』──ビートルズ後の空白を埋めた3枚組
George Harrisonの『All Things Must Pass』は、1970年にUKのApple Recordsから出たソロ作で、彼のキャリアの中でも特に重要な位置を占めるアルバムだ。The Beatlesの中ではLennonとMcCartneyの存在感が強く、作曲面でも長く脇に回ることが多かったHarrisonが、その蓄えてきた曲を一気に放出した作品として知られている。3枚組LPという大きな器に収められた内容は、単なる“ソロ第一弾”ではなく、ビートルズ解散前後の空気をそのまま引き受けた記録でもある。
ビートルズ期に行き場を失った曲が、まとめて表に出た構成
本作の核にあるのは、ビートルズ在籍中に書かれ、あるいはセッションで披露されながらも、正式な形では残らなかった楽曲群だ。タイトル曲「All Things Must Pass」もその一つで、1968年に書かれ、翌年の“Get Back”セッションでバンドに持ち込まれたが、『Let It Be』には収められなかった。「Wah-Wah」も同じく、バンド活動の中で抱え込んだ感情がそのまま曲になったような流れを持つ。
その結果、アルバムは自然と大きなスケールになった。制作にはPhil Spectorが関わり、彼の得意とする音の層を重ねる手法が全体に反映されている。ギター、ピアノ、オルガン、コーラスが重なり、音の密度が高い。単音で整理されたロックというより、録音空間そのものに音を満たしていく作りだ。ビートルズ後のソロ作の中でも、ここまで厚みを持った作品はそう多くない。
「My Sweet Lord」の存在感
先行シングル「My Sweet Lord」は、本作を語るうえで外せない代表曲だ。全英・全米で1位を獲得し、Harrisonにとってソロとして初の大きな成功になった。曲の構成はシンプルだが、コーラスの反復と旋律の運びが強く、ゴスペルや祈りの感覚をそのままポップソングに落とし込んでいる。聴き進めるほど、メロディよりも反復の力で引っ張るタイプの曲だとわかる。
この曲はのちに著作権侵害をめぐる長い争いの対象にもなった。The Chiffonsの「He’s So Fine」との類似が指摘され、最終的に裁判所は「無意識のうちに」模倣したと認定している。作品の評価とは別に、70年代のポップソングが抱えた法的な問題としても記憶される一曲だ。
録音の手触りと、実際に聴いてわかること
耳で追うと、まず分かるのは音の重なり方だ。各曲が細かく整理されるより先に、まず大きな塊として鳴る。ドラムは前に出すぎず、ベースと鍵盤が土台を作り、その上にギターとコーラスが積み上がる。静かな曲でも空間が薄くならず、演奏の余白よりも“満ちている感じ”が残る。
一方で、ただ分厚いだけではなく、曲ごとの表情の差もはっきりしている。内省的な「Isn’t It a Pity」、軽やかな輪郭を持つ曲、スピリチュアルな方向へ寄る曲など、同じ3枚組でも単調さは出にくい。長尺アルバムにありがちな散漫さを、楽曲そのものの強さで押し切っている印象がある。
参加ミュージシャンと、クレジット周辺の話
本作にはEric Claptonの参加も知られている。リリースノートでは、箱の表記上はGeorgeとDave Masonだけがギターとして記されているが、実際にはインナーのグリーン面にClaptonの名が見えるという。こうした細部も、当時の大作アルバムらしい複雑さを感じさせる。録音は複数の参加者が入り、Harrisonのソロ作でありながら、セッション全体の熱量で押し切る形になっている。
1970年という時代の中で
1970年は、The Beatlesの解散が現実になった年でもある。そのタイミングで出た『All Things Must Pass』は、単なるソロデビュー盤ではなく、Harrisonが長く抱えていた作曲面での蓄積を証明した作品として受け止められた。LennonとMcCartneyの陰に隠れていたという見方を、実作で塗り替えたアルバムでもある。
同時代のロックの中でも、本作は“バンドの延長線上のソロ”ではなく、“個人が抱えていた曲を大きな編成で完成させた作品”として際立つ。ポップロックの枠に収まりながら、内面の重さと録音の厚みが同居している点が、このアルバムの輪郭をはっきりさせている。
まとめ
『All Things Must Pass』は、George Harrisonが長く溜めてきた曲を、3枚組という形式で一気に結実させた1970年の重要作だ。ビートルズ後の空白を埋めるような内容でありながら、ただの清算では終わっていない。ヒット曲「My Sweet Lord」を軸に、録音の厚みと楽曲の強さが最後まで持続する。UK Apple Records盤らしい当時の空気も含めて、この時代のロックが持っていたスケールの大きさをそのまま伝える1枚だ。
トラックリスト
- A1 I'd Have You Anytime
- A2 My Sweet Lord
- A3 Wah-Wah
- A4 Isn't It A Pity (Version One)
- B1 What Is Life
- B2 If Not For You
- B3 Behind That Locked Door
- B4 Let It Down
- B5 Run Of The Mill
- C1 Beware Of Darkness
- C2 Apple Scruffs
- C3 Ballad Of Sir Frankie Crisp (Let It Roll)
- C4 Awaiting On You All
- C5 All Things Must Pass
- D1 I Dig Love
- D2 Art Of Dying
- D3 Isn't It A Pity (Version Two)
- D4 Hear Me Lord
- E1 Out Of The Blue
- E2 It's Johnny's Birthday
- E3 Plug Me In
- F1 I Remember Jeep
- F2 Thanks For The Pepperoni
動画プレイリスト
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I'd Have You Anytime (2020 Mix)
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My Sweet Lord (2020 Mix)
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Wah-Wah (2020 Mix)
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Isn't It a Pity (Version 1) (2020 Mix)
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What Is Life (2020 Mix)
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If Not for You (2020 Mix)
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Behind That Locked Door (2020 Mix)
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Let It Down (2020 Mix)
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Run of the Mill (2020 Mix)
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Beware of Darkness (2020 Mix)
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Apple Scruffs (2020 Mix)
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Ballad of Sir Frankie Crisp (Let It Roll) (2020 Mix)
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Awaiting on You All (2020 Mix)
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All Things Must Pass (2020 Mix)
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I Dig Love (2020 Mix)
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Art of Dying (2020 Mix)
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Isn't It a Pity (Version 2) (2020 Mix)
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Hear Me Lord (2020 Mix)
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Out of the Blue (2020 Remaster)
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It's Johnny's Birthday (2020 Remaster)
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Plug Me In (2020 Remaster)
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I Remember Jeep (2020 Remaster)
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Thanks for the Pepperoni (2020 Remaster)