Sandy Denny - The North Star Grassman And The Ravens (1971)
Sandy Denny 1971

Sandy Denny - The North Star Grassman And The Ravens (1971)

Rock Folk Rock

Sandy Denny『The North Star Grassman And The Ravens』

1971年にIsland Recordsから出たSandy Dennyのソロ・デビュー作。Fairport ConventionやFotheringayで知られる彼女が、バンド活動を経て自分の名前で前に出た最初のアルバムである。英国フォーク・ロックの流れの中にありながら、単なる「フォークの人」という枠には収まりにくい作品で、曲作り、歌、演奏の置き方まで、当時の彼女の立ち位置がかなりはっきり見える一枚になっている。

ソロへ向かう流れの中での重要作

Sandy Dennyは1969年末にFairport Conventionを離れ、その後Fotheringayを結成したが、バンドは短命に終わった。そこからのソロ第1作が本作で、彼女にとっては再出発の作品でもある。録音は1971年3月から5月にかけてロンドンのSound TechniquesとIsland Studiosで行われ、プロデュースはSandy Denny、Richard Thompson、John Woodの3人が担当した。

この組み合わせが本作の骨格を作っている。Richard Thompsonはギターだけでなくベースやアコーディオンも弾き、Fotheringay時代の仲間だったPat Donaldson、Gerry Conwayも参加する。さらにIan Whiteman、Roger Powell、Buddy Emmonsらが加わり、編成は充実しているが、音の中心はあくまでSandy Dennyの声と曲にある。

収録曲の性格と聴きどころ

収録曲は自作曲が軸で、伝承曲「Blackwaterside」、Bob Dylanの「Down In The Flood」、Brenda Leeで知られる「Let's Jump The Broomstick」も含む構成。オリジナル曲と既存曲が同じ空気の中に並び、彼女の選曲眼がそのままアルバムの輪郭になっている。

冒頭の「Late November」は、夢の記憶と、1969年の交通事故で亡くなったFairport ConventionのドラマーMartin Lambleの死が結びついた曲として知られる。タイトル曲「The North Star Grassman And The Ravens」は、友人Paul Bamberの死を受けて書かれた曲で、航海のイメージを死の比喩として扱う。こうした曲は、感情を直接ぶつけるというより、風景や物語の形に置き換えて歌うところに特徴がある。

「Next Time Around」は、かつての恋人Jackson C. Frankを暗号めいた形で歌ったとされる曲。こうした私的な題材が、説明的になりすぎず、歌として残るバランスが本作の持ち味になっている。演奏面では、Richard Thompsonのギターが前に出すぎず、曲の輪郭だけを整える場面が多い。派手さより、声の余白を残す作り。

当時の評価と位置づけ

本作は全英アルバム・チャートで最高31位を記録し、Sandy Dennyの生前における唯一の全英チャート入りアルバムになった。1971年という時点で、彼女はすでに英フォーク・ロックの重要人物として認識されていたが、この作品ではその評価が「バンドの中の歌手」から「個人の作家と歌い手」へ移っていく様子が見える。

同時代の英国フォーク・ロックの中では、Fairport Convention周辺の流れ、Richard Thompsonの感覚、そしてIsland Recordsが抱えていたロック寄りの空気が重なる位置にある。後年の大仰なアレンジに向かう前段階として聴くと、むしろ音数の少なさと曲の骨組みの強さが目立つ。Spin誌がこのアルバムを高く評価したのも、そのあたりの整理された響きに理由がある。

このUKオリジナル盤について

ここに挙げたのは1971年のUKオリジナル盤、Island ILPS 9165。マット仕上げの厚手ゲートフォールド・ジャケットで、Islandのピンク・リム/パームツリー・レーベル仕様。ターコイズ色のIsland社製インナー・スリーヴが付属し、クレジットは「℗ 1971」とだけ記されている。後のUK再発盤には、ラベル表記が異なるものがあるため、初版を見分けるポイントのひとつになっている。

歌、曲、編成のどれを取っても、Sandy Dennyが自分の名前で何を表現したかったのかがかなり明確なアルバム。デビュー作でありながら、すでに完成度の高いソングライターの記録として残っている。

トラックリスト

  1. A1 Late November 4:25
  2. A2 Blackwaterside 4:07
  3. A3 The Sea Captain 3:07
  4. A4 Down In The Flood 3:17
  5. A5 John The Gun 4:35
  6. B1 Next Time Around 4:20
  7. B2 The Optimist 3:21
  8. B3 Let's Jump The Broomstick 2:40
  9. B4 Wretched Wilbur 2:34
  10. B5 The North Star Grassman And The Ravens 3:25
  11. B6 Crazy Lady Blues 3:21

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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