Terraced Garden - Braille (1984)
Terraced Garden『Braille』(1984)レビュー
Terraced Gardenの『Braille』は、1984年にカナダでリリースされた2作目のアルバム。トロントを拠点にしたプログレッシブ・ロック・バンドで、中心にいるのはマルチ奏者のCarl Tafel。バンドのプロフィールとしては、1980年代に3枚のアルバムを残したグループで、この『Braille』はその中でも初期の到達点にあたる作品として扱われている。
前作『Melody & Menace』の流れを引き継ぎつつ、ここではよりバンドとしてのまとまりが前に出ている。実際、Terraced Gardenはソロ的な構想から始まり、その後にバンド形態へと発展した経緯があり、1983年にはDarrell Flint(b)、Scott Weber(ds)、Jody Mitchell(g)を軸に、のちにSimon Jacobs(vn)が加わる編成で活動していた。ライブではメンバーが楽器を持ち替える場面もあったとされ、演奏面の柔軟さがそのまま作品の性格にもつながっている。
作品の輪郭
『Braille』は、カナダ盤のオリジナル・リリースで、インナー・スリーブに歌詞を収録している。レーベル表記はこの盤では「Melody & Menace Records」。作品全体は、派手なヒット性よりも、細かいアレンジの積み重ねと構成の運びで聴かせるタイプのプログレッシブ・ロックにまとまっている。
曲の長さは比較的コンパクトで、いわゆる大作主義一辺倒ではない。鍵盤、ヴァイオリン、アコースティック・ギターの絡みが前景に出る場面が多く、クラシック、フォーク、ジャズ・フュージョンの要素が自然に混ざる。声の使い方にも工夫があり、Gentle Giantを思わせる多重的なコーラスや、リズムの切り替えを伴う展開が目立つ。
聴きどころ
この作品でまず耳に入るのは、音の密度よりも、音符の置き方の細かさ。ギターが前に出る場面でも、単純に押し切るのではなく、鍵盤やヴァイオリンが隙間を埋めていく。そこにアコースティック楽器の響きが加わることで、硬質になりすぎず、室内楽的なまとまりを保っている。
また、プログレとしては珍しく、構成が複雑でも聴き疲れしにくい。楽曲ごとに緊張感を保ちながらも、過剰に引き延ばすことはない。演奏の切り替えやパートの接続が滑らかで、バンド全体が同じ設計図を共有している印象が強い。技巧を見せるための技巧ではなく、曲の流れの中に複雑さを置いている点が、このアルバムの特徴として残る。
同時代の文脈
1984年という時期に、こうしたカナダ産のプログレッシブ・ロックが出ているのは興味深い。80年代前半のプログレは、70年代の大編成・大作志向とは少し距離を取りながら、よりコンパクトな構成や演奏精度へ向かう流れがあった。『Braille』もその文脈に置くと見えやすい。派手な商業性より、緻密なアンサンブルと音色の組み合わせを重視する作りで、当時の主流ロックとは異なる場所に立っている。
後年のレビューでは、Echolynのような技巧派プログレとの接点や、クラシック寄りのアレンジ感が語られることがある。Terraced Gardenの音楽は、ジャンルの名前を並べるだけでは収まりにくいが、少なくとも『Braille』では、シンフォニック・ロックの骨格に、フォークやジャズの感触を織り込んだ作りがはっきりしている。
位置づけ
Terraced Gardenにとって『Braille』は、ソロ的な出発点からバンドとしての書法へ移ったあと、その方向性を整理した一枚として見える。3枚しか残していないバンドだからこそ、作品ごとの輪郭も比較的追いやすいが、このアルバムはその中でも、編成の厚みと構成のまとまりが前に出た作品として印象に残る。
カナダ盤オリジナルの存在、歌詞入りインナー・スリーブ、そしてメロディと複雑さを両立させた演奏。『Braille』は、80年代前半のプログレッシブ・ロックが持っていた職人的な側面を、そのまま封じ込めたレコードとして整理できる。
トラックリスト
- A1 Silent Disarray 2:34
- A2 Gentlemen Of Leisure 4:40
- A3 Versailles 3:42
- A4 Delusions Of Grandeur 4:33
- A5 Structural Damage 5:46
- B1 Internment 3:10
- B2 Winter 4:03
- B3 Fallen Honour 1:55
- B4 Blobo 5:00
- B5 Empty Beach 6:33