The Smile - A Light For Attracting Attention (2022)
The Smile『A Light For Attracting Attention』
The Smileは、Thom Yorke、Jonny Greenwood、Tom Skinnerの3人によるプロジェクトだ。Radioheadの中心人物を2人含みつつ、ドラマーにSons Of KemetのTom Skinnerを迎えた編成で、2022年にこの『A Light For Attracting Attention』を発表した。レーベルはXL Recordings。盤のほうも同年のリリースで、ワールドワイド流通の1作目として登場している。
この作品は、The Smileにとって最初のフルアルバムであり、バンドの輪郭を外から見せた最初のまとまった記録でもある。2021年5月のグラストンベリー特番「Live at Worthy Farm」でのサプライズ出演で存在が公になり、その後にアルバムへ結実した流れをたどると、デビュー作でありながら既に相応の完成度を備えていたことがわかる。
制作背景と参加ミュージシャン
制作はロックダウン期のロンドンで進み、2020年から2021年にかけてWack Formulaなどで録音された。プロデュースはNigel Godrich。Radiohead作品でもおなじみの人物で、音の整理の仕方や空間の作り方にもその手つきが反映されている。Yorkeは自宅から配信ソフトを使って歌を録り、子どもが学校から帰るまでの時間を使って作業したというエピソードも残っている。
演奏面ではLondon Contemporary Orchestraが弦を担当し、編曲はHugh Brunt。サックスにはJason YardeやRobert Stillmanが参加している。ロックの編成を土台にしつつ、弦と管を差し込む構成で、単なるバンドサウンドに収まらない作り込みが見える。全13曲は連番で通して配置され、曲間のつながりも意識されたアルバム構成だ。
サウンドの印象
実際に聴くと、まずリズムの組み方が目立つ。Tom Skinnerのドラミングは、ロックの4人組バンドが鳴らす直線的な押し出しとは少し違い、細かい跳ね方や間の取り方に特徴がある。そこへYorkeの声が乗ると、メロディは流れるのに足取りは落ち着かない、独特の緊張感が出る。Jonny Greenwoodのギターやベースの処理も、派手に前へ出るというより、曲の骨組みを少しずつずらしていくような役回りだ。
アルバム全体には、Alternative Rock、Indie Rockを軸にしつつ、電子的な処理や反復の感覚が入り込んでいる。ロックのバンド演奏を核に置きながら、電子音の粒や編曲のレイヤーで輪郭を変えていく作りで、2020年代の作品らしい更新がある。Radioheadの延長線上に置かれやすい一方で、The Smileとしての初作は、より小回りの利くアンサンブル感が前に出ている。
作品の位置づけ
このアルバムは、The Smileが単発の企画ではなく、継続するバンドとして動き出したことを示す1枚でもある。Thom YorkeとJonny Greenwoodの組み合わせはどうしてもRadioheadと比較されるが、そこにTom Skinnerが加わることで、ジャズや即興の感覚を含んだ別の推進力が入った。結果として、既存のファンが期待する要素と、新しい編成だからこそ出る要素が同居している。
同時代の文脈で見ると、ロックバンドの枠を使いながら、電子音、室内楽的な弦、変則的なリズムを組み合わせる流れの中にある。だが、この作品は実験一辺倒ではなく、曲としての輪郭がはっきりしている点が強い。シングル曲として知られる「You Will Never Work in Television Again」や「Pana-vision」、「The Smoke」などは、アルバムの中でも特にフックが明確で、バンドの入口として機能している。
リリースと評価
2022年5月13日にデジタル配信が始まり、フィジカルは6月17日発売。UKではデジタル先行時点で19位、フィジカル発売後に5位まで上昇し、インディーズチャートでは1位を記録した。米Billboard 200でも19位を記録している。批評面でも高評価を集め、Metacriticでは86点、Uncut誌の年間ベストアルバム1位にも選ばれた。
この盤はゲートフォールド仕様で、表面にはサテン調のコーティング、タイトル部分にはスポットグロスの加工が施されている。インナースリーブもソフトな光沢仕上げで、ディスクのラベルはやや小さめ。シュリンクには表側のハイプステッカーと裏面のバーコードステッカーが貼られている。音だけでなく、物としての作りにも丁寧さが見える仕様だ。
まとめ
『A Light For Attracting Attention』は、The Smileの出発点としてだけでなく、YorkeとGreenwoodの既存の仕事を別の角度から見せる作品でもある。Radioheadの延長線にありながら、Tom Skinnerのリズムが加わることで、曲の運びや重心が少しずつ変わっていく。その変化がアルバム全体の聴きどころになっている。2022年のロック作品として、かなり明確な輪郭を持った1枚だ。
トラックリスト
- A1 The Same
- A2 The Opposite
- A3 You Will Never Work In Television Again
- B4 Pana-Vision
- B5 The Smoke
- B6 Speech Bubbles
- C7 Thin Thing
- C8 Open The Floodgates
- C9 Free In The Knowledge
- D10 A Hairdryer
- D11 Waving A White Flag
- D12 We Don't Know What Tomorrow Brings
- D13 Skrting On The Surface