The Human League - Reproduction (1979)
The Human League 1979

The Human League - Reproduction (1979)

Electronic New Wave Synth-pop

The Human League『Reproduction』──英国シェフィールド発、初期エレクトロの硬質なデビュー作

The Human Leagueの『Reproduction』は、1979年にUKのVirginから発表されたデビュー・アルバム。のちに「Don’t You Want Me」で大きく知られる前の作品で、Martyn Ware、Ian Craig Marsh、Phil Oakeyを中心とした初期メンバーの時代を記録した1枚である。ギター・バンド的なロックの文法から離れ、シンセサイザーと電子音を軸に組み上げた音作りがはっきりしていて、後のシンセ・ポップとは少し距離のある、実験色の強い内容になっている。

バンドの出発点としての位置づけ

The Human Leagueは1977年、シェフィールドでMartyn WareとIan Craig Marsh、Adi Newtonによって前身バンド「The Future」として始まり、Newton脱退後にPhil Oakeyが加わって改名した。『Reproduction』は、その初期の編成による最初の長編作品であり、後の商業的成功とは別の、かなり尖った出発点を示すアルバムでもある。ここではまだ、後年の洗練されたポップ・ソングというより、電子音そのものの質感や構造を前面に出した作りが目立つ。

当時の英国では、Cabaret Voltaire、Throbbing Gristle、Human League周辺の初期エレクトロニック・ミュージックが、ポストパンク以後の新しい表現として並走していた。そうした文脈の中で聴くと、『Reproduction』はダンス・ミュージックの方向へ寄る前の、観察と実験の色が濃い作品として見えてくる。

録音とサウンド

録音は地元シェフィールドのバンド自身のスタジオで、約6週間かけて行われた。共同プロデューサーはColin Thurston。Iggy PopやMagazineの仕事でも知られる人物で、この時期の硬質な音像づくりに関わっている。実際の音は、機械的なリズム、冷たいシンセのフレーズ、低く置かれたボーカルが中心で、楽曲によってはインダストリアル寄りの緊張感もある。音数は多くないが、空間の使い方がはっきりしていて、各音がぶつかり合うように配置されている印象だ。

聴いていてまず目に入るのは、メロディの分かりやすさよりも、音の輪郭の強さ。後のThe Human Leagueが得意にする親しみやすいコーラスや、明快なポップ・フックはまだ前面には出ていない。そのぶん、機械的な反復や不穏な温度感が残る。

収録曲と代表曲

シングルとして切られたのは「Empire State Human」。アルバム全体の中でも比較的外へ開いた曲で、のちのバンド像につながる要素を少し先取りしている。とはいえ、アルバムの中心はヒット狙いの並びではなく、曲ごとの質感の違いを見せる構成にある。

B面にはRighteous Brothersの「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’」のカヴァーが置かれている。導入の「Morale...」から続く流れは、単独曲というより組曲のように聴こえる作りで、原曲の有名さとは別の場所に着地している。こうした選曲も、単なるシンセ・ポップ・バンドではなかった初期Human Leagueの姿をよく表している。

ジャケットの印象

ジャケットには、ガラス張りの床の上で大人たちが踊り、その下に裸の赤ん坊たちがいる写真が使われている。視覚的なインパクトが強く、発売当時から話題になった。制作側はディスコのダンスフロアのイメージを意図したとされるが、受け取る側には別の印象も残りやすい。音だけでなく、外観まで含めて初期Human Leagueの不穏さが出たデザインだ。

初回リリースとその後

このUKオリジナル盤はVirgin V2133。1979年当時のリリースで、レーベル面にはVirginの1978〜1987年期に使われたグリーン/レッド系のデザインが見られる時代。ランアウトにはUtopia Studiosの竪琴マークも刻まれている。後年の再発盤では、1989年以降のCD化でボーナストラックが追加されるようになり、初期音源やシングルB面などが補われた。

オリジナル発売時の『Reproduction』は商業的には大きく振るわなかったが、メンバー交代後の新生Human Leagueが成功したことで再評価が進み、1981年の再発でチャート入りした。結果として、このアルバムは「売れたデビュー作」というより、後の成功を知る耳で遡って聴かれる土台の記録になっている。

まとめ

『Reproduction』は、The Human Leagueの初期衝動をそのまま閉じ込めたデビュー作。シェフィールドの電子音楽的な気質、ポストパンク以後の実験精神、そしてまだポップに振り切る前の緊張感が同居している。後年の代表曲「Don’t You Want Me」へ直結する作品ではないが、バンドがどこから始まったのかを知るには欠かせない1枚である。

トラックリスト

  1. A1 Almost Medieval 4:34
  2. A2 Circus Of Death 3:51
  3. A3 The Path Of Least Resistance 3:27
  4. A4 Blind Youth 3:16
  5. A5 The Word Before Last 3:56
  6. A6 Empire State Human 3:10
  7. B1a Morale...
  8. B1b You've Lost That Loving Feeling 9:30
  9. B2 Austerity / Girl One (Medley) 6:38
  10. B3 Zero As A Limit 4:01

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

The Human League

The Human League

The Human Leagueは、イングランド・シェフィールドで1977年に結成されたエレクトロニック・バンドだ。中心人物はMartyn Ware、Ian Craig Marsh、そし...

The Human League のプロフィール・作品一覧

The Human League の他のレビュー

Share
戻る

あわせて聴きたい "New Wave"

toast