Cactus - 'Ot 'N' Sweaty (1972)
Cactus『’Ot ’n’ Sweaty』──ライブとスタジオを半々で抱えた、最後のオリジナル期アルバム
Cactusの『’Ot ’n’ Sweaty』は、1972年に発表されたアルバムで、バンドのオリジナル期を締めくくる作品として知られている。Cactusはティム・ボガートとカーマイン・アピスを軸にしたアメリカのハードロック/ブルースロック・バンドで、荒い手触りの演奏と強い推進力で語られることが多い。この作品もその流れを引き継ぎつつ、前2作より少し整理された構成で、ライブの熱量とスタジオ録音の輪郭を同じ一枚に収めている。
この盤はヨーロッパ盤のAtlantic、カタログ番号はATC 50013。ジャケットはグロッシーな見開き仕様で、白いポリライナー入りのインナーが付く。表記上は複数のカタログ番号が併記されていて、レーベル面にATC 50013、スパインに50 013 B、ジャケットに50 013、裏面には7011が括弧付きで記されている。こうした表記の複雑さも、この時期の欧州盤らしいところだ。
作品の成り立ち
内容は、Side Oneが1972年4月3日、プエルトリコで行われたMar Y Sol Festivalでのライヴ録音。Wally Heider Remote Unitで収録されている。残る曲はニューヨーク録音で、Media Sound、Electric Lady Studios、Atlantic Recording Studios、Advantage Soundなど、複数のスタジオがクレジットされている。ライヴとスタジオがきれいに分かれた構成で、バンドのその時点の姿を、現場の音と制作物の両方から見せる作りになっている。
参加メンバーは、ティム・ボガート、カーマイン・アピスに加えて、ピーター・フレンチ、ヴェルナー・フリッチシングス、ドウェイン・ハッチングスという編成。前期Cactusの骨太なリズム隊に、新しい歌声と鍵盤、ギターが加わった形で、バンドの輪郭が少し変わっている。ピーター・フレンチはこのアルバム名を提案した人物としても記録されている。
聴きどころ
冒頭のライヴ3曲は、会場録音らしい空気の揺れがそのまま入っていて、演奏の押し出しが強い。音数を詰め込みすぎず、リズムが前に出る。Cactusに期待される直線的なハードロックの感触はここでしっかり残っている。いっぽうで後半のスタジオ曲では、音像が少し整い、歌とアンサンブルの整理が進んでいる。荒さだけで押し切るのではなく、曲の形を見せる方向に寄っているのが、このアルバムの特徴だ。
収録曲の中では、演奏の切り替えが分かりやすい配置になっていて、ライヴの勢いからスタジオの密度へ移る流れがはっきりしている。エンジニアリング面でも、Electric Lady Studiosでの録音やリミックスが効いていて、単なる寄せ集めではなく、一枚のアルバムとしての統一感を保っている。
当時の位置づけ
『’Ot ’n’ Sweaty』は、Cactusの初期2作ほど大きな商業的存在感を持った作品ではないが、バンドの終盤を記録したアルバムとして重要な位置にある。Billboardでは好意的に受け止められ、演奏力やプロダクションの良さが評価された記録が残る一方、チャート上では大きく伸びなかった。Cactusというバンドの、勢いだけではない段階を示す一枚でもある。
同時代のアメリカン・ハードロックやブルースロックの文脈で見ると、Cactusはレッド・ツェッペリン型の大仰さよりも、もっとストレートで、ライブの筋力を前面に出すタイプとして語られることが多い。このアルバムでもその性格は変わらず、ボガートとアピスのリズムの硬さ、ピーター・フレンチの歌、そしてライヴ会場の空気が、作品全体の芯になっている。
盤としての情報
このヨーロッパ盤はAtlanticのATC 50013で、レーベル面にはGEMA/BIEM表記が入る。見開きジャケットに白いポリライナー入りインナーという仕様で、オリジナル期のアメリカ盤とは細部の体裁が異なる。裏面には「ON STAGE IN PUERTO RICO AND IN THE STUDIO」という表現があり、内容を端的に示している。タイトルの表記もフロントカバーでは『ON STAGE IN PUERTO RICO AND IN THE STUDIO ’OT ’N’ SWEATY』となっていて、ライブとスタジオの二面性を前面に出した作り。
Cactusのディスコグラフィーの中では、最初期の爆発力をそのまま持ち込むというより、編成を変えた状態でバンドの最後の輪郭を残した作品として見やすい。1972年という時点のアメリカン・ハードロックの空気、そしてライブ録音とスタジオ録音を一枚にまとめる構成の妙が、このアルバムの核になっている。
トラックリスト
- A1 Swim 4:40
- A2 Bad Mother Boogie 4:55
- A3 Our Lil Rock-N-Roll Thing 6:25
- B1 Bad Stuff 3:08
- B2 Bringing Me Down 5:27
- B3 Bedroom Mazurka 4:33
- B4 Telling You 5:10
- B5 Underneath The Arches 0:30