The Jimmy Castor Bunch - It's Just Begun (1972)
The Jimmy Castor Bunch 1972

The Jimmy Castor Bunch - It's Just Begun (1972)

Funk / Soul Funk Soul

The Jimmy Castor Bunch『It’s Just Begun』

1972年にUSのRCA Victorから出た、The Jimmy Castor Bunchの2作目のアルバム。Jimmy Castorを中心にしたファンク/ソウル・グループの初期代表作で、のちのヒップホップやブレイクダンスの文脈でも繰り返し参照される一枚だ。表題曲「It’s Just Begun」と「Troglodyte (Cave Man)」の存在がまず大きく、アルバム全体の印象もその2曲を軸に記憶されることが多い。

Jimmy Castorという人物と、この作品の立ち位置

Jimmy Castorは、10代前半からニューヨークのドゥーワップ・シーンに関わっていた人物で、フランキー・ライモン&ザ・ティーンエイジャーズとも近い関係にあった。12歳の時に書いた「I Promise To Remember」は、のちに同グループが1956年に録音し、R&Bチャート10位、ポップチャート57位を記録している。本作ではその曲のセルフカバーがB4に収録されており、キャスターのキャリアの長さと、50年代から70年代へと続く黒人音楽の流れが一枚の中でつながっている。

The Jimmy Castor Bunchは、キャスター自身の名を冠したバンドとしては通算2作目のアルバムで、本作でグループの方向性がはっきり見えてくる。ファンクの強いビート、ソウルの歌心、ところどころに入るラテン的なニュアンスが同居し、当時のニューヨークらしい雑多さもある。James Brown系の硬いファンクとは少し違い、リズムの反復の中に声やフックを多めに置く作りで、聴き進めるほどに楽曲ごとのキャラクターが立ってくる盤だ。

「It’s Just Begun」と「Troglodyte (Cave Man)」

本作の核はやはりこの2曲。タイトル曲「It’s Just Begun」は、冒頭のブレイクが特に有名で、1970年代ブロンクスのDJクール・ハークが自身のパーティーでプレイし、2枚使いでブレイク部分を延々とつなぐ手法の重要曲のひとつとして語られてきた。後年のヒップホップDJ文化に直結する素材として扱われた点で、この曲の役割は大きい。

「Troglodyte (Cave Man)」は、全米Billboard Hot 100で6位、R&Bチャートで4位を記録した大ヒット曲。1972年6月30日には100万枚セールスを示すゴールドディスクにも認定されている。曲の中では語り口の強さとリズムの押し出しが前面に出ていて、ファンク・ナンバーでありながら、コミカルなキャラクター性もはっきりしている。ラジオ向けのわかりやすさと、クラブ的な反復の両方を持った曲で、アルバムの知名度を決定づけた存在だ。

サンプリングとヒップホップへの接続

『It’s Just Begun』が長く重要視されてきた理由は、単なるヒット盤にとどまらないところにある。特に表題曲のブレイクは、B-boyダンスの定番として定着し、のちのサンプリング文化でも何度も引用された。100回を超えるサンプリング実績があるとされ、BBCがジミー・キャスターを「音楽史上最もサンプリングされたアーティストの一人」と評したこともある。ここで使われている素材は、後年のヒップホップの制作感覚にそのままつながるものとして扱われてきた。

同時代のファンクと比べると、The Jimmy Castor Bunchは演奏の重さだけで押し切るタイプではなく、リフ、掛け声、語り、ブレイクの配置で曲を組み立てる傾向が強い。そうした作りが、のちにDJやプロデューサーに拾われやすかったのだろう。Sly & The Family StoneやJames Brownの系譜と並べて語られる場面もあるが、キャスターのバンドはよりストリート寄りの感覚を持ったファンクとして耳に残る。

このUSオリジナル盤について

この盤は1972年のUSリリースで、RCA VictorのLSP-4640。裏ジャケット下部にPart Number 5/LSP4640の表記があり、ランアウトの「R」からRCA Records Pressing Plant, Rockawayプレスとわかる。薄手で軽いDynaflex盤で、同時代のRCAらしい仕様だ。ジャケットやラベルの表記も含めて、70年代初期のRCA製品の空気がそのまま残っている。

録音物としては、後年の再発やコンピレーションでより広く知られるようになった曲も多いが、オリジナル盤のまとまりはやはり一つの作品として強い。ヒット曲の配置、B面に置かれたセルフカバー、そしてアルバム全体に流れるファンクの推進力が、当時の黒人音楽の現場感をよく伝えている。『It’s Just Begun』は、70年代初頭のファンク・アルバムであると同時に、ヒップホップ以前のブレイクの記憶を今に残す記録でもある。

トラックリスト

  1. A1 Creation (Prologue) 1:24
  2. A2 It's Just Begun 3:43
  3. A3 Troglodyte (Cave Man) 3:26
  4. A4 You Better Be Good (Or The Devil Gon' Getcha) 2:56
  5. A5 Psyche 4:25
  6. B1 L. T. D. (Life, Truth & Death) 7:20
  7. B2 My Brightest Day 4:03
  8. B3 Bad 3:34
  9. B4 I Promise To Remember 2:47
  10. B5 Creation (Epilogue) 1:02

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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