Hot Tuna - Hot Tuna (1970)
Hot Tuna 1970

Hot Tuna - Hot Tuna (1970)

Rock Blues Blues Rock

Hot Tuna『Hot Tuna』(1970)

Hot Tunaのデビュー作『Hot Tuna』は、Jefferson AirplaneのメンバーだったJorma KaukonenとJack Casadyを中心に始まった別動プロジェクトの最初の記録である。1970年、RCA Victorから発表されたこのアルバムは、もともとバンドの本業の合間に生まれた小編成の演奏を、そのまま作品として切り取ったような内容になっている。ロックの文脈にありながら、中心にあるのはブルースと古いアメリカ音楽の語法で、派手な装飾よりも演奏そのものの手触りが前に出る一枚だ。

録音の場と編成

録音は1969年9月、カリフォルニア州バークレーのNew Orleans Houseで行われた。ライブ録音で、会場の空気がそのまま入っているタイプの作品である。クレジット上はKaukonenのアコースティック・ギターとボーカル、Casadyのベースが軸になり、ハーモニカにWill Scarlettが加わる。Jefferson Airplaneのサイケデリック・ロックとはだいぶ距離があり、ここではギターとベースのやり取りが主役になる。

実際に聴くと、Kaukonenのフィンガーピッキングは音数を詰め込みすぎず、フレーズの切れ目がはっきりしている。そこへCasadyのベースが単なる伴奏ではなく、対旋律のように動く。ロックのリズム隊というより、2本の弦楽器が対話する感触に近い。ライブ盤らしく音の隙間も残っていて、演奏の呼吸が見えやすい作りだ。

収録曲とルーツ音楽の幅

選曲はブルースを軸にしながら、古い曲の引用や再解釈が並ぶ。たとえば「Hesitation Blues」は、1916年にVictor Military Bandが録音した古い曲として知られ、このアルバムでは冒頭からルーツ音楽への視線がはっきり示される。ほかにもJelly Roll Morton作の2曲、Leroy Carrの「How Long Blues」、Reverend Gary Davis由来の楽曲が含まれ、Dixieland、ラグタイム、カントリー・ブルースまで視野に入った選曲になっている。

この時代のブルース・ロックは、エレキギターの音圧で押す形が多いが、Hot Tunaはその方向に寄り切らない。むしろ、古いブルースやフォークの語法を、Jefferson Airplaneのメンバーが自分たちの演奏感覚で引き寄せた印象が強い。1970年前後のアメリカ西海岸ロックの中でも、かなり地に足のついた作りで、同時代のGrateful Dead周辺のアコースティックな試みとも響き合う部分がある。

作品の位置づけ

この作品は、Hot Tunaが独立したバンドとして歩き出す起点になったアルバムである。もともとはJefferson Airplaneの活動の合間に始まった小さな企画だったが、この1枚で、KaukonenとCasadyの音楽的な相性が前面に出た。以後、Hot Tunaはよりロック色を強めながら長く続いていくが、その出発点にあるのはこの素朴なライブ録音だ。

チャート面でも存在感があり、US Billboard 200で30位を記録している。批評面でも評価は高く、AllMusicは星4つ、Robert ChristgauもB+を付けた。大きなヒット曲で押すアルバムではないが、演奏の積み重ねで聴かせる作品として受け止められてきたことがわかる。

盤の見どころ

今回のUS盤はRCA VictorのLSP-4353。オレンジ系の後年ラベルではなく、1970年時点のリリースとしての初出盤である。写真入りのインナー・スリーブ付きで、カバーには「Not For Sale Promotional Use Only」とスタンプされた個体もある。録音はRCA Records Pressing Plant, Rockaway由来のバリエーションが確認されており、マトリクスのR表記がその目印になる。

Hot Tunaのデビュー作は、派手な転機を鳴らすアルバムではない。だが、KaukonenとCasadyがロック・バンドの枠を離れて、ブルースと古いアメリカ音楽の手触りをそのまま演奏に落とし込んだ記録として、はっきりした輪郭を持っている。Jefferson Airplaneの延長線上にありながら、別のバンドとしての始まりがそのまま刻まれた一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Hesitation Blues 5:05
  2. A2 How Long Blues 3:24
  3. A3 Uncle Sam Blues 5:04
  4. A4 Don't You Leave Me Here 2:50
  5. A5 Death Don't Have No Mercy 6:10
  6. B1 Know You Rider 3:59
  7. B2 Oh, Lord, Search My Heart 3:47
  8. B3 Winin' Boy Blues 5:25
  9. B4 New Song (For The Morning) 4:55
  10. B5 Mann's Fate 5:20

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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