Public Enemy - Apocalypse 91... The Enemy Strikes Black (1991)
Public Enemy 1991

Public Enemy - Apocalypse 91... The Enemy Strikes Black (1991)

Hip Hop Conscious

Public Enemy『Apocalypse 91... The Enemy Strikes Black』レビュー

Public Enemyが1991年に発表した4作目のアルバムが『Apocalypse 91... The Enemy Strikes Black』だ。Long Island発のヒップホップ・グループとして80年代後半から頭角を現した彼らにとって、本作は前作までの勢いを受け継ぎながら、90年代初頭の空気を強く刻みつけた一枚である。Def Jam Recordingsからのリリースで、ラップの政治性、集団としての緊張感、そして音の密度の高さが、ここでもはっきり前面に出ている。

Public Enemyの4作目としての位置づけ

Public EnemyはChuck DとFlavor Flavを中心に、Termin ator X、Professor Griff、S1Wらを含む体制で活動してきた。Rock and Roll Hall of Fame入りも果たした、ヒップホップ史の中でも重要なグループだ。本作は、そのキャリアの中でも特に社会的メッセージが濃く、しかもメジャー作品としての到達点が見えやすい時期の作品になっている。前年までの作品群で築いた強固なサウンドと思想性を引き継ぎつつ、ここでは少し輪郭のはっきりした進行が目立つ。

制作面では、内紛や環境の混乱が重なった時期の作品として知られている。そうした背景の影響もあってか、過去作で印象的だったサンプルの層の厚さだけで押し切るというより、演奏の手触りやリズムの直進性が前に出る。結果として、Public Enemyらしい圧は保ちながら、音像は以前より整理された印象になる。

収録曲と代表曲

本作を語るうえで外せないのが「By The Time I Get To Arizona」だ。マーティン・ルーサー・キング牧師記念日の制定を拒み続けたアリゾナ州への抗議として書かれた曲で、強い政治的メッセージを持つ。ミュージックビデオも含めて大きな議論を呼んだ楽曲であり、この時代のPublic Enemyが、単なるラップ・グループではなく、発言そのものが注目される存在だったことを示している。

もうひとつの代表曲が「Can’t Truss It」。ファンク由来の硬いビートと、Chuck Dの言葉の圧が前に出る構成で、アルバム全体の緊張感を象徴する。さらに「Shut Em Down」も重要だ。攻撃的な語り口と、Public Enemyならではの集団性がよく出ていて、ライヴでも存在感を持つタイプの曲として印象に残る。アルバム全体を通すと、こうした曲が作品の芯を作っている。

音の作りと当時のヒップホップの文脈

この時期のPublic Enemyは、同時代のヒップホップの中でも特にサウンド面で特異だった。Run-D.M.C.やBoogie Down Productionsが持っていた硬質さとは別に、Public Enemyは情報量の多い音の重なりと、集団で押し寄せるような構成で独自性を作っていた。本作ではその方向性を保ちながらも、よりストレートに届く形へ寄せている。90年代初頭のヒップホップが、サンプリング主体の組み立てから別の段階へ動き始める中で、その変化を記録した作品でもある。

また、同年には「Bring tha Noize」がAnthraxとのコラボレーションでシングル化されており、ラップとメタルの接点を広げた例としても知られる。Public Enemyがヒップホップの外側にも影響を与えていたことが、ここでも見える。

オリジナル盤の仕様

今回のUS盤は1991年リリースの初出仕様で、ゲートフォールド・スリーブ。インナー・スリーブが2枚付属し、片方にはクレジットとメンバー写真、もう片方にはChuck DとS1Wの写真、さらに「Rapp Style」マーチャンダイズの面がある。レーベル表記はDef Jam Recordings、盤面にはPrinted in U.S.A.の記載。クレジットを見ると、Recorded and mixed at the Music Palace, Strong Island、Mastered at Sony Music Studio Operations, New York Cityなど、制作の流れも追いやすい。

ジャケットやインナーの情報まで含めると、Public Enemyがこの時点でかなり大きなスケールの作品を作っていたことが伝わる。単なるラップ・アルバムではなく、当時の社会状況、グループ内部の緊張、そしてヒップホップの進化が同居した記録として残る一枚だ。

まとめ

『Apocalypse 91... The Enemy Strikes Black』は、Public Enemyのキャリアの中で、政治性と音の推進力が強く結びついた作品として位置づけられる。メッセージの強さ、ビートの圧、そして90年代初頭のヒップホップが持っていた切迫感が、そのままパッケージされたアルバムだ。Def Jam黄金期を語るうえでも外しにくいタイトルであり、同時代のラップ作品の中でも、存在感の大きさは今も変わらない。

トラックリスト

  1. A1 Lost At Birth 3:49
  2. A2 Rebirth 1:00
  3. A3 Nighttrain 3:28
  4. A4 Can't Truss It 5:21
  5. B1 I Don't Wanna Be Called Yo Niga 4:24
  6. B2 How To Kill A Radio Consultant 3:09
  7. B3 By The Time I Get To Arizona 4:49
  8. C1 Move! 5:00
  9. C2 1 Million Bottlebags 4:06
  10. C3 More News At 11 2:40
  11. D1 Shut Em Down 5:04
  12. D2 A Letter To The New York Post 2:45
  13. D3 Get The F--- Outta Dodge 2:38
  14. D4 Bring Tha Noize 3:48

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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