It Bites - The Big Lad In The Windmill (1986)
It Bites 1986

It Bites - The Big Lad In The Windmill (1986)

Rock Pop Rock

It Bites / The Big Lad In The Windmill

It BitesのThe Big Lad In The Windmillは、1986年にUKのVirginから登場した初期作品で、バンドの出発点を知るうえで重要な1枚である。It Bitesはイングランド北西部エグレモント出身のバンドで、1982年結成。後年はプログレッシブ・ロック寄りの評価も強まるが、この時期の音はまだポップロック色がはっきりしていて、メロディの分かりやすさとバンド感のまとまりが前に出る。タイトルから受ける印象よりも、実際の内容はかなり直線的で、80年代UKロックの空気をそのまま閉じ込めたような仕上がりだ。

Virginの1980年代中盤のUK盤らしく、レーベル面も時代感がある。1986年リリースのこの盤は、ちょうどVirginがグリーン/レッド系のアルバム・ラベルを使っていた時期にあたる。盤そのものが当時のオリジナル仕様であることも、このレコードの魅力のひとつだろう。It Bitesという名前は、のちの代表曲やアルバムで知られるようになるが、この時点ではまだ“これから伸びるバンド”という輪郭が見えやすい。キャリアの初期に置かれる作品として、後年の洗練へつながる前段階という位置づけがしっくりくる。

作品全体の印象

全体を通して感じるのは、演奏のタイトさと、歌メロの押しの強さである。ギター、ベース、ドラム、キーボードがそれぞれ前に出すぎず、曲の流れを崩さない。派手な技巧を見せつけるタイプというより、曲を最後まで気持ちよく運ぶことを優先している印象だ。80年代中盤の英国ロックには、ニューウェイヴ以降の軽さと、従来のバンド演奏の厚みを両立させる流れがあったが、この作品もその文脈に置くと見えやすい。単にポップなだけでなく、ところどころに後のプログレ志向を思わせる構成感がのぞくのも面白い。

実際に聴くと、音の整理のされ方がかなり明快で、各パートの役割が分かりやすい。とくにボーカルの存在感が強く、楽器隊の密度が上がっても輪郭がぼやけにくい。派手なサウンド作りよりも、曲そのものの推進力で聴かせるタイプのレコードで、アルバム全体が比較的コンパクトにまとまっている印象だ。のちにIt Bitesがプログレッシブ・ロック方面で語られる際の“入口”として聴かれることもありそうな内容で、初期衝動と完成度の間にある作品と言えそうだ。

注目曲: Calling All The Heroes

It Bitesを語るうえで外せないのが「Calling All The Heroes」だ。これはバンドの代表曲として広く知られ、後年の再評価でもまず名前が挙がる1曲である。軽快なリズムの上に、覚えやすいフレーズと歌のフックがしっかり乗っていて、初期It Bitesのポップな資質が最も分かりやすい。ロックバンドとしての骨格は保ちながら、メロディの抜けの良さを前面に出している点が特徴的だ。

この曲は、バンドが単なるローカルな新人グループではなく、英国のロック・シーンで広く届く可能性を持っていたことを示す材料にもなっている。演奏はきっちりしているのに、肩肘を張った感じがない。そのため、同時代の英国ポップロックや、メロディを重視するロック・バンドと並べて聴いても違和感が少ない。It Bitesの初期像を一曲で示すなら、この曲が最も分かりやすいだろう。

注目曲: Whole New World

「Whole New World」は、この作品の中でバンドの構成力が見えやすい曲として挙げやすい。単純に勢いだけで進まず、展開の組み立てに意識が向いている。ヴァースとサビのつなぎ方、楽器の入り方、曲の中での緩急の付け方に、後のIt Bitesらしさが少しずつ現れている。ポップな曲調の中にも、ただのラジオ向けロックでは終わらない作り込みがある。

このあたりを聴くと、当時の英国ロックの中でIt Bitesがどこに立っていたのかが見えてくる。派手なハードロックでもなく、完全なニューウェイヴでもない。あくまでバンド・サウンドを軸にしながら、メロディと展開で聴かせる立ち位置だ。まだ初期段階ではあるが、すでに“曲を書けるバンド”としての手応えがある。

作品の位置づけ

The Big Lad In The Windmillは、It Bitesのキャリアの中では出発点としての意味合いが強い。のちにバンドはよりプログレッシブな方向へ進み、楽曲の長さや構成の複雑さでも注目されるようになるが、その前提にはこの時期の分かりやすいメロディ感と、ロックバンドとしての推進力がある。初期の段階でこうした骨格を持っていたからこそ、後年の変化にも説得力が出たように見える。

同時代の英国バンドの中では、メロディ重視のロック、あるいはポップ寄りのハードさを持つグループと比較されることがあるかもしれない。ただ、この作品はどちらかに寄り切るというより、両方の要素を手堅くまとめているところに特徴がある。1986年という時代の空気をまといながら、バンドの個性がすでに見え始めている1枚である。

トラックリスト

  1. A1 I Got You Eating Out Of My Hand 5:37
  2. A2 All In Red 3:31
  3. A3 Whole New World 4:25
  4. A4 Screaming On The Beaches 3:45
  5. A5 Wanna Shout 3:29
  6. B1 Turn Me Loose 4:11
  7. B2 Cold, Tired And Hungry 4:16
  8. B3 Calling All The Heroes 5:33
  9. B4 You'll Never Go To Heaven 7:12
  10. B5 The Big Lad In The Windmill 0:48

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