Neworder - Technique (1989)
New Order『Technique』(1989)レビュー
New Orderの5作目となる『Technique』は、1989年1月にFactoryから出たアルバムで、バンドにとって初めて全英1位を記録した作品だ。Joy Divisionの終焉を受けて1980年に結成されたNew Orderは、ポストパンクの流れを引き継ぎながら、シンセサイザーやダンス・ビートを前面に出した独自の路線を築いてきた。このアルバムでは、その持ち味にバレアリック・ビートやアシッド・ハウスの空気が加わり、1980年代末のクラブ文化と強く結びついた一枚になっている。
制作背景と時代の空気
制作は1988年にイビサ島のMediterranean Studiosで始まり、その後イギリスのReal World Studiosへ移って仕上げられた。クレジット上もその2か所が記されている。実際の制作は順調というより、クラブ遊びと並走するような進み方だったようで、当時のニュー・オーダーらしい気ままさがそのまま音に残っている。イビサ滞在中に完成した曲は全体の一部にとどまり、多くはReal Worldで固められたという記録がある。
1989年という時期を考えると、『Technique』はマンチェスター周辺で広がっていたアシッド・ハウス熱とも重なる。ストーン・ローゼズやハッピー・マンデーズが同時代の空気を象徴していたが、New Orderはそこで単に流行に寄るのではなく、自分たちの電子音楽感覚に取り込んでいる。ロックバンドの骨格を保ちながら、ダンス・ミュージックの身体感覚を足した作りがこの作品の中心にある。
収録曲と代表曲
アルバムからは「Fine Time」「Round & Round」「Run 2」「Vanishing Point」などがシングルとして切り出された。なかでも「Fine Time」は、New Orderの中でもかなりダンスフロア寄りの楽曲で、打ち込みの推進力が前面に出ている。「Round & Round」はベースラインとシーケンスの絡みが強く、バンドの機械的な精度がよく出た曲だ。「Vanishing Point」はアルバムの中でも印象が残りやすい曲で、のちにBBCのドラマ『Making Out』でインストゥルメンタル版が使われた。
実際に聴くと、各曲の輪郭はかなり明確だ。ギターは前に出すぎず、シンセとリズム隊の間で役割を分けている。Bernard Sumnerの歌は感情を押しつけず、淡々とした語り口のまま曲の中心に置かれる。Stephen Morrisのドラムは機械的な反復に寄りすぎず、ところどころ人力の揺れが残る。Peter Hookのベースは、低音で曲を押すというより、メロディの輪郭を作る役割を担っている。
ジャケットとFactoryらしさ
ジャケットはPeter Savilleと、花器の装飾などを扱うデザイナーとの共作で、庭の飾り物のようなケルブ像を使ったもの。Savilleは、このバッカナリア的なイメージが、当時の“drug-fuelled hedonism”に皮肉な形で合っていると考えていたという。New Orderの作品は音だけでなく、Factoryのデザイン文化と切り離せないが、『Technique』はその関係が特にわかりやすい一枚でもある。UK盤には「Press Technique」のNME用ステッカー、広告用ビルボード、テレビCM、配布用の色紙セットなど、かなり大掛かりな販促が用意されていた。Factoryのカタログ番号ではFAC 275。
アルバムの位置づけ
『Technique』は、New Orderが80年代の終わりに到達したひとつの到達点として見られることが多い。Joy Divisionの遺産を引きずる暗さだけではなく、クラブ・カルチャーとポップソングの感覚を同じ盤の中に置いた点が大きい。後のマッドチェスター勢や90年代以降のオルタナティブ・ダンスロックにも、こうした作り方の影響は見えてくる。特に、ロックバンドがクラブの文法を吸収していく流れの中で、このアルバムはかなり重要な位置にある。
2008年には2枚組CDのCollector’s Editionも出ていて、シングルや12インチ・ミックス、B面曲が追加された。オリジナル盤はアルバム本編のまとまりで聴く作品として成立しているが、後発盤では当時の周辺曲まで追えるようになっている。まずは1989年の本編だけで、New Orderがどこまで電子音楽とロックの接点を広げたかを見せる記録として残る。
トラックリスト
- A1 Fine Time
- A2 All The Way
- A3 Love Less
- A4 Round & Round
- A5 Guilty Partner
- B1 Run
- B2 Mr Disco
- B3 Vanishing Point
- B4 Dream Attack