Cane And Able - Cane And Able (1972)
Cane And Able『Cane And Able』
カナダ・モントリオールで結成され、アメリカを経てフランス・パリへ渡った大所帯ファンク/サイケデリック・ソウル・バンド、ケイン・アンド・エイブルのデビュー作。1972年にフランスのEpicから出た本作は、バンド名が旧約聖書の「カインとアベル」と、バンドの要である鍵盤奏者フランク・エイブルの名を掛け合わせたもの。レーベル面とジャケットには、当時のEpicらしいスターバースト仕様のロゴが配されている。
制作背景・エピソード
プロデュースは、フリージャズの名門BYG / Actuelの設立にも関わったフランスの著名ジャズ・ドラマー/プロデューサー、クロード・デルクルーが担当した。ケイン・アンド・エイブルは、1970年代初頭に自由な活動の場を求めてパリに集まっていた北米出身の黒人ミュージシャンたちのコミュニティと深く結びついており、後に「Darkest Light」などでヒップホップ屈指のサンプリング源となるラファイエット・アフロ・ロック・バンドへつながる人脈の結節点でもあった。フランク・エイブル自身もラファイエット・アフロ・ロック・バンドの主要メンバーとして後に名を残すことになる。
時代の文脈・サウンド
1970年代初頭は、スライ&ザ・ファミリー・ストーンやジミ・ヘンドリックス、ファンカデリックの活動により、ファンクとサイケデリック・ロック、アフロ・グルーヴの境界が溶け合っていた時代。当時のパリは、アメリカ本国の商業的制約から離れた実験的ブラック・ミュージックの発信地となっており、オシビサやフェラ・クティらのアフロ・ロック/アフロビートの波とも共振しながら、独自のヘヴィ・サイケデリック・ファンクが育まれていた。
サウンド面では、ファズとワウが歪む強烈なサイケデリック・ギター、唸るハモンド・オルガン、コンガやティンバレスによる土着的なアフロ・パーカッション、そして切り込む分厚いホーン隊と熱狂的なソウル・ボーカルが最大の聴きどころ。冒頭を飾る8分半の大曲「Girl You Move Me」は、怪しげなサイケデリック・イントロから怒涛のアフロ・ファンクへと雪崩れ込む圧巻のキラー・トラックである。また、クール&ザ・ギャングの「Who's Gonna Take The Weight」、ウィルソン・ピケットの「Don't Knock My Love」、ボーリン・ジャックの「Found A Child」(後にヤングMC「Bust A Move」のネタとなった原曲)といったカバー群も、原曲の骨格を解体するかのように重量級のサイケデリック・ファンクへと変貌させている。
後世への影響
1990年代以降、アシッド・ジャズやレア・グルーヴの再評価が進む中で、本作は中古市場で高値を呼ぶ「幻の至宝」「ディープ・ファンクのメガ・レア盤」として熱狂的に発掘された。特に「Girl You Move Me」は、ピート・ロックが「Truth Is」でサンプリングしたことでも知られ、現在も多くのビートメイカーやDJたちから熱烈な支持を集めている。ラファイエット・アフロ・ロック・バンドへと至るパリの黒人音楽人脈を記録した歴史的ピースとしても極めて価値が高い。
評価・チャート
発売当時はアンダーグラウンド寄りの流通にとどまり大規模なチャート実績とは無縁だったが、フランスEpicのオリジナル盤LPはレア・グルーヴ/サイケデリック・ファンク屈指のコレクターズ・アイテムとなった。後年のリイシューを通じても、ヨーロッパ録音のブラック・ロック/アフロ・ファンクにおける最高峰の一角として不動の評価を得ている。
トラックリスト
- A1 Girl You Move Me 8:30
- A2 Starchild 5:14
- A3 Who's Gonna Take The Weight 5:25
- B1 Don't Knock My Love 7:42
- B2 Green Grass 3:32
- B3 Toe Hold 3:30
- B4 Found A Child 4:28