Lyn Collins - Think (About It) (1972)
Lyn Collins『Think (About It)』について
Lyn Collinsの『Think (About It)』は、1972年にUSのPeople Recordsから出た作品で、同年のソウル/ファンクの空気をかなり濃くまとった一枚。リン・コリンズは、いとこにあたるブーツィー&キャットフィッシュ・コリンズ兄弟とともにジェームス・ブラウン周辺で育ったシンガーで、70年代初頭のブラウン・サウンドを語るうえで外せない存在。女性リードとしての力強い歌唱、ゴスペル由来の押し出しの強さ、リズムの切れ味が前面に出た人で、この作品もその持ち味がはっきり出ている。
People Recordsはジェームス・ブラウンが立ち上げたレーベルで、ここにはLyn CollinsやThe J.B.'sのような、ブラウンの周辺を支えた重要なアーティストが並んだ。本作はその中でも、コリンズの代表作として扱われることが多いタイトル。アルバム全体を見ても、ブラウンが作曲・プロデュースを手がけており、彼女の歌を通じて当時のJB流ファンク/ソウルの輪郭がそのまま見えてくる。
表題曲「Think (About It)」の強さ
この作品を語るうえで中心になるのが表題曲「Think (About It)」。1972年6月にシングルカットされ、ソウル・チャートで9位、Billboard Hot 100でも66位を記録した、Lyn Collinsにとって最大のヒット。曲の骨格は、タイトなリズム隊とコリンズのシャープなボーカルの応酬にある。歌い回しは直線的で、語尾の切り方も明瞭。ブラウン周辺の作品らしく、歌がビートの上に乗るというより、ビートを押し返しながら前へ出ていく感覚がある。
この曲で特に知られるのが、J.B.'sのドラマー、Jabo Starksによるドラムブレイク。「Yeah! Woo!」の掛け声や、後年のヒップホップで繰り返し引用されたフレーズも含めて、サンプリング文化の中で非常に長い寿命を持った。Rob Base & DJ E-Z Rockの「It Takes Two」がその代表例で、原曲の断片がどれほど強いフックとして機能するかを示した一曲でもある。ヒップホップやドラムンベースで何度も使われてきたのは、この曲のリズムが単なる素材ではなく、切り出した瞬間に曲として立つだけの強度を持っているからだろう。
アルバムとしての位置づけ
『Think (About It)』は、Lyn Collinsのソロ作品の中でも最も広く知られた一枚で、彼女のイメージを決定づけた作品。収録曲には、1968年にMarva Whitney向けに録音された演奏に後からコリンズのボーカルを重ねた曲も含まれており、People Recordsの制作体制や、ジェームス・ブラウン周辺の実務的な作り方も見えてくる。1曲ずつの完成度を競うというより、レーベル全体の機動力で一気に仕上げたような手触りがある。
同時代のファンク/ソウルと比べると、ここには甘さよりも推進力がある。女性シンガーの作品としては、ヴィッキー・アンダーソンやマーヴァ・ホイットニーの系譜にも近いが、Lyn Collinsはより硬質で、叫ぶような語り口が前に出る。ジェームス・ブラウンのバンドが持っていた反復の美学、ブレイクの切れ味、コール&レスポンスの構造が、そのまま彼女の声に接続されている印象。
盤の仕様について
このUS盤はMonarch Record Mfg. Co.プレスで、ラベルの左側にSide 1/2表記があること、ランアウトに「MR」刻印があることが見分けの手がかりになる。People Recordsのオリジナル期らしい仕様で、レーベルの赤または紫ラベルのバリエーションも知られている。盤としては、1972年当時のファンク・ソウルの空気をそのまま閉じ込めた初期プレスの一枚。
まとめ
『Think (About It)』は、Lyn Collinsの歌唱力とジェームス・ブラウン周辺の制作感覚が、最もはっきり結びついた作品。表題曲の強いリフ、ドラムブレイク、掛け声、そしてボーカルの押し出しが一体になっていて、後年のサンプリング文化の中でも繰り返し参照され続けた。ヒット曲としての存在感と、素材としての圧倒的な利用頻度、その両方を持つ1972年のソウル/ファンク盤。
トラックリスト
- A1 Think (About It) 3:21
- A2 Just Won't Do Right 2:59
- A3 Wheels Of Life 3:02
- A4 Ain't No Sunshine 2:49
- A5 Things Got To Get Better 3:25
- B1 Never Gonna Give You Up 3:02
- B2 Reach Out For Me 3:30
- B3 Women's Lib 5:17
- B4 Fly Me To The Moon 2:45