Anthony Phillips - Private Parts & Pieces II: Back To The Pavilion (1980)
Anthony Phillips 1980

Anthony Phillips - Private Parts & Pieces II: Back To The Pavilion (1980)

Rock Prog Rock

Anthony Phillips『Private Parts & Pieces II: Back To The Pavilion』

Anthony Phillipsは、Genesisの初期を支えたオリジナル・ギタリストとして知られる人物だが、ソロでは大編成のロックというより、室内楽的な響きや繊細なメロディを軸にした作品を積み重ねてきた。この『Private Parts & Pieces II: Back To The Pavilion』は、そうしたソロ活動の中でも、断片的な素材や過去録音をまとめて一枚に編み直した1980年作で、シリーズ第2弾にあたる。米国盤はPVC Recordsからのリリースで、1980年当時の空気をそのまま閉じ込めた一枚だ。

本作の核にあるのは、完成度の高い「アルバム作品」というより、時期の異なる録音を編集しながら、ひとつの流れにまとめる構成にある。収録曲の多くは1976年から1977年にかけての録音で、Send Barns、Olympic Studios、Essex Studios、Farmyard、Trident Studiosなど、複数の場所で記録された素材が使われている。録音年代や場所がばらばらでも、最終的には統一感のある器楽作品集としてまとまっている点がこの作品の面白さだ。

作品の性格と聴きどころ

冒頭の「Scottish Suite」は、アルバムの性格をかなりはっきり示す曲で、組曲形式の流れの中に、フィリップスらしい旋律処理とアコースティック楽器の重なりが置かれている。曲名にある“Scottish”は、実際の内容をそのまま説明するというより、遊び心のある副題を含んだものとして付けられており、作品全体の肩の力が抜けた雰囲気にもつながっている。

タイトル曲「Back To The Pavilion」は、このアルバムの中心に置かれた曲で、印象に残るピアノ主体の流れを持つ。フィリップスは早い時期からピアノで作曲を進めていたが、その蓄積がこうした曲に結びついている。派手な展開で押すのではなく、短いモチーフを丁寧に並べる作りで、Genesis時代の大仰なプログレとは別の場所にある、静かな作曲家としての顔が見える。

全体を通して、曲ごとの表情はかなり細かく変わる。ギター、ピアノ、木管系の響きが前に出る場面もあれば、短い断章のように終わる曲もある。大きなドラマを作るというより、1曲ごとの質感を追っていくタイプの作品で、聴き進めるほどにフレーズの組み方や和声の置き方が見えてくる構成だ。

シリーズの中での位置づけ

『Private Parts & Pieces』シリーズは、Anthony Phillipsのソロ活動の中でも、完成曲だけでなく未発表素材や別用途のスケッチを含めて、作曲家としての思考の流れを見せる役割を持っている。その第2作となる本作は、デビュー期から続くフィリップスの繊細な作風を、より断片的な形で提示した一枚として重要だ。『The Geese and the Ghost』のような大きな組曲性とは少し違い、ここでは小品の積み重ねが前面に出る。

また、フィリップスのキャリアをGenesisの文脈だけで捉えると見落としやすいが、彼は早い段階から、ロック・ギタリストというより作曲家、編曲家としての比重が大きかった。このアルバムはその側面をよく示している。プログレッシブ・ロックの時代にありながら、演奏の技巧を見せるための作品ではなく、素材を整理し、曲の輪郭を整えること自体が主題になっている。

制作メモと盤の特徴

リリース資料には、マスタリングがTridentで行われ、再マスタリングがSterling Soundで施されたことが記されている。ジャケット面では、モザイク・デザインに「Arabic Art in Colour」からの図版が使われており、音だけでなく視覚面でも、装飾性と古典趣味が強い。作品の献辞も含め、アルバム全体に「美しさ」「抒情性」「気品」を重んじる姿勢がはっきり出ている。

なお、1980年の米国盤はPVC Recordsからの発売で、当時のUSプログレ再流通の一環として流通した。オリジナル年と同じ1980年の盤なので、後年の再発盤のような別仕様ではなく、当時の形をそのまま手に取れる点もこの盤の特徴だ。

総括

『Private Parts & Pieces II: Back To The Pavilion』は、Anthony Phillipsのソロ作の中でも、派手さよりも作曲の手触りを追う内容の一枚だ。Genesisの元ギタリストという肩書きだけでは収まりきらない、静かな構成力と室内楽的な発想が前面に出ている。プログレッシブ・ロックの文脈に置きながらも、リフやソロで押し切るタイプではなく、断片の連なりで曲を形にしていく作りが印象に残る。1970年代後半の録音を1980年にまとめたことで、時期の異なる素材がひとつの景色として見える、そんなアルバムになっている。

トラックリスト

  1. N.O.R. Side
  2. Scottish Suite 15:15
  3. A2 Lindsay 3:50
  4. A3 K2 8:53
  5. A4 Postlude: End Of The Season 0:32
  6. S.O.R. Side
  7. B5 Heavens 4:22
  8. B6 Spring Meeting 3:52
  9. B7 Romany’s Aria 0:50
  10. B8 Chinaman 0:41
  11. B9 Nocturne 4:05
  12. B10 Magic Garden 1:56
  13. B11 Von Runkel’s Yorker Music 0:41
  14. B12 Will O’ The Wisp 3:30
  15. B13 Tremulous 1:06
  16. B14 I Saw You Today 4:34
  17. B15 Back To The Pavilion 2:51

動画プレイリスト

Share
戻る

あわせて聴きたい "Prog Rock"

toast