Ohio Players - Pleasure (1972)
Ohio Players『Pleasure』(1972)
オハイオ・プレイヤーズの『Pleasure』は、1972年にUSのWestbound Recordsから出たアルバムで、グループが同レーベルで最初期に送り出した作品のひとつだ。デトロイトの独立系レーベルであるWestboundは、ファンカデリックをはじめ、70年代のファンク/ソウルの流れを支えた存在でもある。このアルバムも、そうした環境の中で作られた一枚として見ると輪郭がつかみやすい。
オハイオ・プレイヤーズは1959年にオハイオ州デイトンで結成され、もともとはスタジオのハウス・バンドとして活動していた。60年代にはCapitol Recordsに在籍し、72年にWestboundへ移籍してから商業的な成功をつかむ。『Pleasure』は、その転機に置かれた作品であり、後のヒット期へつながる入口のような位置づけにある。
デトロイト録音の空気
録音はデトロイトのArtie Fields Studiosで行われ、制作とアレンジはバンド自身が担当している。エンジニアはArlen Smith、ジャケット写真はJoel Brodskyが手がけた。盤面には1 1/8インチのプレスリングがあり、配給はJanus Records N.Y. N.Y.表記。WestboundとJanusの流通関係が反映された仕様だ。
聴いてみると、後年のオハイオ・プレイヤーズを代表する、強く押し出したファンク一辺倒ではなく、ソウル寄りの歌、ハーモニー、ジャズの感触、実験的な展開が同居している。ウォルター“ジュニー”・モリソンを中心にしたアレンジの動きがはっきりしていて、曲ごとの表情が細かい。A面のタイトル曲は約5分半の長さがあり、演奏の流れをじっくり聴かせる構成。インストゥルメンタルの「Walt’s First Trip」も含め、バンドの器用さが前に出る。
代表曲「Funky Worm」の存在
このアルバムを語るうえで外せないのが「Funky Worm」だ。シングルとして1973年1月16日に出され、BillboardのR&Bシングル・チャートで1位、Hot 100でも15位を記録した。オハイオ・プレイヤーズにとって、Westbound時代最大のヒットとして知られている。
この曲の軸になっているのは、モリソンによる高音のシンセサイザー・ソロだ。本人は、ニューヨークの店で見つけたARPシンセからアラビア風のフレーズを思いつき、そこから「worm」という言葉が浮かんだと語っている。結果として、曲のリフそのものが強い記憶を残す作りになった。歌ものとしても機能するが、演奏の音色が先に立つタイプの楽曲で、のちのヒップホップやR&Bのプロデューサーたちが何度も引用したのも納得の仕上がりだ。
チャートと評価
アルバム本体も好成績を残していて、Billboard 200で63位、R&Bアルバム・チャートでは4位を記録している。シングルは「Pleasure」「Varee Is Love」「Funky Worm」の3曲が切られた。特に「Funky Worm」のヒットで、このアルバムは作品全体よりも先にその曲で知られるようになった面がある。
AllMusicでは5点満点中4点の評価が付けられている。実際、アルバム全体は一発の代表曲だけで終わらず、グループの演奏力やアレンジの幅を見せる内容になっている。ファンクの硬いリズムだけで押し切るのではなく、歌と演奏の比率を細かく動かしながら進む作りで、同時代のデトロイト周辺のソウル/ファンク作品とも響き合う。
その後へのつながり
「Funky Worm」は80年代後半から90年代初頭にかけて、N.W.A.、アイス・キューブ、デ・ラ・ソウル、クリス・クロスなどにサンプリングされた。とくにウェストコーストのG-funk系サウンドに与えた影響は大きく、この曲のシンセの響きが後のヒップホップの文脈で何度も参照された。『Pleasure』は、そうした後年の広がりを踏まえると、単なる初期作ではなく、オハイオ・プレイヤーズの転換点として見ておきたい一枚だ。
派手な一曲だけで語るには惜しく、バンドの編成感、デトロイト録音の手触り、Westbound移籍直後の勢いがまとまった作品。1972年という時点で、オハイオ・プレイヤーズがどこへ向かう途中にいたのかが、かなりはっきり残っている。
トラックリスト
- A1 Pleasure 5:28
- A2 Laid It 3:00
- A3 Pride And Vanity 4:22
- A4 Walt's First Trip 3:08
- B1 Varee Is Love 2:43
- B2 Walked Away From You 2:29
- B3 Paint Me 2:02
- B4 Funky Worm 2:35
- B5 Our Love Has Died 4:45