The Pineapple Thief - One Three Seven (2002)
The Pineapple Thief 2002

The Pineapple Thief - One Three Seven (2002)

Rock Prog Rock Art Rock

The Pineapple Thief『One Three Seven』レビュー

英国のプログレッシブ・ロック・バンド、The Pineapple Thiefの『One Three Seven』は、2002年に発表された2作目のアルバムである。のちにメロディ重視の作風へと進んでいくこのバンドだが、本作ではまだその移行期の空気が濃く、初期の実験性と曲作りの手触りがそのまま残っている。Bruce Soordを中心とするプロジェクトとして始まったThe Pineapple Thiefが、バンド形態へと広がっていく前段階の記録でもある。

2015年にKscopeから出たこの盤は、オリジナルの2002年盤とは別の再発で、ゲートフォールド仕様、ドイツ製プレスとなっている。マスターノートによれば、収録曲「137」はもともとCyclops系の2002年盤でAngelo Prodaneがミックスしたもので、2013年にBruce SoordとSteve Kitchがアルバム全体をリミックスした。そのため2013年以降の版では、音像の整理された新しいミックスで聴ける点が大きい。オリジナル盤を知るリスナーにとっては、同じ曲でも輪郭の出方が違う再発になっている。

作品の位置づけ

The Pineapple Thiefは1999年にBruce Soordの音楽的ビジョンとして始まり、2002年の時点ではまだソロ・プロジェクトに近い性格が強い。本作の時点でも、作曲の中心はSoord自身で、演奏や録音、ミックスまで広く担っていたことがうかがえる。後年、Steve Kitchが加わり、さらにライブバンドとしての輪郭を強めていくが、『One Three Seven』はその前の段階、個人の構想がかなり直接的に形になっていた時期の作品である。

このアルバムは、のちの洗練されたメロディや、重心の低いアレンジに比べると、音の運びに少し余白がある。曲によっては場面転換がはっきりしていて、キーボードのラインやギターのフレーズが前面に出る。プログレッシブ・ロックの文脈では、同時代のPorcupine TreeやIQ、あるいは静かな内省を含むArt Rockの流れと接点を持つが、ここではまだThe Pineapple Thief独自の繊細さが完全に定着する前の姿が見える。

聴きどころ

収録時間は長めで、1曲ごとの展開にもひとつひとつ時間を使っている印象がある。全体を通して聴くと、派手な見せ場を連発するタイプではなく、少しずつ音を重ねて空気を作る構成が目立つ。ギター、キーボード、リズム隊が過剰にぶつからず、曲の内部で役割を分けながら進む流れがある。リミックス版では、その整理されたバランスがさらに聴き取りやすい。

とくにタイトル曲「137」は、本作を代表する核として扱われることが多い。もともとのミックスから再発版で手が入っているため、曲の輪郭や音の奥行きに違いが出ている点も興味深い。アルバム全体としては、すぐに印象だけで押し切るのではなく、繰り返し聴くうちに構造が見えてくるタイプの作りで、初期プログレらしい緊張感と、のちのThe Pineapple Thiefらしい叙情の両方が同居している。

当時の評価と背景

当時のレビューでは、映画音楽を思わせる雰囲気やキーボードの印象的な使い方が評価されていた。商業的な大ヒット作というより、批評面で初期の評価を積み上げた作品として受け止められている。Bruce Soord自身が後年、このアルバムを急いで完成させた作品として振り返っており、その後Kscopeへ移る流れのきっかけにもなった。つまり『One Three Seven』は、The Pineapple Thiefが次の段階へ進む直前の、ひとつの区切りとして置かれるアルバムである。

2000年代初頭の英国プログレは、長大な組曲や技巧の誇示だけでなく、メロディや音響の質感を重視する流れが強まっていた。本作もその空気の中にありながら、まだ手触りは個人的で、どこかラフな部分を残している。完成度を整え切る前の段階にあるからこそ、曲の芯や作家性が見えやすい一枚である。

まとめ

『One Three Seven』は、The Pineapple Thiefの初期を知るうえで重要な作品である。2002年のオリジナル発表時点では、Bruce Soordの個人的な創作が強く出たアルバムであり、2015年Kscope盤では2013年のリミックスによって、より整理された音で再提示されている。のちの作品にある繊細なメロディやバンドとしてのまとまりはまだ発展途上だが、その分だけ、初期ならではの試行錯誤と、次の段階へ進む前の緊張感がはっきり残っている。

トラックリスト

  1. A1 Lay On The Tracks 4:46
  2. A2 Perpetual Night Shift 5:25
  3. A3 Kid Chameleon 7:02
  4. B1 Incubate 3:25
  5. B2 Doppler 7:33
  6. B3 Ster 4:00
  7. C1 Release The Tether 5:04
  8. C2 How Did We Find Our Way? 3:57
  9. C3 137 5:02
  10. C4 Preserve 5:20
  11. D1 Warm Me 3:26
  12. D2 Pvs 11:42
  13. D3 Md One 3:57

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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