John Cougar Mellencamp - The Lonesome Jubilee (1987)
John Cougar Mellencamp『The Lonesome Jubilee』(1987)
アメリカ・インディアナ州出身のシンガーソングライター、ジョン・クーガー・メレンキャンプ(John Cougar Mellencamp)が1987年8月にマーキュリー・レコード(Mercury)から発表した通算9作目のスタジオ・アルバム。前作『Scarecrow』の大ヒットに続き、全米のハートランド・ロック/ルーツ・ロックを決定づけた最高傑作である。全米ビルボード200で6位を記録し、300万枚(3×プラチナ)を超えるセールスを達成した。
制作背景とベルモント・モール・スタジオ
本作は、インディアナ州ベルモントに自ら建設した私設スタジオ「ベルモント・モール・スタジオ(Belmont Mall Studio)」にて、名匠ドン・ゲーマン(Don Gehman)とメレンキャンプ自身の共同プロデュースにより、1986年9月から1987年6月にかけて長期間じっくりと録音された。マスタリングはハリウッドのPrecision Lacquerが担当している。
本作の最大の革新は、後にソロ・アーティストとしても名を馳せる女性バイオリニストのリサ・ジャーマノ(Lisa Germano)をバンドに迎えたことにある。さらにジョン・カセラ(John Cascella)のアコーディオンやペニー・ホイッスル、クリスタル・タリエフェロ(Crystal Taliefero)のソウルフルなコーラスとパーカッション、ケニー・アロノフ(Kenny Aronoff)の力強いドラムスが融合。ギター主体のロック・アンサンブルに豊かなフォーク/トラッドの響きが吹き込まれた。
時代の文脈と中西部労働者の現実
1980年代後半のメインストリーム・ロックがシンセサイザーや打ち込みサウンドへ傾倒する中、本作はあえてアメリカ古来のアパラチアン・フォークやカントリー、ケルト音楽のアコースティック楽器をダイナミックなロックと直結させた。1985年にウィリー・ネルソンやニール・ヤングとともに「ファーム・エイド(Farm Aid)」を創設したメレンキャンプの反骨精神と人道主義が全編に溢れ、レーガン政権下で過疎化と不況に喘ぐラストベルト(中西部工業・農業地帯)の労働者階級の現実、苦闘、家族の絆を誠実に描き出している。
収録曲とサウンドの魅力
フィドルとアコーディオンが爽快に疾走する「Paper In Fire」(全米9位、全米メインストリーム・ロック1位)、自らのルーツと若き日々を哀愁豊かに歌い上げた代表曲「Cherry Bomb」(全米8位、全米メインストリーム・ロック1位)、市井の人々のささやかな日常への温かい眼差しが光る「Check It Out」(全米14位)など、心揺さぶる名曲が揃う。
評価と後世への影響
アコースティック楽器の温もりとロックの推進力、そして文学的なストーリーテリングが完璧な結実を見せた本作は、1990年代以降に一大ジャンルへと発展する「アメリカーナ(Americana)」やオルタナ・カントリーの先駆的マイルストーンとして、現在も高く評価されている。
トラックリスト
- A1 Paper In Fire 3:53
- A2 Down And Out In Paradise 3:39
- A3 Check It Out 4:20
- A4 The Real Life 3:56
- A5 Cherry Bomb 4:49
- B1 We Are The People 4:16
- B2 Empty Hands 3:44
- B3 Hard Times For An Honest Man 3:28
- B4 Hotdogs And Hamburgers 4:04
- B5 Rooty Toot Toot 3:29