Gil Scott-Heron - Free Will (1972)
Gil Scott-Heron 1972

Gil Scott-Heron - Free Will (1972)

Funk / Soul Funk Soul

Gil Scott-Heron『Free Will』――詩とソウルがぶつかる1972年作

ギル・スコット・ヘロンが1972年にFlying Dutchmanから発表した『Free Will』は、歌と語りの境目を行き来する彼の作風を、よりはっきりした形で示した作品だ。前年の『Pieces of a Man』で広く知られるようになった流れを受けつつ、本作ではA面にソウル寄りの楽曲、B面にポエトリー・リーディングを置く構成が取られている。アルバム全体としては、当時のブラック・ミュージックの文脈と、政治的な発言を含む表現が強く結びついた1枚。

A面とB面で性格を分けた構成

録音は1972年3月2日と3日、ニューヨークのRCAスタジオで行われた。A面はブライアン・ジャクソンのピアノやフルートを軸に、ジェリー・ジェモット、バーナード・パーディ、デヴィッド・スピノザ、ヒューバート・ロウズらが参加。ホレス・オットのアレンジと指揮も加わり、ソウル、ファンク、ジャズ、ブルースが自然に混ざる。表題曲「Free Will」や「The Get Out Of The Ghetto Blues」では、ギル・スコット・ヘロンの語り口をそのまま音楽にしたような進行が印象に残る。

B面は「Poet Tree」と題された朗読パート。ここでは楽器の役割が前面に出るというより、詩の言葉を支えるための伴奏が置かれる。「No Knock」は、予告なしの踏み込み捜査を批判する内容で、当時の社会状況がそのまま反映されている。「The King Alfred Plan」はジョン・A・ウィリアムズの小説に登場する架空の政府計画を題材にしたもので、政治的な緊張感が強い。「...And Then He Wrote Meditations」はジョン・コルトレーンへのオマージュとして読まれている。

作品の位置づけ

『Free Will』は、朗読中心の『Small Talk at 125th and Lenox』、続く『Pieces of a Man』の流れにある作品で、スタジオ・アルバムとしては2作目にあたる。Flying Dutchmanでの最後のスタジオ・アルバムでもあり、その後の活動はStrata-EastやAristaへ移っていく。レーベル主宰のボブ・シールがプロデュースを務めている点も、この時期の作品らしいところだ。

ギル・スコット・ヘロンは、歌手、スポークンワード・アーティスト、作家として知られ、後のヒップホップやネオ・ソウルに接続する表現の先駆けとしても語られる。本作でも、メロディを前に出す場面と、言葉を前に出す場面が明確に分けられていて、その後のブラック・ミュージックに見られる「語り」と「ビート」の接点を早い段階で示している。

音像と聴きどころ

実際に耳を通すと、A面はバンドの演奏がしっかり輪郭を持っていて、曲ごとにリズムの置き方が変わる。バーナード・パーディのドラムは過不足がなく、ジェリー・ジェモットのベースは低音で場面を支える。ギル・スコット・ヘロンの声は、歌っていても語っていても一本調子にならず、言葉の頭に軽くアクセントを置くだけで曲の流れを変える。B面ではその語りがより前に出て、伴奏があることで言葉の温度が一定に保たれる感触がある。

この作品で特に目立つのは、ソウル・アルバムとして聴けるA面と、時代の記録として残るB面が同居している点だ。片方だけでは成立しないバランスで、音楽作品であると同時に、当時の政治的な空気を含んだ発言の記録にもなっている。DownBeatで高く評価されたという事実も、この作品が単なる時事的な朗読集ではなく、演奏と構成の両面で見られていたことを示している。

再発盤について

2001年にはBluebirdからCD再発が出ており、別テイクなど8曲が追加された版も存在する。オリジナルのLPはA面・B面の区切りがはっきりした作りだが、再発盤ではその時代の録音をまとめて確認できる形になっている。1972年当時のFlying Dutchman盤は、録音日や面構成まで含めて作品の輪郭が見えやすい1枚だ。

『Free Will』は、ギル・スコット・ヘロンの初期代表作群の中でも、歌と詩、演奏と発言がもっとも分かりやすく並置されたアルバムとして残る。ソウル・ミュージックの形式に、当時の社会への視線をそのまま差し込んだ作品。

トラックリスト

  1. A1 Free Will 3:30
  2. A2 The Middle Of Your Day 4:30
  3. A3 The Get Out Of The Ghetto Blues 5:04
  4. A4 Speed Kills 3:15
  5. A5 Did You Hear What They Said? 3:28
  6. Poet Tree
  7. B1 The King Alfred Plan 2:45
  8. B2 No Knock 2:12
  9. B3 Wiggy 1:38
  10. B4 Ain't No New Thing 4:29
  11. B5 Billy Green Is Dead 1:30
  12. B6 Sex Education: Ghetto Style 0:50
  13. B7 ... And Then He Wrote Meditations 3:14

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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