bdrmm - Bedroom (2020)
bdrmm『Bedroom』レビュー
英国ハル出身のバンド、bdrmmが2020年に発表したデビュー・アルバムが『Bedroom』である。バンド名は母音を抜いた“bedroom”の表記で、読みはそのまま「ベッドルーム」。もともとはRyan Smithの宅録プロジェクトとして始まり、のちにJordan Smith、Joe Vickers、Danny Hull、Conor Murrayを加えた5人編成へ発展した。シューゲイズ専門レーベルとして知られるSonic Cathedralからのリリースで、90年代初頭のシューゲイズ/ドリームポップの流れを現在に接続する作品として位置づけられている。
バンドの出発点と、デビュー作としての重み
bdrmmは2016年に活動を始め、地元ハルで少しずつ形を整えていった。長年の盟友Alex Greavesがプロデュースを担ったシングルやデモを経て、2019年にSonic Cathedralと契約。シューゲイズを軸にしたレーベルからの初フルレングスという点でも、『Bedroom』はバンドの輪郭をはっきり示す一枚になっている。タイトルの通り、出発点にあるのは私的な空間の感覚で、宅録から始まったバンドの履歴とも自然につながる。
実際に聴くと、ギターの層を厚く重ねながらも、音の輪郭は思ったより見えやすい。轟音だけに寄せず、リズム隊の推進力やシンセの配置で曲ごとの温度差を作っている。Ride、Pale Saints、Slowdiveといった初期シューゲイズの系譜が見える一方で、ポストパンクやクラウトロック由来の反復感も入り、単なる懐古にとどまらないまとまりがある。
収録曲の中心にある「Happy」
このアルバムでまず名前が挙がるのが「Happy」だ。DIIVを思わせる前進するギターを軸にした曲で、アルバムの中では比較的明るく開けた印象を持つ。メロディの運びが分かりやすく、アルバム全体の重さを少し持ち上げる役割もある。bdrmmの代表曲として触れられることが多いのも納得の出来で、デビュー作の入口としても機能している。
ほかの曲では、音の壁の中に細かな展開を仕込む作りが印象に残る。ギターが常に前面にあるわけではなく、シンセやベースの動きが曲の重心を変えていく。ヘッドホンで聴くと、音数の多さのわりに配置が整理されていることが分かる。ドリームポップ寄りの流れと、より硬質なシューゲイズの質感が、曲単位で行き来する構成。
歌詞にある若さの混乱
歌詞面では、望まない妊娠、アルコールや薬物依存、その後に残る精神的な揺らぎといったテーマが扱われている。題材だけを見ると重いが、音の作りはそれをただ暗く閉じ込める方向ではない。むしろ、感情の逃げ場のなさを、反復するリフや広がる残響で包み込むような設計になっている。私的な混乱を、そのまま個人の部屋の中に置いたような感触がある。
2020年のシューゲイズ文脈の中で
『Bedroom』は、2020年前後の英国インディーにおけるシューゲイズ再活性の流れを象徴する作品として受け止められた。NMEが高く評価したこともあり、批評面でも早い段階で存在感を示している。Metacriticでも好意的な評価を集め、デビュー作としてはかなり強い反応を得た部類に入る。SlowdiveやRideの再評価が定着した後の世代が、その影響を受け止めつつ更新する流れの中で、bdrmmは分かりやすい位置にいる。
Sonic Cathedralというレーベルの文脈も重要だ。クラブナイト由来で、シューゲイズとその周辺を長く扱ってきたレーベルから出たことで、作品は単なる新人紹介にとどまらず、ジャンルの現在形を示す役割も持った。盤としては2020年のオリジナル盤で、少数ながらRecordstore経由のサイン入りジャケットも流通したという記録がある。
まとめ
『Bedroom』は、bdrmmがハルの宅録的な出発点から、バンドとしての輪郭を固めるまでの過程を、そのままアルバムに落とし込んだような作品である。シューゲイズの厚い壁を土台にしながら、メロディの通りやすさ、反復の強さ、歌詞の切実さを組み合わせた内容で、デビュー作らしい初期衝動と完成度の両方が見える。代表曲「Happy」を含め、90年代シューゲイズの記憶を引き継ぎつつ、2020年の空気で鳴らした一枚として記憶される作品。
トラックリスト
- A1 Momo
- A2 Push/Pull
- A3 A Reason To Celebrate
- A4 Gush
- A5 Happy
- A6 (The Silence)
- B1 (Un)Happy
- B2 If....
- B3 Is That What You Wanted To Hear?
- B4 Forget The Credits