Kali Uchis - Red Moon In Venus (2023)
Kali Uchis『Red Moon In Venus』
コロンビア系アメリカ人のシンガーソングライター/プロデューサー、カリ・ウチス(Kali Uchis)が2023年3月にGeffen/Interscopeから発表したサード・スタジオ・アルバム。世界的なバイラル・ヒット「telepatía」を生んだスペイン語アルバム『Sin Miedo (del Amor y Otros Demonios) ∞』(2020年)に続く本作は、愛と欲望、そして癒やしをテーマに、彼女の美学を余すところなく昇華させた現代R&B/サイケデリック・ソウルの傑作である。
制作背景・エピソード
アルバム・タイトルの『Red Moon In Venus』は、占星術における愛と美と女性性の象徴「金星(ヴィーナス)」と、劇的な感情の変容を促す「赤い月(ブラッド・ムーン)」に着想を得て名付けられた。カリ・ウチス本人は本作を「愛、欲望、失恋、信仰、そして誠実さを燃え上がらせるタイムレスな表現」と語っている。
制作陣には、長年彼女のサウンドを支えてきたジョシュ・クロッカー(Josh Crocker)を中心に、キャシミア・キャット(Cashmere Cat)、ワンダガール(WondaGurl)、アルバート・ハイプ、マヌエル・ララ、ダークチャイルド(Darkchild)、サウンウェイヴ(Sounwave)、UKジャズ界の名ドラマーであるユセフ・デイズ(Yussef Dayes)ら多彩な才能が集結。さらに実生活のパートナーでもあるドン・トリヴァー(Don Toliver)との「Fantasy」をはじめ、オマー・アポロ(Omar Apollo)を迎えた「Worth The Wait」、サマー・ウォーカー(Summer Walker)との「Deserve Me」など、親密で贅沢なコラボレーションが実現している。
時代の文脈
2020年代初頭のポピュラー音楽界において、英語とスペイン語を自在に行き来するバイリンガルなスタイルと、ヴィンテージ・ソウルやドリーム・ポップを昇華した独自の立ち位置を確立したカリ・ウチス。前作の世界的ヒットによってトップスターの仲間入りを果たしながらも、本作では安易なメインストリーム・ポップの潮流に流されることなく、ヴィンテージな質感のネオ・ソウルやベッドルーム・サイケデリアの深奥へと踏み込んでいる。
サウンドの聴きどころと評価
ドリーミーなシンセサイザーのレイヤー、粘り気のある甘美なベースライン、そしてカリ・ウチスのシルキーで官能的なスモーキー・ヴォイスが全編を包み込む。先行シングルとなった麗しいソウル・バラード「I Wish You Roses」から、キャシミア・キャットの手腕が光る洗練されたディスコ・グルーヴ「Moonlight」、90s R&Bの残り香を感じさせるサマー・ウォーカーとの「Deserve Me」に至るまで、極上の聴き心地を誇る。
本作は全米Billboard 200アルバム・チャートで初登場4位を記録し、Top R&B/Hip-Hop Albumsチャートでも2位にランクイン。PitchforkやRolling Stone、The Guardianといった主要メディアからも年間ベスト・アルバムに選出されるなど、2020年代を代表する洗練されたコンテンポラリーR&B/ソウルの名盤として高い評価を確立している。
トラックリスト
- A1 In My Garden...
- A2 I Wish You Roses
- A3 Worth The Wait
- A4 Love Between...
- A5 All Mine
- A6 Fantasy
- A7 Como Te Quiero Yo
- A8 Hasta Cuando
- B1 Endlessly
- B2 Moral Conscience
- B3 Not Too Late (Interlude)
- B4 Blue
- B5 Deserve Me
- B6 Moonlight
- B7 Happy Now