Deep Purple - Deep Purple In Rock (1970)
Deep Purple 1970

Deep Purple - Deep Purple In Rock (1970)

Rock Rock & Roll Hard Rock

Deep Purple『Deep Purple In Rock』

Deep Purpleの通算4作目のスタジオ・アルバム『Deep Purple In Rock』(1970年)は、新メンバーとしてイアン・ギラン(Vo)とロジャー・グローヴァー(B)を迎えた黄金の第2期(Mark II)体制による最初のスタジオ録音作品である。それまでのサイケデリック・ロックやクラシカルなアート・ロックの実験性を一新し、圧倒的な破壊力とスピード感を兼ね備えたハード・ロックへと舵を切った歴史的傑作。英国ではEMI傘下のプログレッシヴ専門レーベル「Harvest」のSHVL 777番としてリリースされ、マウント・ラシュモアの大統領彫刻をメンバー5人の肖像に見立てた象徴的なゲートフォールド・スリーブとともに、ロック史にその名を刻んだ。

制作背景・エピソード

1969年半ば、バンドは初代ヴォーカリストのロッド・エヴァンスとベーシストのニック・シンパーに代わり、エピソード・シックスで活動していたイアン・ギランとロジャー・グローヴァーを引き抜く形で加入させた。同年9月にはロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラとの共演盤『Concerto for Group and Orchestra』を発表して世間の注目を集めたものの、ギタリストのリッチー・ブラックモアはオーケストラとの融合路線に限界を感じ、「ツェッペリンに対抗できるような、世界で最もラウドで劇的なハード・ロックを追求すべきだ」と主張した。バンドは過密なツアーの合間を縫い、ステージ上で新曲のジャムセッションを重ねながら楽曲の骨格を練り上げ、1969年10月から1970年4月にかけてロンドンのIBCスタジオ、デ・レイン・リー・スタジオ、アビー・ロード・スタジオで録音を敢行した。ギランの突き抜ける驚異的なハイトーン・スクリーム、歪ませたマーシャル・アンプから放たれるジョン・ロードのオルガン、そしてブラックモアの鋭利なストラトキャスターが激しく火花を散らし、バンドの新たなアイデンティティが確立された。

時代の文脈

1960年代末から1970年代初頭の英国ロック界は、ブルース・ロックがよりヘヴィで重厚なハード・ロックへと劇的なパラダイムシフトを遂げていた時代であった。1969年に登場したレッド・ツェッペリンがロックのダイナミズムを再定義し、1970年2月にはブラック・サバスが暗黒のヘヴィネスを掲げてデビューを飾る中、ディープ・パープルもまた従来のポップ/アート路線を完全に脱ぎ去り、極限の音圧と疾走感を前面に押し出した。EMIのアンダーグラウンド/プログレッシヴ専門レーベルとして発足したHarvestから放たれた本作は、時代の胎動と共鳴し、英国ハード・ロックが新たな黄金時代を迎えたことを決定づけた。

サウンド・聴きどころ

アルバムは、ブラックモアの荒々しいギター・フリークアウトとロードの歪んだハモンドオルガンが混沌を生み出すイントロから、猛烈なドライヴ感で疾走する「Speed King」で鮮烈な幕を開ける。ロックンロールの原型を獰猛なヘヴィ・ロックへと昇華させた同曲に続き、重厚なリフがうねる「Bloodsucker」、そして10分を超える大曲「Child In Time」へと至る展開は本作最大のクライマックスである。冷戦下の核戦争の危機やベトナム戦争への恐怖を歌った反戦叙事詩「Child In Time」は、静謐なオルガンと哀愁漂うギランの歌声で幕を開け、やがて人間の限界を超越したかのような凄絶なスクリームと、ブラックモアによる壮大なギター・ソロが螺旋を描いて激しく炸裂する。後半も、タイトなリズム隊が牽引するスリリングな「Flight Of The Rat」、重量級のリフが圧殺する「Into The Fire」、ファンキーなグルーヴと嘲笑的なヴォーカルが際立つ「Living Wreck」、そしてエンジニアのマーティン・バーチに捧げられた超高速の疾走ナンバー「Hard Lovin' Man」に至るまで、一切の妥協のない緊張感が全編を貫いている。

後世への影響

本作は、レッド・ツェッペリンの初期作品群やブラック・サバスの『Paranoid』と並び、「ヘヴィ・メタル/ハード・ロックの三大源流」として後世の音楽シーンに計り知れない影響を与え続けている。バロック音楽の旋律を取り入れたブラックモアのクラシカルなアプローチと高速ピッキング、ロードのオルガンとギターによる緻密かつパワフルなユニゾン、そしてイアン・ペイスのジャズ仕込みの卓越したドラミングは、後のスピード・メタルやパワー・メタルの決定的な原型となった。イングヴェイ・マルムスティーンをはじめとするネオクラシカル・メタル勢のみならず、アイアン・メイデン、ジューダス・プリースト、メタリカといったNWOBHMやスラッシュ・メタルを牽引した主要バンドの多くが、本作を決定的なバイブルとして挙げている。

評価・チャート

本作は全英アルバム・チャートで最高4位を記録し、1年以上にわたってチャートにとどまるロングセラーとなった。さらに、アルバム完成直後に録音され並行してリリースされたノン・アルバム・シングル「Black Night」が全英シングル・チャート2位を記録する大ヒットとなったことで相乗効果を生み、ディープ・パープルは一躍世界的なトップ・ロック・バンドへと飛躍した。アメリカ盤では「Speed King」のイントロがカットされるなど地域による編集の違いはあったものの、本作が放った圧倒的な演奏力と革新性は全世界で絶賛され、第2期ディープ・パープルの黄金時代を確立した不滅の金字塔として今なお輝きを放っている。

トラックリスト

  1. A1 Speed King
  2. A2 Bloodsucker
  3. A3 Child In Time
  4. B1 Flight Of The Rat
  5. B2 Into The Fire
  6. B3 Living Wreck
  7. B4 Hard Lovin' Man

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Deep Purple

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