Pretty Things - S.F. Sorrow (1968)
The Pretty Things 1968

Pretty Things - S.F. Sorrow (1968)

Rock Psychedelic Rock

Pretty Things『S.F. Sorrow』— 1968年の英国サイケデリックが築いた物語盤

Pretty Thingsの『S.F. Sorrow』は、1968年にUKのColumbiaから発表された作品で、バンドの歩みの中でも特に重要な位置を占めるアルバムだ。ロンドンで結成されたこのグループは、初期にはR&B色の強いバンドとして知られていたが、本作ではその出発点から大きく踏み出し、物語性の強い構成とサイケデリックな音作りを前面に出している。のちに「最初期のロック・オペラ」と語られることも多いが、実際に聴くと、その呼び方にふさわしいほど曲同士のつながりが意識された作りになっている。

今回の盤は2000年にSnapper Music傘下のOriginal Mastersレーベルから出た再発盤で、180gの重量盤、限定ナンバリング入り、ゲートフォールド仕様、さらに帯付きという丁寧なパッケージが特徴だ。オリジナルの1968年盤をそのまま置き換えるものではなく、当時のモノラル・アナログ・テープからリマスターされた再発として位置づけられる。盤の仕上げや見開きジャケットの作り込みからも、作品そのものの歴史的評価を意識した再発であることが伝わってくる。

アルバムの中身と、当時としての新しさ

『S.F. Sorrow』は、主人公セバスチャン・S・ソロウの人生を軸に進むコンセプト・アルバムだ。曲ごとに情景が切り替わるというより、登場人物の経験を追いながら場面が連なっていく構成で、1968年当時のポップ・アルバムとしてはかなり踏み込んだ内容だった。サイケデリックなギター、逆回転的な音の処理、シタール、コーラスの重ね方など、60年代後半の実験精神が濃く出ている。The BeatlesやThe Who、The Kinksなど同時代の英国ロックがアルバム表現を広げていた時期だが、その中でもPretty Thingsはかなり物語性に寄った方向へ進んでいる。

実際に聴くと、派手な技巧の連続というより、曲の切り替わりや音色の配置で物語を進めていくタイプの作品だとわかる。R&B時代の骨格が残る場面もある一方で、音の層はかなり複雑で、単にサイケデリック・ロックの装飾を足しただけではない。アルバム全体に、場面が静かに変わっていくような流れがあり、曲単体よりも通しての体験が重要な作りになっている。

バンドの転換点としての意味

Pretty Thingsにとって本作は、初期のブルース/R&B路線から、より構成的で実験的な表現へ向かった転換点といえる。オリジナル・ラインナップからメンバー変動を経ながら制作された時期でもあり、アルバムの音像には、バンドが新しい表現を探っていた空気がそのまま残っている。後年の再評価では、The Whoの『Tommy』以前に成立した重要なコンセプト作品として見られることが多い。

収録曲の中では、アルバムの流れを象徴するような「Balloon Burning」や、サイケデリックな色合いが強い場面が印象に残る。また、「I See You」は後に単独でも知られる曲で、アルバムの中でも比較的耳に残りやすい存在だ。こうした曲が、派手なヒット曲というより、作品全体の文脈の中で存在感を持っているのがこのアルバムらしいところだ。

制作背景と再発盤の位置づけ

制作面では、録音の途中でドラマーの交代があったことも知られている。そうした変化を抱えながら、アルバムは1968年11月に世に出たが、当時の商業的な反応は大きくはなかった。その一方で、のちの再発盤や再評価によって、英国サイケデリック・ロックの重要作として位置づけられるようになった。2000年のこの再発盤は、その評価を受け止める形の編集物であり、オリジナル盤の時代性を保ちながら、音質面と所有感の両方を意識した作りになっている。

また、レーベル表記やジャケットの構成からも、単なる廉価再発ではなく、資料的価値を持たせた扱いであることがわかる。モノラル・テープからのリマスターという点も、この作品の初期の聴かれ方を意識したものとして重要だ。60年代末の英国ロックが持っていた、シングル中心の感覚からアルバム単位の表現へ移る流れ、その中でもかなり早い段階で物語性を押し出した一枚として、今も参照され続けている。

まとめ

『S.F. Sorrow』は、Pretty Thingsのキャリアの中で、単なる名盤というだけでなく、バンドの方向転換そのものを示す作品だ。R&Bからサイケデリック、そしてコンセプト・アルバムへという流れが、1968年という時代の中でかなり明確に刻まれている。再発盤である2000年盤は、その歴史的な位置づけを改めて意識させる仕様で、オリジナルの作品性を現代のフォーマットに移し替えたものとして見られる。英国サイケの文脈を語るとき、The BeatlesやThe Whoと並べて触れられることが多いのも、このアルバムが持つ先行性ゆえだろう。

トラックリスト

  1. A1 S.F. Sorrow Is Born 3:15
  2. A2 Bracelets Of Fingers 3:39
  3. A3 She Says Good Morning 3:31
  4. A4 Private Sorrow 3:50
  5. A5 Balloon Burning 3:50
  6. A6 Death 3:12
  7. B1 Baron Saturday 4:02
  8. B2 The Journey 2:45
  9. B3 I See You 3:53
  10. B4 Well Of Destiny 1:47
  11. B5 Trust 2:47
  12. B6 Old Man Going 3:07
  13. B7 Loneliest Person 1:28

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