Tom Waits - Small Change (1976)
Tom Waits『Small Change』
Tom Waitsの『Small Change』は、1976年にAsylum Recordsから出た作品で、同年のオリジナル盤として位置づけられるアルバムだ。1973年の『Closing Time』、1974年の『The Heart of Saturday Night』に続く流れの中で、Waitsの歌とピアノを軸にした作風がさらに前面に出た1枚として知られている。
制作背景・エピソード
本作は、プロデューサーのBones Howeのもと、ハリウッドのWally Heider Studiosで録音された。セッションは1976年7月15日、19日、20日、21日、29日の数日にわたり、2トラックのステレオテープへ直接録音されたと記されている。演奏をその場で捉える形の制作で、作品情報にもその方法が明記されている。参加ミュージシャンにはShelly Manneのドラム、Jim Hughartのベースが挙がり、Shelly ManneはFlying Dutchman Productions所属としてクレジットされている。
収録曲の中でも「Tom Traubert’s Blues」は重要な曲として扱われてきた。Waitsは2006年のNPR「World Cafe」で、この曲題の人物は「友人の友人」で、刑務所で亡くなった人物だと語っている。アルバム制作時のWaitsは飲酒が増え、ツアー生活の消耗も重なっていたとされ、その状況が作品の内容と重なる形で語られている。なお、印刷されたインナー・スリーブには歌詞が載っているが、「Step Right Up」の歌詞は掲載されていない。買い手に向けた郵送先の記載も入っている。
時代の文脈
『Small Change』は、70年代前半に作られたWaitsの“夜の街”を描くイメージを、さらに強めたアルバムとして見られている。ジャズ寄りの編成と、酒場や路地裏、失意の人物を描く歌詞で、同時代のシンガーソングライター作品の中でもかなり個性の強い存在だった。AllMusicは本作を70年代Waits作品の原型として扱い、夜の街を歩くような作品性を強調している。
キャリアの中では、『Closing Time』と『The Heart of Saturday Night』の延長線上にありながら、作家としての手応えがさらに固まった時期の作品として位置づけられる。批評史では、後年のより荒いブルージーな方向へ進む前段階として語られることも多い。Billboardの当時評では「Invitation to the Blues」「I Wish I Was in New Orleans」「The One That Got Away」が推し曲として挙げられていた。
後世への影響
この作品で特に長く残っているのが「Tom Traubert’s Blues」。Waits自身が後年までライヴで頻繁に歌い続けた曲で、アルバムの中でも代表的な存在として扱われている。『Small Change』全体も、Waitsのシアトリカルな語り口とダウンタウン的な表現を示す作品として再評価され、後続のオルタナティブ系シンガーソングライターにとって参照点のひとつになったとされる。語りの強い歌、崩れた美学、ジャズとフォーク/ブルースの接合という点が、のちの作品群や影響関係の中で繰り返し語られている。
商業面では、Waitsにとって初めてBillboard 200入りしたアルバムで、最高89位を記録している。英国ではOfficial Chartsで18位まで上昇した。批評面とチャート面がそろって動いた作品として、1976年のTom Waitsを代表する1枚になっている。
トラックリスト
- A1 Tom Traubert's Blues 6:40
- A2 Step Right Up 5:39
- A3 Jitterbug Boy 3:41
- A4 I Wish I Was In New Orleans 4:50
- A5 The Piano Has Been Drinking (Not Me) 3:37
- B1 Invitation To The Blues 5:20
- B2 Pasties And A G-String 2:32
- B3 Bad Liver And A Broken Heart 4:46
- B4 The One That Got Away 4:00
- B5 Small Change 5:03
- B6 I Can't Wait To Get Off Work 3:20
動画プレイリスト
このアーティストについて
Tom Waitsは1949年12月7日、カリフォルニア州ポモナ生まれのアーティストだ。1973年にアルバム『Closing Time』でデビューしている。ジャンルはロック...
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