Camel - Camel (1973)
Camel『Camel』――1973年デビュー作を1982年日本盤で聴く
Camelのセルフタイトル作『Camel』は、1973年2月に発表されたデビュー・スタジオ・アルバムだ。英プログレッシブ・ロックの初期を代表するバンドの出発点であり、のちに『The Snow Goose』や『Moonmadness』で広く知られることになる前の、まだ輪郭を探っている段階の記録でもある。今回の盤は1982年に日本でリリースされたMCA Records盤で、オリジナル・アルバムを後年に日本向けへ再提示したものになる。製造は日本。
デビュー作としての位置づけ
Camelの初期編成は、アンドリュー・ラティマー、ピート・バーデンズ、ダグ・ファーガソン、アンディ・ウォードの4人。このオリジナル・ラインナップが録音した最初の4作のひとつが本作で、バンドの基本形がここで固まり始めている。後年のCamelは、メロディの流れや組曲的な構成、キーボードとギターの対話で知られるが、本作ではその要素がまだ整理の途中にある。オルガン主体の色合いが前面に出ていて、曲ごとの性格も比較的はっきりしている。
制作は1972年8月、ロンドンのMorgan Studioで行われ、Dave Williamsがプロデュースを担当した。楽曲はラティマーとバーデンズの個別の持ち味が見える構成で、のちの大作志向というより、初期レパートリーを集めた印象が強い。実際、聴いていても一曲ごとの切り替わりが明確で、完成されたコンセプト作品というより、バンドが自分たちの音の置き場所を探している途中の空気が残っている。
収録曲と聴きどころ
代表曲としてまず挙がるのは「Never Let Go」だろう。後にシングル化された曲で、Camelの初期を語るときに外せない一曲になっている。ギターとキーボードのやり取りが曲の骨格を作り、演奏の推進力もはっきりしている。アルバム全体では、ジャズ寄りの展開を見せる曲、ロック色がやや控えめな曲、前に出るフレーズを持つ曲が混在していて、統一感よりもバンドの試行錯誤が耳に残る。
2002年の再発盤では、「Never Let Go」のシングル・ヴァージョンと、「Homage to the God of Light」のライヴ版が追加された。今回の1982年日本盤はそこまでの追加要素を含まないオリジナル寄りの内容で、1973年時点のアルバムをそのまま追えるのが特徴だ。曲順の流れや音のまとまりを確認するには、こうした初期盤の感触が重要になる。
同時代のプログレとの関係
1973年の英国プログレといえば、Yes、Genesis、King Crimson、Jethro Tullといった名前がすぐに浮かぶが、Camelはその中でも過度に劇的な展開へ寄らず、比較的端正な演奏と曲作りで存在感を作っていくタイプだ。本作の時点ではまだ大きな個性が前面に出切っているわけではないが、のちの叙情性や流麗な展開の基礎はすでに見える。後年、ジャズ・ロック寄りの要素を強めていく流れを思うと、このデビュー作はその入口として機能している。
商業的には大きなヒット作ではなく、英国チャートで強い反応を得たアルバムでもない。その意味では、Camelが広く評価を集めるのは次作以降、とくに1975年の『The Snow Goose』以降になる。本作は、その前段階の記録として見るのが自然だ。
1982年日本盤としての面白さ
1982年の日本盤は、オリジナル1973年盤からかなり時間が経ってからのリリースだ。MCA Recordsの国内盤として製造されており、当時の日本市場でCamelの初期作が改めて流通していたことがわかる。日本盤は、オリジナル発表時の空気をそのまま閉じ込めた盤というより、後年のリスナーが初期Camelに触れる窓口としての役割が強い。ジャケットや帯、国内流通のクレジットも含めて、1970年代前半の英バンドの作品が1980年代日本でどう受け止められていたかを示す一枚でもある。
総括
『Camel』は、完成度の高さで押すアルバムではない。むしろ、バンドがまだ自分たちの輪郭を作っている途中の記録として面白い。ピート・バーデンズのオルガンの存在感、ラティマーのギターの慎重な入り方、曲ごとに表情を変える構成、そのあたりがこの時点のCamelをよく示している。後年の代表作と並べると、まだ荒さも残るが、そのぶん初期バンドの手触りがはっきり残る。デビュー作らしい不安定さと、のちの伸びしろが同居した一枚だ。
トラックリスト
- A1 Slow Yourself Down
- A2 Mystic Queen
- A3 Six Ate
- A4 Separation
- B1 Never Let Go
- B2 Curiosity
- B3 Arubaluba