Primal Scream - Give Out But Don't Give Up (1994)
Primal Scream 1994

Primal Scream - Give Out But Don't Give Up (1994)

Rock Funk / Soul Indie Rock Blues Rock Funk Soul Psychedelic

Primal Scream『Give Out But Don’t Give Up』について

Primal Screamの『Give Out But Don’t Give Up』は、1994年に発表された4作目のスタジオ・アルバムで、バンドの歩みの中でもかなり輪郭のはっきりした作品だ。グラスゴーで結成された彼らは、初期にはインディー・ロックの文脈にあり、その後『Screamadelica』でダンスやサイケデリックの方向へ大きく振れたが、本作ではそこから一転して、70年代のロック、ブルース・ロック、ファンク、ソウルの要素を前面に出している。いわば、Primal Screamがロック・バンドとしての骨格を改めて示した一枚という位置づけになる。

リリース当時の英国では、この路線転換がかなり注目された。前作の延長を期待した聴き手には意外性が強く、批評面でも賛否が分かれたが、チャートでは英国オフィシャル・アルバム・チャート最高2位を記録しており、商業的にはしっかり結果を残している。先行シングルの「Rocks」もこの時期を代表する曲としてよく知られている。

アルバムの流れと聴きどころ

本作を聴くとまず、ギターの前に出方とリズムの押し出しの強さが印象に残る。打ち込みやクラブ感を核にした『Screamadelica』とは違い、バンドで押していく感触がはっきりしていて、ローリング・ストーンズやサザン・ロック系の手触りが表に出る場面が多い。そこにファンク寄りのグルーヴやソウルのコーラス感が重なり、単純な回帰ではなく、複数のアメリカン・ロックの要素をPrimal Scream流にまとめた作品として聴こえる。

「Rocks」は、その中でも特にわかりやすい代表曲だ。勢いのあるリフ、合唱向きのフック、直線的な展開が揃っていて、アルバム全体の方向性を短く示している。ほかにも、泥臭いギター・ロックの感触と、ソウル由来の厚みを行き来する曲が多く、1曲ごとの色の違いよりも、アルバム全体で一つのバンド像を組み立てていく印象が強い。

制作背景と当時の空気

制作過程も、このアルバムを語るうえで重要だ。録音は当初メンフィスで進められ、トム・ダウドやマッスル・ショールズ周辺のミュージシャンと組んだ素材があったとされる。その後、ジョージ・ドラクリアスらと再構築され、最終的な形にまとまった。2018年には、その“幻のメンフィス録音”が別の形で公開されている。こうした経緯を踏まえると、本作は単なる方向転換作というより、制作の試行錯誤そのものが作品の輪郭を作っているアルバムでもある。

バンド自身が後年、この時期の録音を厳しい体験だったと振り返っている点も有名だ。ツアーや薬物の問題で消耗した時期と重なっていたこともあり、制作現場の緊張感は相当だったようだ。アルバムの音像にも、整いきらない荒さや、勢いで押し切る場面が見える。

オリジナル盤としての仕様

今回のヨーロッパ盤は、Creation Recordsからの1994年リリース。Sonyとの提携期に出た、SCR番号を持つライセンス盤にあたる。ゲートフォールド仕様で、2枚のカラー・インナー・スリーブが付属し、写真、クレジット、タイトルが掲載されている。ジャケット表にはハイプ・ステッカーも確認でき、当時のリリースとしての存在感がある。こうした装丁は、90年代前半の大型ロック・アルバムらしい作りだ。

Primal Screamの中での位置づけ

Primal Screamにとって本作は、『Screamadelica』の成功後に、ダンス/クラブ寄りの評価だけでは収まらないことを示した一枚とも言える。以後の彼らは、アルバムごとに音楽性の振れ幅を大きく取りながら活動していくが、その中でも『Give Out But Don’t Give Up』は、ロック・バンドとしての体温が前面に出た作品として残っている。

同時代の文脈で見ると、90年代前半の英国ロックがオルタナティヴやブリットポップへ向かう中で、Primal Screamは別の角度からアメリカ南部由来のロックやソウルを取り込んでいたことになる。ストレートなギター・ロックでも、クラブ・カルチャー直結でもない、その中間を大胆に取った点がこのアルバムの特徴だろう。批評の反応が割れたことも含めて、Primal Screamの歴史の中でかなり重要な節目の作品として見えてくる。

トラックリスト

  1. A1 Jailbird 3:46
  2. A2 Rocks 3:37
  3. A3 (I'm Gonna) Cry Myself Blind 4:30
  4. B1 Funky Jam 5:24
  5. B2 Big Jet Plane 4:15
  6. B3 Free 5:30
  7. C1 Call On Me 3:50
  8. C2 Struttin' 8:29
  9. C3 Sad And Blue 3:27
  10. D1 Give Out But Don't Give Up 6:16
  11. D2 I'll Be There For You 6:34
  12. D3 Everybody Needs Somebody 5:22

動画プレイリスト

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