The Wild Magnolias With The New Orleans Project - The Wild Magnolias (1974)
The Wild Magnolias With The New Orleans Project『The Wild Magnolias』
ニューオーリンズの黒人コミュニティにおいて、1世紀以上にわたり手作りの絢爛豪華な羽飾りスーツをまとい、歌と太鼓の祝祭を行進してきた秘密結社「マルディグラ・インディアン」。その歴史ある名門部族のリーダー、Big Chief Bo Dollis(ボー・ドリス)率いるワイルド・マグノリアスが、ゴールデン・イーグルスの盟友Monk Boudreaux(モンク・ブードロー)らとともに完成させた奇跡のデビュー・アルバムが、本作『The Wild Magnolias』(1974年 Polydor)である。ストリートの秘密のチャントが屈強なファンク・ビートと激突した本作は、ニューオーリンズ音楽史のみならず、ファンク/レアグルーヴ史における不朽のモニュメントとして君臨している。
制作背景・エピソード
古くからカーニバルの日だけに街頭で歌い継がれ、外部の人間には滅多に録音されることのなかったマルディグラ・インディアンの伝統音楽。その禁を解く契機となったのが、フランス人音楽プロデューサーのフィリップ・ロー(Philippe Rault)の情熱であった。1970年に地元の名プロデューサー、クインティン・デイヴィスとともに吹き込んだ歴史的シングル「Handa Wanda」の成功を受け、ローは本格的なフル・アルバムの制作を企画する。
録音はルイジアナ州ボガルサの名門合宿スタジオ「Studio in the Country」で行われた。バッキングを務めたのは、ニューオーリンズ・ソウル/R&Bの偉才Willie Tee(ウィリー・ティーことウィルソン・タービントン)が率いるスペシャル・バンド「The New Orleans Project」。天才盲目ギタリストのSnooks Eaglin(スヌークス・イーグリン)、ジャズ界でも名を馳せたサックス奏者Earl Turbinton Jr.(アール・タービントン)、ベーシストのJulius Farmer、パーカッションのAlfred "Uganda" Robertsらが集結し、伝統のチャントを包み込む鉄壁のグルーヴを練り上げた。
時代の文脈
1970年代初頭のニューオーリンズでは、The Meters(ミーターズ)やアラン・トゥーサンが牽引するシンコペーションの効いたセカンドライン・ファンクが全米で評価を高めていた。しかし、本作が提示したサウンドはさらに根源的で野生的であった。奴隷制時代からアフリカのルーツとネイティブ・アメリカンへの連帯を宿してきたインディアン・トライブの呪術的なコール&レスポンスとポリリズムが、同時代のアフロ・ファンクやサイケデリック・ロックの熱気と結合し、比類なき「バイユー・ファンク」の極致を生み出したのである。
サウンドと聴きどころ
全編を通じて鳴り響くタンバリン、カウベル、コンガの生々しいポリリズムと、ウィリー・ティーによるファンキーなクラヴィネット、そしてスヌークス・イーグリンの切れ味鋭いファズ&ワウ・ギターの応酬は圧巻というほかない。
冒頭を飾る「Handa Wanda」は、ボー・ドリスのしゃがれた野太いシャウトと部族の熱狂的なレスポンスが炸裂するアンセム。続く「Smoke My Peace Pipe (Smoke It Right)」では、ワウ・ペダルとトーク・ボックスを駆使したギターにファンキーなホーンが絡みつく極上のグルーヴを展開する。「Two Way Pak E Way」のトランス的なパーカッションのうねり、哀愁漂うメロディと緊迫のブレイクビーツが疾走する「Corey Died On The Battlefield」、フロアを狂乱に導く「(Somebody Got) Soul, Soul, Soul」、そして伝統の黒人霊歌「聖者の行進」を怒涛の重量級ファンクへと解体・再構築した「Saint」まで、息つく暇もない圧倒的なテンションで駆け抜ける。
後世への影響と評価
リリース当初から熱狂的な支持を集めた本作は、1990年代以降のレアグルーヴ/ディープ・ファンク再評価運動において「ニューオーリンズ・ファンクの最高峰」として絶対的なステータスを確立した。
特に「Corey Died On The Battlefield」はヒップホップ黎明期のバイブル的コンピレーション『Ultimate Breaks & Beats』第13集に収録され、Schoolly D、Jungle Brothers、3rd Bassらにサンプリングされた。また、「Smoke My Peace Pipe」はGeto Boysらサザン・ヒップホップ勢に、「Handa Wanda」や「Soul, Soul, Soul」はColdcutらブレイクビーツ/ダンス・ミュージック界のパイオニアたちに愛用され続けている。街頭の祝祭とモダン・ファンクが奇跡的な調和を遂げた本作は、時を経てもなお生々しい生命力を放ち続けるストリート・ミュージックの結晶である。
トラックリスト
- A1 Handa Wanda 4:42
- A2 Smoke My Peace Pipe (Smoke It Right) 6:31
- A3 Two Way Pak E Way 7:51
- B1 Corey Died On The Battlefield 4:49
- B2 (Somebody Got) Soul, Soul, Soul 6:12
- B3 Saint 8:48