The Cure - The Head On The Door (1985)
The Cure『The Head On The Door』(1985) レビュー
The Cureの6作目となる『The Head On The Door』は、1985年8月30日にUKでリリースされたアルバムだ。Fiction RecordsのFIXH 11番として出た英国盤で、ロバート・スミスを中心に制作された作品でもある。前作『The Top』を経てバンドの体制が整い、サイモン・ギャラップが復帰、ボリス・ウィリアムスが加入し、ポール・トンプソンも参加した編成で録音が進められた。ロンドンのエンジェル・レコーディング・スタジオで制作され、ロバート・スミスとデヴィッド・M・アレンがプロデュースを担っている。
作品の位置づけ
このアルバムは、The Cureの中でも重要な転換点に置かれる一枚だ。初期の陰影の濃いポスト・パンク色から、曲の輪郭を前に出した作りへと進んでいく過程がはっきり出ている。本作では、収録曲のすべてをロバート・スミスが単独で作曲しており、作家性がより明確になった。バンドとしてのまとまりと、スミス個人のメロディ感覚が同じ方向を向いた時期の記録でもある。
英米双方での反応も良好だった。英国では全英7位を記録し、The Cureにとって大きな突破口になった作品として扱われることが多い。さらに初の全米トップ75入りも果たしており、UKインディー・バンドの枠を越えて存在感を広げた時期のアルバムとして見てよさそうだ。
シングル曲の強さ
先行シングルの「In Between Days」は全英15位、「Close To Me」は全英24位を記録した。どちらもアルバムの中核を担う曲で、The Cureの代表曲として触れられることが多い。「In Between Days」は軽やかなリズムとギターの刻みが前に出ていて、陰鬱さだけに寄らない構成が印象的だ。「Close To Me」は、密室感のあるアレンジと反復するフレーズが特徴で、The Cureのポップな側面と不穏さが同居している。後年のバンドに与えた影響も、こうした“暗さを保ったままポップに届く”作りに見える。
聴感上の印象
実際に聴くと、曲ごとの表情の切り替えがかなりはっきりしている。テンポや編成の変化が多く、アルバム全体は一つの色で塗りつぶされない。ベースの動きが曲を引っ張る場面も多く、ドラムの推進力も強い。そこにロバート・スミスの声が乗ることで、メロディは親しみやすいのに、空気には独特の距離感が残る。ジャケットの印象よりも中身はずっと動きがあり、曲の並びで聴かせるアルバムになっている。
特にこの時期のThe Cureは、同時代のポスト・パンク勢の中でも、Siouxsie and the BansheesやEcho & the Bunnymenのような輪郭のくっきりしたバンドと並べて語られることがある。ただ、『The Head On The Door』では、それらのバンド以上にポップソングとしての完成度が前面に出ている。英国ニュー・ウェイヴの流れを受けつつ、単なるジャンル作品に収まらない広がりがある。
UK初回盤の仕様
このUK初回盤は、白い丸形ステッカー付きのスリーブで「Includes The Hit Singles In Between Days & Close To Me」と案内されている。黒地に青文字のレーベル面、歌詞インナー付きという構成。外装はマットとグロスの2種類があり、プロモーション用として背面に金色のスタンプが入ったものも存在する。さらに一部には、店頭用のオリジナル1985年UKポスターが封入されていたという記録もある。コレクター視点では、こうした初回仕様の違いも見どころになる。
まとめ
『The Head On The Door』は、The Cureがポスト・パンクの文脈に留まらず、より広いポップ・ロックの領域へ踏み出した時期の記録だ。ロバート・スミス単独作曲という点、復帰・加入メンバーを含む新体制、そして「In Between Days」「Close To Me」というシングルの存在が、作品の輪郭をはっきりさせている。英国内の評価、チャート成績、そして後のThe Cure像へのつながりまで含めて、1985年の重要作として押さえられる一枚だ。
トラックリスト
- A1 In Between Days
- A2 Kyoto Song
- A3 The Blood
- A4 Six Different Ways
- A5 Push
- B1 The Baby Screams
- B2 Close To Me
- B3 A Night Like This
- B4 Screw
- B5 Sinking