David McWilliams - Lord Offaly (1972)
David McWilliams 1972

David McWilliams - Lord Offaly (1972)

Rock Folk, World, & Country Folk Rock

David McWilliams『Lord Offaly』について

David McWilliamsの『Lord Offaly』は、北アイルランド出身のシンガー・ソングライターが1972年に発表したアルバムで、70年代前半のフォーク・ロック文脈に置くと、かなり重要な位置を占める作品だ。1967年の「Days of Pearly Spencer」で広く知られた彼が、その後の活動の中であらためて作家性を前面に出した1枚であり、商業的な大ヒットよりも、曲そのものの組み立てや歌の運びに重きが置かれている。盤は1973年にUSのPye Recordsから出ており、オリジナルの制作時期とは少しずれがある。

作品の位置づけ

David McWilliamsは1945年にベルファストで生まれたアーティストで、60年代の英米ポップ・フォークの流れの中で活動してきた。『Lord Offaly』は、そうした初期の知名度をそのまま引き継ぐというより、より落ち着いた視点で楽曲を積み上げた時期の作品として聴こえる。Dawnレーベル系のリリースとして扱われたこの時期は、彼にとって再出発の局面でもあり、アルバム全体にもその空気がある。

この作品では、フォークの語り口とロックの骨格が無理なく同居している。派手なアレンジで押すタイプではなく、歌詞の輪郭とメロディの流れをきちんと見せる作りで、70年代初頭の英国圏シンガー・ソングライター作品に近い手触りがある。Cat StevensやDonovanのような同時代の作り手と並べて語られることがあるのも、その音の距離感によるものだろう。

US盤とレーベル事情

この盤はUSリリースで、Pye Recordsから出ている。Pyeは英国のレーベルとして知られ、The Kinks、The Searchers、Donovan、Sandie Shaw、Petula Clarkらを抱えていたことで有名だが、1969年に米国拠点を設けて北米市場にも進出していた。『Lord Offaly』のUS盤は、その流れの中で流通した一枚ということになる。さらにスリーブにはBell Recordsのプロモーション・ステッカーが付属したとされ、当時の販売・宣伝の実務がうかがえる。

盤の年が1973年であるため、作品そのものの成立年と流通年は分けて見ておきたい。実際の音楽内容は1972年の制作・発表期に属し、1973年盤はその後に市場へ出た形だ。こうしたずれは70年代の輸出盤や流通盤では珍しくない。

聴きどころ

このアルバムでまず目立つのは、歌の運びが非常にまっすぐなことだ。過剰な装飾に頼らず、フレーズの終わり方や言葉の置き方で曲を進めていく。フォーク・ロックという言葉から連想される通りの編成感はあるが、実際にはもっと素直で、アコースティックな響きが中心になっている場面が多い。派手なサビで引っ張るより、曲の温度を一定に保ちながら聴かせるタイプのアルバムといえる。

また、David McWilliamsの作品として見ると、この盤は「Days of Pearly Spencer」のような一発の知名度で聴かれるものではない。むしろ、アルバム単位での安定感が前に出る。大きなヒット曲が作品の中心にあるというより、全体の流れで印象を残す作りだ。のちの再発盤や回顧的なレビューで評価されるのも、そのあたりのまとまりの良さが理由になっている。

同時代とのつながり

1972年前後の英国・アイルランド系シンガー・ソングライターは、フォークの伝統を残しつつ、ロックの録音感覚を取り入れていく流れにあった。『Lord Offaly』もその文脈に置くと理解しやすい。大きなドラマを作るより、素朴な歌の強さを保ったままアルバムを組み立てる姿勢は、当時のフォーク・ロックの中でもかなり誠実な部類に入る。

この作品が直接どの後続アーティストに影響を与えたかを断定するのは難しいが、埋もれた佳作として再評価されるタイプのアルバムではある。商業的な成功よりも、曲作りと歌唱の安定感で記憶される盤、と言ってよさそうだ。

まとめ

『Lord Offaly』は、David McWilliamsの代表曲だけを追うと見落としやすいが、アーティストの70年代前半の姿を知るうえでは重要な作品だ。ベルファスト出身のシンガー・ソングライターが、フォークとロックの境目で自分の歌を整え直していく過程が、そのままアルバムになっている。1973年US盤という形で残るこのリリースは、70年代初頭の英米レーベル事情も含めて、当時の流通のあり方まで感じさせる一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Go On Back To Momma (From The Film "Gold") 3:30
  2. A2 She Was A Lady 4:25
  3. A3 I Will Always Be Your Friend 4:00
  4. A4 Heart Of The Roll 3:25
  5. A5 I Would Be Confessed 5:08
  6. B1 Spanish Hope (Instrumental) 3:50
  7. B2 Blind Mens Stepping Stones 5:56
  8. B3 Lord Offaly 6:33
  9. B4 The Prisoner 4:00
  10. B5 The Gypsy 3:40

動画

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Folk Rock"

toast