Toe Fat - Toe Fat (1970)
Toe Fat『Toe Fat』(1970)レビュー
Toe Fatのデビュー作『Toe Fat』は、1970年にUSのRare Earthレーベルから出た1枚で、英国のハードロック/ブルースロックの流れの中に置くと輪郭がつかみやすい作品だ。バンドは元Cliff Bennett and the Rebel Rousersのクリフ・ベネットを中心にまとまり、ケン・ヘンズレーとリー・カースレイクを含む編成で始動している。後にヘンズレーとカースレイクがUriah Heepへ移ることを考えると、このアルバムはその前段階にある記録としても見えてくる。
US盤のレーベルはRare Earth、品番はRS511。Rare Earthはモータウン傘下で、もともとR&B中心だった枠にロック・バンドを積極的に迎え入れたレーベルとして知られる。このToe Fatの1枚も、その文脈にすっと入る。なお、カバーとラベルでカタログ番号の表記が異なる仕様で、印刷は「Printed in the U.S.A.」となっている。
バンドの出自と作品の立ち位置
Toe Fatは1969年6月から1971年まで活動した短命な英国バンドで、メンバーの顔ぶれがまず目を引く。クリフ・ベネットはソウル寄りの歌い方を持つシンガーで、そこにケン・ヘンズレーのオルガンやギター、リー・カースレイクのドラムが加わる。さらにジョン・グラスコック、ブライアン・グラスコック、アラン・ケンドルといった名前もクレジットされており、当時の英国ロック周辺の人脈が濃く反映された編成になっている。
この作品は、巨大な成功作というより、のちの大きな流れに接続する途中の盤として見たほうが自然だ。特にヘンズレーとカースレイクが後にUriah Heepへ進むため、Toe Fatは“売れ線の完成形”というより、演奏力と曲作りの方向性を探っていた時期の記録として残る。バンドの名前自体はかなり変わっているが、音の中身はむしろ真面目で、重さと推進力を前に出した構成が多い。
音の印象
アルバム全体を通して感じるのは、演奏の厚みと、歌の黒さが同居している点だ。クリフ・ベネットの声は、いわゆる英国ハードロックの直線的な唱法よりも、R&Bやソウルの匂いが強い。そのため、バンドのリフやオルガンが前に出る場面でも、ただ重いだけにはならず、曲ごとに少し湿度のある空気が残る。実際に聴くと、ギターの歪みやドラムの押しの強さだけでなく、歌が曲の重心を別の場所に置いているのがわかる。
同時代の英国バンドで比べるなら、Creamのようなトリオ的な圧や、Bloodrockのような重心の低いハードさとは少し違う。Toe Fatは、ブルースロックの骨格にソウル寄りのボーカルを載せ、その上にキーボードを重ねる場面が多い。そこが単純なハードロック盤と少し異なるところだ。
収録曲と「Bad Side of the Moon」
このアルバムで特に知られるのが「Bad Side of the Moon」だ。エルトン・ジョン/バーニー・トーピンの曲を取り上げたカバーで、Toe Fatの方向性を端的に示している。原曲の持つメロディを保ちながら、演奏はより重く、ギターとオルガンの押し出しが強い。カバー曲でありながら、単なる埋め合わせではなく、バンドの輪郭を見せる役割を持っている。
当時のプロモーションでは、Derek & the Dominosの前座を務めたことも知られている。そうした現場では、スタジオ盤よりもさらに生々しい演奏が前に出ていたはずで、クリームやジミ・ヘンドリックス系統に近い重厚さを帯びたバンドとして受け止められていたようだ。Billboardの当時の紹介でも、勢いのある若い英国バンドとして扱われている。
商業面とその後の見え方
商業的な実績は大きくない。英米の主要チャートで目立つ成績を残した記録は見当たらず、続くシングル「Bad Side of the Moon」も広くヒットした作品ではない。つまり、1970年当時の時点では埋もれた1枚だった。
ただ、後年の見え方は少し違う。Toe Fatは成功作を連発したバンドではないが、メンバーのその後を追うと、ここが一つの通過点だったことがはっきりする。Uriah Heepへつながるケン・ヘンズレーとリー・カースレイク、そして英国ロックの現場で培われたクリフ・ベネットの歌唱。その組み合わせが、1970年の英国ヘヴィロックの一断面として残っている。
まとめ
『Toe Fat』は、派手な代表曲で押すアルバムではない。けれど、演奏の重さ、歌の質感、当時の英国ロックの人脈が一枚にまとまった作品としては、かなり特徴がはっきりしている。Rare Earthから出たUS盤という点も含めて、英国バンドが米国市場に向けてどう見られていたかが伝わる資料でもある。短命なバンドの初作でありながら、後の大きな流れに接続する入り口として、今あらためて見返す価値のあるレコードだ。
トラックリスト
- A1 That's My Love For You 4:01
- A2 Bad Side Of The Moon 3:24
- A3 Nobody 6:04
- A4 The Wherefors And The Whys 3:43
- A5 But I'm Wrong 4:01
- B1 Just Like Me 4:12
- B2 Just Like All The Rest 2:31
- B3 I Can't Believe 3:59
- B4 Working Nights 2:31
- B5 You Tried To Take It All 4:26