Herbie Hancock - Future Shock (1983)
Herbie Hancock 1983

Herbie Hancock - Future Shock (1983)

Electronic Hip Hop Jazz Funk / Soul Funk Electro

Herbie Hancock『Future Shock』(1983年/Columbia FC 38814)

Herbie Hancockの『Future Shock』は、1983年にColumbiaから発表されたアルバムで、ハービーのキャリアの中でもエレクトロ・ファンクとヒップホップの接点を前面に押し出した重要作として知られている。ジャズ・ピアニストとして出発した彼が、1970年代のフュージョン期を経て、1980年代に入ってからさらに新しいビートの感覚へ踏み込んだ流れを、そのまま形にした一枚でもある。

この作品の面白さは、単に「ジャズ・ミュージシャンが時代の音を取り入れた」という話に収まらない点にある。ここで鳴っているのは、当時のクラブ感覚、マシン・ビート、スクラッチ、ファンクの反復、そしてハービー自身の鍵盤語法が混ざり合った音だ。結果として、ジャズ・ファンクの延長線上にありながら、インストゥルメンタル・ヒップホップの先駆けとしても語られる内容になっている。

アルバムの位置づけ

ハービー・ハンコックは、1960年代にマイルス・デイヴィスのグループで広く知られるようになり、その後は『Head Hunters』で大きな成功を収めた。『Future Shock』は、その後の電子音響的な方向性をさらに押し進めた時期の代表作で、彼が1980年代のブラック・ミュージックの変化をどう受け止めたかがはっきり出ている。生演奏の即興性だけでなく、サンプリング以前の時代における機械的なグルーヴへの接近が、この作品の核になっている。

制作面でも時代性が強い。基本トラックはブルックリンのOAO Studios、オーバーダブはニューヨークのRPM StudiosやロサンゼルスのGarage Sale Recording、ミックスはEldorado Recording Studios、マスタリングはMasterdiskで行われている。複数都市をまたぐ制作環境も、当時の大規模なプロダクション感を支えている。

収録曲と代表曲「Rockit」

このアルバムを語るうえで外せないのが「Rockit」だ。Grand Mixer D.STによるスクラッチが大きくフィーチャーされ、ヒップホップの要素をポップ・チャートの文脈へ持ち込んだ楽曲として知られる。DJのスクラッチが前景に出る構成は、当時のジャズ作品としてはかなり異質で、ハービーの鍵盤リフと機械的なビートが強く結びついている。

「Rockit」は1984年のグラミー賞で最優秀R&Bインストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞しており、ヒップホップ史の初期における重要な記録としても扱われる。さらに、Godley & Cremeが手がけたミュージックビデオも話題になり、1984年の第1回MTVビデオ・ミュージック・アワードで複数部門を獲得した。音だけでなく映像面でも、80年代前半のポップカルチャーを象徴する存在になった曲だ。

表題曲「Future Shock」は、Curtis Mayfieldが1973年に発表した同名曲のカバー。原曲の持つ社会的な視点を踏まえつつ、このアルバムではより電子的な質感の中に置き直されている。カバー曲でありながら、アルバム全体の方向性を説明する役割も担っている。

制作背景と同時代性

本作のサウンドの土台には、Bill LaswellとMichael Beinhornのユニット、Materialの発想がある。彼らが1982年のツアー中に演奏していた楽曲をベースにしたものが多く、LaswellはKraftwerkやMantronixのような電子音楽とファンクの接合に強い関心を持っていたという。そうした感覚が、ハービー・ハンコックの手に渡ることで、より広い聴衆に届く形へ整理されている。

ハービー自身がMalcolm McLarenの「Buffalo Gals」でスクラッチを知り、その感触に反応したことも、本作の方向性に直結している。ジャズの文脈から見れば、ここにはアフロ・アメリカンなリズム感の更新があり、同時代のファンクやエレクトロ、さらに初期ヒップホップとの距離がかなり近い。George Clinton周辺のP-Funkや、同時期の電子ファンクとも並べて考えやすい作品だが、ハービーの場合は鍵盤のフレーズがより明確に曲の骨格を作っている。

US盤について

このUS盤はColumbia FC 38814の1983年オリジナル・リリースで、レーベル表記も当時のCBS系Columbiaらしい仕様になっている。プロモ盤については、USで別個のプロモ用ヴィニールがあったわけではなく、通常の市販盤にゴールドのプロモ・スタンプを背面カバーのバーコード上へ押した形だった。ランアウトにはA面・B面ともエッチングがあり、「MASTERDISK」のみスタンパー刻印という点も、この時代のアメリカ盤らしい特徴として見て取れる。

1983年という年を考えると、『Future Shock』はジャズの枠内に閉じた作品ではなく、80年代のブラック・ミュージックがどこへ向かうかを示した記録になっている。ハービー・ハンコックのディスコグラフィーの中でも、演奏家としての柔軟さとプロデューサー的な視点が強く出た一枚で、後のエレクトロ、ヒップホップ、ダンス・ミュージックの文脈で繰り返し参照される理由もそこにある。

トラックリスト

  1. A1 Rockit 5:22
  2. A2 Future Shock 8:02
  3. A3 TFS 5:15
  4. B1 Earth Beat 5:10
  5. B2 Autodrive 6:25
  6. B3 Rough 6:57

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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