Osibisa - Wɔyaya (1971)
Osibisa『Wɔyaya』(1971)レビュー
Osibisaの『Wɔyaya』は、1971年にUKのMCA Recordsから出たセカンド・アルバム。ガーナ出身のTeddy Osei、Mac Tontoh、Sol Amarfioらを中心に、1969年ロンドンで結成されたバンドの初期像をはっきり示す一枚である。西アフリカのリズム感を土台に、ロック、ファンク、ジャズの要素を重ねる作りは前作から続いているが、この作品では音の密度を保ちながら、少し落ち着いた進行とジャジーな余白が目立つ。派手な高揚だけで押し切るのではなく、演奏の組み立てで聴かせる内容になっている。
タイトルの意味と作品の核
タイトルの「Wɔyaya」はガーナのガ語で「We are going」の意味を持つ。フロント・スリーブでは「Wɔyaya」、レーベル面では「Woyaya」と表記されており、作品名そのものがガ語の響きを前面に出したものになっている。バンドの出自を考えると、これは単なる異国趣味ではなく、彼らの背景をそのまま作品の中心に置いた表明でもある。
表題曲「Wɔyaya」は、このアルバムの要点をそのまま示す代表曲。粘り強さや前進の感覚を持った楽曲で、後年にはArt GarfunkelやThe 5th Dimensionにも取り上げられた。さらにガーナではテレビドラマ『Osofo Dadzie』のテーマ曲として長く親しまれたという経緯もあり、作品単体の枠を越えて広く流通した曲でもある。
サウンドの印象
このアルバムでまず目につくのは、ギターのWendell RichardsonとサックスのTeddy Oseiの役割分担である。前へ出る部分と、リズム隊のうねりの中に溶ける部分がきれいに切り替わり、曲ごとの輪郭が崩れない。土台にはハイライフ由来の跳ね方があり、その上にロックの直進性とソウル寄りの厚みが乗る。結果として、踊れる要素と、じっくり聴く要素が同居している。
プロデュースはTony Visconti、レコーディングはロンドンのAir Studios。音像は整理されていて、各パートの抜けがよい。Roger Deanによるジャケット・イラストとバンドロゴも含めて、70年代初頭の英国プログレ周辺の空気をしっかり持っている。アートワークだけを見ればプログレの棚に自然に置かれるが、実際の内容はそれよりもリズムの比重が大きく、ファンクやジャズ・ロックの接点に近い。
アーティストの中での位置づけ
『Wɔyaya』はOsibisaの2作目であり、バンドの方向性を固めた段階の作品として重要である。デビュー作で見せた、複数のリズムが重なって一気に弾ける感覚を引き継ぎつつ、演奏の運びに余裕がある。勢いのあるバンド・サウンドを前面に出しながら、ジャズ的な間合いを取り込んでいる点が、この時期のOsibisaらしさとしてはっきり残る。
同時代の英国ロックの文脈で見ると、アフロ由来のリズムをここまで前面に出したバンドは多くない。プログレやジャズ・ロックの周辺で語られることが多いが、実際には西アフリカの音楽的感覚を英国の録音環境で再構成した作品として捉えたほうがわかりやすい。後年のワールド・ミュージック受容を先取りした、などと大げさに言う必要はないが、少なくとも国境をまたぐポップ・バンドの作り方としては先行例のひとつである。
盤の情報について
今回のUK盤はMCA RecordsのMDKS 8005。オリジナルの1971年盤として扱えるタイトルで、後年の再発盤とは区別して考えたい1枚である。MCAは当時、英国ではまだDeccaとの関係を引きずる時期にあり、この時代のUK盤はレーベル表記や流通の面でも初期MCAらしさが出やすい。作品そのものは、そうしたレーベル変遷とは切り離しても十分に強い存在感を持っている。
まとめ
『Wɔyaya』は、Osibisaの初期を代表するアルバムであり、アフロ・ロック、ファンク、ジャズ・ロックの接点を整理した作品である。タイトル曲の持つ前進の感覚、Roger Deanのアートワーク、Tony Viscontiのプロダクション、そしてロンドン録音という条件が重なって、70年代初頭の英国でしか成立しない質感にまとまっている。バンドの出自、演奏の組み立て、楽曲の広がりが、まっすぐ一つの方向を向いたアルバムである。
トラックリスト
- A1 Beautiful Seven
- A2 Y Sharp
- A3 Spirits Up Above
- B1 Survival
- B2 Move On
- B3 Rabiatu
- B4 Woyaya