Cold Cave - Cherish The Light Years (2011)
Cold Cave『Cherish The Light Years』(2011)
Cold Caveは、ロサンゼルスを拠点にWesley Eisoldが率いるダークウェイヴ/シンセポップ・プロジェクト。本作『Cherish The Light Years』は、2011年にMatadorから出た2作目のフルレングスで、Cold Caveがそれまでの内向きな質感を保ちながら、より大きなスケールへ踏み出した時期の記録になっている。前身にあたるAmerican Nightmare/Give Up the Ghostでハードコア・パンクを鳴らしてきたEisoldが、Cold Caveでは電子音と歌を軸に別の緊張感を作る。その流れの中で置くと、このアルバムはかなり重要な位置にある。
制作と参加メンバー
録音は2010年10月から11月にかけて、Electric Lady Studiosを含むニューヨークの複数スタジオで行われた。プロデュースとミックスはChris Coady。Beach HouseやTV on the Radioの仕事でも知られる人物で、ここでも音の輪郭を整えつつ、Cold Caveの持つ冷たさと推進力を前に出している。コアメンバーはWesley Eisold、Jennifer Clavin、Guy Licataの3人編成。前作『Love Comes Close』で存在感のあったCaralee McElroyは不参加で、Clavinがバッキングボーカルと鍵盤を担う形になっている。
ゲスト陣も目を引く。Yeah Yeah YeahsのNick Zinner、元ChavezのMatt Sweeney、GlassjawのDaryl Palumbo、Prurient名義で知られるDominick Fernowらが参加。Eisoldの周辺にあるパンク、ノイズ、オルタナティヴの線が、そのまま作品の輪郭に重なっている。
音の印象
前作のローファイで近い距離感のある鳴りに比べると、この作品は音像が広い。シンセの層は厚く、ドラムは前に出て、歌はセンターに置かれる。80年代ゴスやニューウェイヴの記号がそのまま並ぶのではなく、アンセム的な構えに組み替えられている感じが強い。メロディは明確で、リフやビートの反復も分かりやすい一方、空気は軽くならない。冷えた質感、緊張したボーカル、硬いシンセの並びが最後まで残る。
実際に聴くと、派手な展開で押すアルバムというより、曲ごとの輪郭をはっきり立てながら積み上げていくタイプの作品として受け取れる。音数は増えているのに、感触は散らばらない。Eisoldの歌は、叫ぶというより押し込むように響き、そこにJennifer Clavinの声が加わる場面では、曲の温度が少し上がる。Cold Caveの中でも、歌の存在感がかなり前面に出た一枚。
収録曲と代表的な曲
本作には「The Great Pan Is Dead」「Confetti」「Sympathy for the Living」「Villains of the Moon」など、アルバムの性格をよく示す曲が並ぶ。とくに「The Great Pan Is Dead」は、Cold Caveの代表曲として扱われることが多く、ライブでも軸になりやすい一曲。歌詞の断片、シンセの反復、直進するビートがまとまっていて、バンドの持つ冷たい高揚感が分かりやすい。
「Confetti」は、タイトルの軽さに対して実際の鳴りがかなり硬い。「Nausea, The Earth and Me」や「Icons of Summer」も含め、曲名のイメージと音の間にずれがあるのが面白い。華やかさをそのまま出すのではなく、整えた上で少し乾いた質感に戻している。
評価と時代背景
2011年当時のCold Caveは、ダークウェイヴやシンセポップの回路を、インディー・ロック側の文脈に接続していた存在でもある。The xxやCrystal Castlesのような同時代の電子的な感触と並べられることはあっても、Cold Caveはよりパンク由来の硬さを残している。Eisoldの出自を考えると、そのまま電子音へ移行したというより、ハードコアの切迫感を別のフォーマットに移した作品として見るほうが筋が通る。
批評面では、Metacriticで26媒体平均71点を記録している。Pitchforkは7.7点を付け、Eisoldがより広い層に届くビジョンを持つアーティストとして前に出た作品と評した。大きく開いた音像と、もともとの冷たい肌触りが同居している点が、この評価につながった部分だろう。
盤の仕様
US盤はMatadorのOLE-921-1。4ページの歌詞・クレジット入りインサートが付属し、ダウンロードクーポンも同封されていた。2011年のオリジナル盤としては、作品の時期性をそのまま閉じ込めた内容になっている。
まとめ
『Cherish The Light Years』は、Cold Caveがダークウェイヴの枠の中で、より大きな曲の形を作ろうとした2011年の記録。ローファイな親密さから離れ、シンセの層、ギターの配置、歌の押し出しを整えたことで、バンドの輪郭がはっきりした一枚だ。Wesley Eisoldの来歴、ゲスト陣の顔ぶれ、Chris Coadyの仕事ぶりまで含めて、Cold Caveというプロジェクトの性格がよく見える作品として残っている。
トラックリスト
- A1 The Great Pan Is Dead 4:06
- A2 Pacing Around The Church 3:26
- A3 Confetti 5:37
- A4 Catacombs 3:22
- A5 Underworld USA 4:49
- B1 Icons Of Summer 5:50
- B2 Alchemy And You 3:28
- B3 Burning Sage 4:03
- B4 Villains Of The Moon 5:44