The Electric Flag - A Long Time Comin' (1968)
The Electric Flag 1968

The Electric Flag - A Long Time Comin' (1968)

Rock Jazz Blues Funk / Soul Psychedelic Rock Blues Rock Jazz-Rock Rhythm & Blues

The Electric Flag『A Long Time Comin’』について

The Electric Flag(エレクトリック・フラッグ)のデビュー作『A Long Time Comin’』は、1968年3月にColumbia Recordsから発表された歴史的アルバムである。The Paul Butterfield Blues Bandで白人ブルース・ギターの頂点に立ったMike Bloomfield(マイク・ブルームフィールド)が、若き天才黒人ドラマー/シンガーのBuddy Miles(バディ・マイルス)らとともに結成。「An American Music Band(アメリカン・ミュージック・バンド)」をスローガンに掲げ、ブルース、ソウル、ジャズ、サイケデリック・ロック、そしてブラス・セクションを一体化させた、アメリカン・ルーツ・ミュージック融合の先駆的名盤である。

制作背景とモントレーから生まれた熱気

バンドは1967年6月、歴史的な「モントレー・ポップ・フェスティバル」においてジミ・ヘンドリックスやザ・フーらに先駆けてライヴ・デビューを飾り、その圧倒的な演奏力と新世代のブラス・ロック・サウンドで観客と評論家を驚嘆させた。その後プロデューサーのジョン・コート(John Court)とともに半年以上を費やしてスタジオ録音が進められた。

冒頭を飾るHowlin' Wolfの名曲カヴァー「Killing Floor」では、リンドン・ジョンソン大統領の演説音声を冒頭にコラージュし、激化するベトナム戦争への強烈な皮肉を込めた。またブルームフィールドが書き下ろしたディープ・ソウル・バラード「You Don't Realize」には、1967年12月に飛行機事故により26歳の若さで命を落としたソウルの巨人オーティス・レディングと、スタックスの盟友スティーヴ・クロッパーへ捧げる「Dedicated with great respect to Steve Cropper and Otis Redding」という痛切な献辞が記されている。

時代の文脈と混沌のアメリカを描いた前衛性

1967年の「サマー・オブ・ラブ」の陶酔から一転し、ベトナム反戦運動の激化、相次ぐ政治的暗殺、公民権運動の衝突など、アメリカ社会が最も深い混迷へと突入した1968年。黒人と白人のミュージシャンが対等に集い、ルーツ音楽の豊かさを提示したエレクトリック・フラッグの存在自体が、時代の希望と葛藤を映し出す鏡であった。

8分半を超える大作「Another Country」では、火を噴くようなブルース・ギターとブラスに加え、電子音やサイレン、騒音のテープ・コラージュが交錯し、当時のアメリカが抱える社会不安とサイケデリックな混沌を前衛的な音響美学で見事に描き出している。アルバムは全米ビルボード200チャートで最高31位を記録した。

音楽的到達点と後世への影響

ロック・バンドの編成内に常設の本格的なホーン・セクションを配置し、ブルースやR&Bのグルーヴをロックのダイナミズムと直結させるという本作の革新的なコンセプトは、直後に登場するBlood, Sweat & TearsやChicago、さらにはTower of Powerといった70年代ブラス・ロック/ファンク・バンドの隆盛を決定づける直接の引き金となった。

レスポールを歌わせるブルームフィールドの情熱的でヴィブラート豊かなギター・トーンと、後にジミ・ヘンドリックスのBand of Gypsysへと合流するバディ・マイルスの重爆撃ドラミング&ソウルフルな咆哮、そしてニック・グラヴェナイツの泥臭いヴォーカルが織りなす熱気は、アメリカン・ロックが最も熱く豊かだった時代の到達点として今なお光を放ち続けている。

トラックリスト

  1. A1 Killing Floor 4:11
  2. A2 Groovin' Is Easy 3:05
  3. A3 Over-Lovin' You 2:10
  4. A4 She Should Have Just 5:04
  5. A5 Wine 3:15
  6. B1 Texas 4:48
  7. B2 Sittin' In Circles 3:53
  8. B3 You Don't Realize 4:58
  9. B4 Another Country 8:46
  10. B5 Easy Rider 0:50

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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