Sam Dees - The Show Must Go On (1975)
Sam Dees 1975

Sam Dees - The Show Must Go On (1975)

Funk / Soul Funk Soul

Sam Dees『The Show Must Go On』(1975)

Sam Deesの『The Show Must Go On』は、1975年にUSのAtlanticから出たアルバムで、ソウル・シーンの中でもかなり個性の強い一枚だ。サム・ディーズは歌手としてよりもソングライター、プロデューサーとしての評価が先に立つ人物で、のちにラリー・グラハム「One In A Million You」、グラディス・ナイト&ザ・ピップス「Save The Overtime (For Me)」、アレサ・フランクリン&ジョージ・ベンソン「Love All The Hurt Away」、ホイットニー・ヒューストン「Lover For Life」など、多くの楽曲で名を残していく。本作は、そうした“書く側”の人間が、自分の声と自分の手つきで作品をまとめた、自作自演アルバムとして重要な位置にある。

1975年のサザン・ソウルとしての輪郭

録音はバーミングハム周辺で行われ、ニュー・ロンドン・スタジオやサウンド・オブ・バーミングハムの名が挙がる。地元ミュージシャンを従え、サム・ディーズ自身がピアノを弾き、セルフプロデュースで仕上げたという点がまず大きい。ドラムのシャーマン・“ファッツ”・カーソン、ベースのデイヴィッド・カモン、ギターのグレン・ウッズら、南部の現場感を支える演奏陣が入っているのも、この作品の輪郭をはっきりさせている。

1975年という時期は、ディスコが勢いを増し始めたタイミングでもある。そのなかで本作は、流行に寄り切らない正統派のサザン・ソウルを軸にしていて、歌の重心が低く、フレーズの運びにも粘りがある。楽曲の組み立ては派手さよりも、歌詞の内容と声の抑揚を前に出すタイプ。サム・ディーズがソングライターとして培ってきた、言葉の置き方とメロディの運びが、そのまま自分のアルバムに戻ってきた印象がある。

聴きどころと収録曲の存在感

この作品でよく語られるのが「Child Of The Streets」だ。のちにラッパーのKeith Murrayがサンプリングしたことでも知られ、アルバム全体の中でも特に記憶に残る曲として扱われている。こうした再利用のされ方を見ると、単なる70年代ソウルの一作ではなく、後年のヒップホップやR&Bの耳にも引っかかる素材を持っていたことがわかる。

内容面では、都会の厳しさや人間関係の摩擦を抱えたまま、それでも前に進もうとする視線が通っている。タイトルの『The Show Must Go On』も、そのまま人生の持続、仕事としての音楽、現実のしぶとさに接続している。サム・ディーズの歌は、声を張り上げて押し切るというより、語りかけるように進んでいく場面が多く、そのぶん言葉の重みが残る。

当時の評価とその後

発表当時は、ディスコの拡大と時代の空気の変化の中で商業的には振るわなかったとされる。長く再発に恵まれず、コレクターの間で入手しづらい盤として扱われてきた。そうした経緯もあって、のちにディープ・ソウルの文脈で再評価が進んだ一枚でもある。

サム・ディーズのキャリア全体で見ると、本作は「ヒットメーカーの裏側」ではなく、「自分の感情と作法をそのまま作品化した記録」に近い。作家として他人に提供してきた楽曲の精度を、そのまま自分の歌に落とし込んだ構図で、派手な看板曲で押すタイプではないが、アルバム単位で聴くと設計の細かさが見えてくる。

USオリジナル盤の特徴

1975年のUSオリジナル盤はAtlanticのSD 18134。ラベルは当時のAtlanticらしい仕様で、プレスはPRC Richmond工場によるものとされ、センターラベルのマトリクス末尾に「RI」、ランアウトに「PRC」の刻印が入る。作品の中身とは別に、こうした工場情報まで追えるのがこの時代のAtlantic盤らしいところだ。DJ向けのステッカー付き見本盤が存在する場合もあり、さらにAtlanticの“Soul 4”内袋付きの個体も確認されている。

『The Show Must Go On』は、Sam Deesが“書く人”として知られる以前から、歌う人としてもかなり強い輪郭を持っていたことを示す作品だ。南部ソウルの手触り、自己完結的な制作、そして後年まで残る曲の芯。1975年のAtlanticカタログの中でも、静かに存在感を保つアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Child Of The Streets 6:15
  2. A2 The Show Must Go On 3:25
  3. A3 Come Back Strong 3:03
  4. A4 Just Out Of My Reach 3:39
  5. A5 Claim Jumpin' 2:50
  6. B1 Troubled Child 3:42
  7. B2 What's It Gonna Be 4:45
  8. B3 Worn Out Broken Heart 3:19
  9. B4 Good Guys 3:17
  10. B5 So Tied Up 3:49

動画プレイリスト

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