The Whispers - This Kind Of Lovin' (1981)
The Whispers『This Kind Of Lovin'』(1981) 作品紹介
The Whispersの『This Kind Of Lovin'』は、1981年にSolarから出たアルバムで、グループが70年代後半から80年代前半にかけて築いた流れの中にある一枚だ。Watts出身の男性ヴォーカル・グループとして長く活動してきた彼らは、70年代後半にSolarへ移ってから、より洗練されたR&B路線で存在感を強めていく。その時期の空気を、比較的コンパクトな尺の中にまとめた作品がこれである。
Whispersは、Wallace ScottとWalter Scottの双子を中心に、Nicholas Caldwell、Marcus Hutson、Gordy Harmonでスタートしたグループだ。後にLeaveil Degreeが加わり、Solar時代にはスムーズなコーラスとダンス志向のサウンドで安定したヒットを重ねていく。本作もその流れの中にあり、タイトル曲「This Kind of Lovin'」を軸に、踊れる曲と歌モノのバランスを取った内容になっている。
Solar時代の中での位置づけ
1981年のThe Whispersは、Solarの看板グループのひとつとして機能していた時期だ。SolarはLos Angeles発のレーベルで、ディスコ以後のブラック・ミュージックを整理しながら、ファンク、ソウル、ダンス・ミュージックを結びつけていった。その中心にはLeon Sylvers 3世らの制作感覚があり、The Whispersもその“Solarらしさ”を体現する存在だった。
前後の流れで見ると、1979年の『Imagination』、1980年の『It’s a Love Thing』に続き、本作はその勢いを保ちながら出たアルバムになる。翌年には『Love Is Where You Find It』も控えており、80年代初頭の彼らはかなり高い頻度で作品を出していた。活動の密度という意味でも、グループの充実期の記録として見やすい。
サウンドの特徴
この時期のR&Bらしく、音の輪郭ははっきりしている。シンセやリズム・セクションが前に出る場面がありながら、The Whispersの強みである整ったハーモニーがきちんと中心に残る。ダンス寄りの曲でも、ただビートを押すだけではなく、ヴォーカルの流れで曲を運ぶ作り。聴き進めると、1曲ごとの派手さより、アルバム全体のまとまりで印象が残るタイプだ。
タイトル曲「This Kind of Lovin'」は、アルバムの顔として機能している。R&Bシングル・チャートでは最高17位を記録し、アルバムもBillboard 200で100位、R&Bアルバム・チャートで15位まで到達した。大きな爆発力で押す作品ではないが、当時のThe Whispersが安定したチャート力を持っていたことは、この数字からもわかる。
収録曲の聴きどころ
外から見て目立つのはタイトル曲だが、アルバム全体では「World of a Thousand Dreams」や「I’m the One for You」のような曲にも、グループの歌の運び方がよく出ている。高音の抜けやコーラスの揃い方に、長く活動してきたグループならではの落ち着きがある。若いグループの勢いとは違い、フレーズの置き方や声の重ね方に無理がない。
この作品を聴くと、The Whispersがただのソウル・グループではなく、70年代ディスコ以後のR&Bをしっかり自分たちのものにしていたことが見えてくる。ShalamarやLakeside、Midnight Starと並べて語られることの多いSolar勢の中でも、彼らは特にコーラスの滑らかさで印象を残すグループだ。本作もその特徴が素直に出た一枚である。
当時の文脈とエピソード
1981年は、R&Bの現場で音の更新が進んでいた時期だ。ディスコの余韻を残しながら、より電子的でタイトなビートへ移る途中の空気がある。その中でThe Whispersは、流行の音を取り入れつつ、グループ・ヴォーカルの芯を崩していない。ここがこの時期の彼らを追ううえで重要な点だ。
なお、本作のクレジットには℗ 1981 Dick Griffey Productions、© 1981 RCA Recordsとあり、印刷はU.S.A.表記。Solarの作品らしく、レーベル・サウンドとグループの個性が近い距離で結びついている。The Whispersはこの後も長く活動を続け、80年代半ばにはさらに大きな成功も得るが、『This Kind Of Lovin'』はその前段で、彼らの持ち味が安定して形になっていた時期を示すアルバムとして捉えやすい。
まとめ
『This Kind Of Lovin'』は、The Whispersのディスコ後R&B路線がきれいにまとまった1981年作だ。タイトル曲のチャート実績に支えられつつ、アルバム全体では派手さよりも統一感が前に出る。Solarの洗練された制作環境と、The Whispersの整ったコーラスが噛み合った記録として、80年代初頭のソウルを追ううえで押さえやすい一枚である。
トラックリスト
- A1 This Kind Of Lovin' 5:00
- A2 World Of A Thousand Dreams 3:45
- A3 I'm The One For You 4:05
- A4 Got To Get Away 5:00
- B1 I'm Gonna Love You More 6:03
- B2 Can't Stop Loving You Baby 4:19
- B3 What Will I Do 4:05
- B4 The Bright Lights And You Girl 3:25