Various - Philadelphia Sound Best Hits (1975)
Various『Philadelphia Sound Best Hits』(1975)
1970年代半ばのフィラデルフィア・サウンドを、日本向けにまとめたコンピレーション盤。アーティスト表記はVariousで、特定の一組ではなく、Philadelphia International Records周辺の音源を軸にした編集作。オリジナルのリリース年は1975年、盤のリリース年も1975年で、日本盤として出た当時の空気をそのまま閉じ込めた一枚である。レーベルはPhiladelphia International Records、型番はFCPA-267-PH。
フィリー・サウンドを束ねた企画盤
この時期のPhiladelphia International Recordsは、The O'Jays、MFSB、Three Degrees、Harold Melvin & The Blue Notes、Billy Paulといった名前で知られる、いわゆる“フィリー・サウンド”の中心レーベルだった。本作もその流れの中に置かれた編集盤で、同レーベルが持つ洗練されたソウル、ストリングスを含んだ厚いアレンジ、リズムの推進力を一枚で追える構成になっている。
1974年の段階で、CBS/SonyがEpic周年キャンペーンの一環として「Philadelphia sound campaign」を打ち出していたことが確認できる。つまり本作は、当時の日本市場でもフィリー・サウンドを前面に押し出すための企画として扱われていた。単独アーティストの新作というより、レーベルの看板曲をまとめて提示する編集盤の性格が強い。
収録曲の顔ぶれが示す時代性
フィリー・サウンドの代表的な曲は、この時期すでにヒットの実績を積み上げていた。たとえばMFSBの「TSOP (The Sound of Philadelphia)」は、テレビ番組「Soul Train」のテーマ曲としても知られ、Three Degreesの「When Will I See You Again」も国際的に大きな人気を得た。こうした楽曲群が並ぶ編集盤は、当時のソウルを知る入口として機能していたはずだ。
このシリーズの魅力は、1曲ごとのヒットを追う楽しさだけでなく、同じレーベル、同じ制作陣の感触が続くところにある。ギター、ベース、ドラムの刻みが整っていて、そこにストリングスやホーンが重なる。曲ごとの差はあるが、全体の流れには共通の設計が見える。ラジオ向けのシングルとしても、アルバム単位でも成立する作りで、1970年代ソウルの中でも整理された印象を残す。
日本盤としての意味
日本盤は、アメリカ本国のレーベル企画をそのまま持ち込む形で流通したものが多いが、本作もそのひとつ。Philadelphia International Recordsのブランドを、日本のリスナーにまとまった形で示す役割を担っていた。特に1975年という時点では、ディスコの大流行直前で、ソウルの聴き方がアルバム中心へ広がっていく途中にあたる。そうした時期に、レーベル横断ではなくレーベル内の強い音源を集めた編集盤が出るのは自然な流れだった。
盤の見た目や日本盤特有の帯・解説の存在も、この種の編集盤では重要な要素になる。輸入盤よりも手に取りやすく、当時の日本のリスナーがフィリー・サウンドを追う際の導線になっていたはずだ。オリジナルの楽曲群を別の文脈で再配置することで、レーベルの個性を見せる作りである。
フィリー・サウンドの位置づけ
この作品が置かれているのは、ソウルからディスコへと景色が移る手前の時代。Motownのような明快なポップ性とも、サザン・ソウルの泥臭さとも違う、都会的で整った質感が前に出る。そこには、のちのディスコやAORにも通じる精密さがある一方で、ゴスペル由来の熱も残っている。
編集盤として見ると、ひとつのアーティスト像を追う作品ではないが、Philadelphia International Recordsが当時どんな音を市場に提示していたかを知るには分かりやすい一枚。1975年のソウルを、レーベルの看板ごと切り取った記録として残る作品である。
トラックリスト
- A1 The Three Degrees Dirty Ol' Man
- A2 Billy Paul Me & Mrs. Jones
- A3 MFSB T.L.C. (Tender Lovin' Care)
- A4 The O'Jays Love Train
- A5 Harold Melvin And The Blue Notes Bad Luck
- A6 MFSB And The Three Degrees Love Is The Message
- B1 The Three Degrees TSOP
- B2 The Intruders Rainy Days And Mondays
- B3 Harold Melvin And The Blue Notes If You Don't Know Me By Know
- B4 MFSB Touch Me In The Morning
- B5 The Three Degrees When Will I See You Again
- B6 The O'Jays Back Stabbers