Motörhead - Ace Of Spades (1980)
Motörhead 1980

Motörhead - Ace Of Spades (1980)

Rock Rock & Roll Hard Rock Heavy Metal Speed Metal

Motörhead『Ace Of Spades』について

Motörheadの『Ace Of Spades』は、1980年にUKのBronzeから出た4作目のスタジオ・アルバムで、バンドの名前を広く決定づけた代表作だ。レミー・キルミスターのベースとヴォーカルを軸に、攻撃的なギター、前へ前へと押し出すドラムが一体になった作品で、ハードロック、ヘヴィメタル、ロックンロール、スピードメタルの境目を強く意識させる内容になっている。

この盤はUK盤のファーストプレス。ジャケットやクレジット、マトリクスの細部まで当時の初出仕様が反映された一枚で、後年の再発盤とは製造表記やインナー、ランアウトの違いがある。レコード・コレクターの間では、そうした初回仕様の差も含めて注目されるタイトルだ。

作品の位置づけ

Motörheadは1975年にレミーを中心に結成されたイングランドのバンドで、パンクの速度感とハードロックの重量感を持ち込んだ存在として語られてきた。『Ace Of Spades』はその流れを一気に表面化させたアルバムで、バンドの名を象徴する一作になっている。これ以前の『Overkill』『Bomber』で形を作ってきた路線が、この作品でいっそう明確になった印象がある。

当時の英国ではNWOBHMの流れが加速していた時期で、同時代のIron MaidenやSaxonのような新世代メタルと並べて語られることも多い。ただ、Motörheadはレミー本人が繰り返しロックンロールだと述べていた通り、純粋なメタルの枠だけでは収まらない。パンク的な切れ味と、ブルースロック由来の泥臭さが同居している点がこのバンドらしさだ。

タイトル曲「Ace Of Spades」

本作を語るうえで外せないのがタイトル曲「Ace Of Spades」。約2分48秒の短い曲ながら、オーバードライブしたベースのイントロから一気に走り出し、最後まで速度を落とさない。歌詞はトランプやギャンブルのイメージを大量に詰め込んだ内容で、レミーらしい語感の強さが前面に出ている。本人はスロットマシンの方が好きだと語っていたが、その感覚が曲のタイトルやモチーフに反映されている。

実際に聴くと、リフの反復が単純に聞こえない。ベースがリードのように前に出て、ギターとドラムがその後ろを切り裂く形で進むため、2分台でも密度が高い。のちにスラッシュメタルやスピードメタルの原型として扱われるのも、この推進力が大きい。

曲順全体の印象

アルバム全体も、タイトル曲だけの作品ではない。オープニングの「Ace Of Spades」から「Love Me Like a Reptile」「Shoot You in the Back」へと進む流れは、速さと荒さを前面に押し出す構成になっている。「(We Are) The Road Crew」はツアーを支える人々へのクレジットを込めた曲で、レコードのライナーノーツ的な読みどころもある。タイトルからしてバンドの現場感がそのまま出ている。

レミーの声は決して滑らかではないが、この作品ではその粗さがそのまま説得力につながっている。歌として整えるより、言葉を前に投げる感覚が強く、演奏の推進力と噛み合っている。聴感上は、音の輪郭がはっきりしていて、各パートが混ざり切らずに前へ出てくる作りだ。

ジャケットと制作背景

西部劇を思わせるジャケット写真も有名だが、撮影場所はアリゾナやネバダではなく、ロンドン郊外バーネット近郊の砂採掘場とされる。曇天だったため、背景の空は後から加工された。衣装にも元ネタがあり、エディ・クラークはクリント・イーストウッド、フィル・テイラーはマーロン・ブランド、レミーはテレビ西部劇『マーヴェリック』のキャラクターを意識したとされる。

制作はVic Maileが担当し、1980年8月から9月にかけてJackson’sで録音された。こうした制作時期を見ると、当時のMotörheadがかなり短いスパンで作品を出し続けていたこともわかる。勢いのある録音と仕上がりが、そのまま盤面に残っている。

評価と影響

発売当時から評価は高く、UKアルバム・チャートでは上位に入り、ゴールド認定も受けた。タイトル曲はシングルとしてもヒットし、UKシングル・チャートに入っている。後年も評価は落ちず、Rolling Stone誌のアルバムランキングや、同誌のヘヴィメタル楽曲ランキングでもタイトル曲が上位に置かれている。

影響の面では、Metallica、Megadeth、Anthrax、Slayerといったスラッシュメタル勢が出発点の一つとしてこの作品を挙げてきた。Lars Ulrichが若い頃にこのアルバムで強い衝撃を受けた話もよく知られている。ハードロックの骨格に、パンクの速度と荒さを載せたこの作り方が、後続の激しいメタルに直結していった流れは見えやすい。

UK初回盤としての見どころ

このUK初回盤は、EMI製のインナー・スリーブ付きで、ラベル表記が後年の再発盤と異なる。クレジットには「Manufactured and distributed by EMI Records Ltd.」「Made in Great Britain」などの表記があり、初期プレスらしい細部が確認できる。マトリクス周りには「JONZ」「SOUND CLINIC」の刻印も入っていて、当時のカッティング情報を追う楽しみもある。

『Ace Of Spades』は、Motörheadの中でも特に名前が先に立つ作品だが、実際にはアルバム全体がその勢いを支えている。タイトル曲の強さだけでなく、バンドの演奏、制作、ジャケット、そして当時の英国ロックの空気まで含めて、1980年という年をそのまま刻んだ一枚になっている。

トラックリスト

  1. A1 Ace Of Spades
  2. A2 Love Me Like A Reptile
  3. A3 Shoot You In The Back
  4. A4 Live To Win
  5. A5 Fast And Loose
  6. A6 (We Are) The Road Crew
  7. B1 Fire, Fire
  8. B2 Jailbait
  9. B3 Dance
  10. B4 Bite The Bullet
  11. B5 The Chase Is Better Than The Catch
  12. B6 The Hammer

動画プレイリスト

Share
戻る

あわせて聴きたい "Speed Metal"

toast