Ned Doheny - Hard Candy (1976)
Ned Doheny 1976

Ned Doheny - Hard Candy (1976)

Rock Pop Funk / Soul Soft Rock Soul Ballad AOR

Ned Doheny『Hard Candy』――70年代西海岸AORの要点が詰まった1976年作

Ned Dohenyの『Hard Candy』は、1976年にUSのColumbiaから出たセカンド・アルバムである。ロサンゼルス周辺のスタジオ・シーンを背景にした作品で、ソフト・ロック、ソウル、ファンク、AORの要素がきれいに並ぶ一枚。Ned Dohenyは1948年生まれのアメリカ人シンガー/ソングライター/ギタリストで、この時期の西海岸らしい洗練と、メンフィス・ソウル直系のリズム感を両方持ち込んでいる。

このアルバムの制作陣も強い。プロデュースとギターにはスティーヴ・クロッパー、キーボードにはデヴィッド・フォスター、ホーンにはタワー・オブ・パワー、さらにバックコーラスにはドン・ヘンリー、グレン・フライ、リンダ・ロンシュタット、J.D.サウザーといった当時の西海岸を代表する名前が並ぶ。クレジットだけでも、70年代AORの主要な人脈が一枚に集まった構図が見えてくる。

曲の輪郭と聴きどころ

『Hard Candy』でまず触れられるのが「Get It Up For Love」である。ファンク寄りの推進力を持つ曲で、ホーンの切れ味とリズムの粘りが前面に出る。後年、Average White BandやTata Vegaにカバーされたことでも知られ、アルバムの代表曲として扱われることが多い。

続く「A Love Of Your Own」も重要な1曲だ。Average White Bandのヘイミッシュ・スチュアートとの共作で、メロウなソウル・ナンバーとしてアルバムの中でも存在感が大きい。派手な展開で押すタイプではなく、コード感と歌の運びでじわじわ聴かせる構成。Ned Dohenyのソングライターとしての持ち味がよく出ている。

「If You Should Fall」や「Valentine」のような曲では、ギターのタッチやコーラスの重なりが前に出て、曲調は穏やかでも演奏の密度は高い。アルバム全体を通して、リズム隊の動きが細かく、ホーンや鍵盤がその上にきれいに配置されている。実際に聴くと、音数は多いのに混み合わない印象があり、各パートの居場所がはっきりしている。

70年代西海岸AORの文脈

この時期のロサンゼルス周辺では、ロック、ソウル、R&B、ジャズの要素が交差した作品が多く生まれている。『Hard Candy』もその流れの中にある。Eagles、J.D. Souther、Linda Ronstadt周辺の空気感、あるいはBoz ScaggsやMichael McDonald以後のAORにもつながる整理されたサウンドが、すでにこの時点で明確だ。

ただし、単に整っているだけではなく、クロッパー由来のファンク感が芯にあるのがこの作品の特徴である。南カリフォルニアの乾いた空気と、黒人音楽由来のグルーヴが同居している感じで、そこが『Hard Candy』の輪郭をはっきりさせている。

オリジナル盤について

今回の盤は1976年のUSオリジナルで、Columbiaのカタログ番号はPC 34259。インナー・スリーブ付きで、クラプター・スタジオとレコード・プラントで録音されたことが記されている。ランオフにはArtisan Sound Recordersの刻印が入り、B面のエッチングには一部削られた文字も確認できる。バックカバーに「Gold Demonstration Not For Sale」とある個体も存在する。こうした点は、当時のプロモーション盤や初期プレス周辺の仕様として見ておきたい部分である。

作品の位置づけ

Ned Dohenyにとって『Hard Candy』は、作家性と演奏力の両方がまとまった代表作として扱われることが多い。前作で見せたソングライターとしての輪郭を、より広い編成と豪華なミュージシャンたちの助けで押し広げた印象がある。リリース当時は米国で大きく前面に出る作品ではなかったが、日本ではAORやフリーソウル、シティポップの文脈で長く再評価されてきた。

収録曲の中でも「Get It Up For Love」と「A Love Of Your Own」は、このアルバムを語るうえで外せない核である。ソウルの温度、ファンクの弾力、ソフト・ロックの整った歌心が、過不足なく並んだ1976年の一枚。70年代西海岸の録音文化をそのまま閉じ込めたような内容で、Ned Dohenyの名前を最初に確認するには十分な説得力を持つ作品である。

トラックリスト

  1. A1 Get It Up For Love 4:44
  2. A2 If You Should Fall 3:36
  3. A3 Each Time You Pray 3:38
  4. A4 When Love Hangs In The Balance 5:12
  5. B1 A Love Of Your Own 3:46
  6. B2 I've Got Your Number 3:14
  7. B3 On The Swingshift 3:03
  8. B4 Sing To Me 3:36
  9. B5 Valentine (I Was Wrong About You) 5:06

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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