The Doors - Other Voices (1971)
The Doors『Other Voices』(1971年・US盤)
The Doorsの『Other Voices』は、1971年10月に発表された7作目のスタジオ・アルバムである。ジム・モリソンの死後、残されたレイ・マンザレク、ロビー・クリーガー、ジョン・デンスモアの3人で完成させた最初の作品として知られている。バンド名はそのままでも、中心人物を失った直後の空気がそのまま盤面に残ったような一枚で、The Doorsというグループの次の段階を記録した作品として位置づけられる。
モリソン不在のまま進んだ制作
制作はモリソンの死の前から始まっていた。メンバーは、夏のあいだにモリソンがパリから戻ってきて歌を入れる前提で作業を進めていたが、1971年7月3日の訃報を受けて、そのまま3人で完成させることになった。アルバムではレイ・マンザレクとロビー・クリーガーがリード・ヴォーカルを分担し、従来のDoors作品とは違う役割分担が前面に出ている。スリーピースの編成でありながら、オルガン、ギター、ドラムの組み立ては崩れず、ブルースの手触りを残したまま曲が進む構成。
当時の録音には、ベースやパーカッションに複数のゲストが加わっている。レイ・ネオポリタン、ジェリー・シェフ、ジャック・コンラッド、ウィリー・ラフ、ヴォルフガング・メルツらが参加し、エミル・リチャーズのマリンバ、フランシスコ・アグアベージャのパーカッションも入る。The Doors本来の乾いたバンド感に、少しだけ厚みと広がりが足された印象。
作品の輪郭
全米アルバム・チャートでは31位を記録している。商業的には大きなヒット作ではないが、バンドが続いていく意思を明確に示したアルバムとしては重要だ。前作までのThe Doorsには、モリソンの朗読めいた歌唱、詩的な言葉、舞台性の強い緊張感があったが、『Other Voices』ではその要素が後景に退き、演奏そのものが先に立つ。ブルース・ロックの骨格が見えやすく、曲によってはファンク寄りのノリもある。
聴きどころとしてまず挙がるのは、バンドの演奏のまとまりである。モリソンの不在を埋めるために派手な装飾へ向かうのではなく、オルガンのフレーズ、ギターのリフ、リズムの推進力で曲を押し切る場面が多い。歌の存在感は以前より分散しているが、そのぶん各メンバーの役割が見えやすい。The Doorsの作品群の中では、最も“バンドで作ったアルバム”という輪郭がはっきりした一枚。
収録曲とアルバムの印象
ヒット曲中心のアルバムではないが、曲単位では耳に残る場面がある。シングルとしても知られる「Tightrope Ride」や「Ships w/ Sails」などは、モリソン期の劇的な展開とは異なる方向で、軽快さと推進力を持つ。歌詞やメロディの置き方も、従来より直接的で、演奏の流れを素直に追う作りになっている。
アルバム全体を通してみると、完成度の高さを競うというより、喪失のあとに残った3人が、どうやってThe Doorsを継続させるかを記録した作品に近い。翌1972年には『Full Circle』へ進むが、『Other Voices』はその出発点にあたる。結果として、1971年のロック史の中でも、バンドの継続と断絶が同時に刻まれた作品として読まれている。
1971年USオリジナル盤について
このUS盤はElektraの1970年代初頭の「バタフライ」期ラベルで流通した時期のもの。ジャケットはゲートフォールド仕様で、内側には3人のメンバーの白黒写真が入る。付属品として会社のインナー・スリーブと歌詞シートが付き、スリーブ上では作曲クレジットが3人まとめて記載され、各曲の詳細クレジットはレーベル面に分けて載せられている。盤面の刻印はエッチング主体で、一部にスタンピングが見られる仕様。
同じ1971年盤でも、後年の再発盤とはレーベル意匠や製造情報が異なる。オリジナルのUS盤は、The Doorsという名前の下で、モリソン後の現実を最初に形にした資料としての意味が大きい。1971年という年の空気、そしてバンドが次へ進むしかなかった状況が、そのまま刻まれたレコードである。
トラックリスト
- A1 In The Eye Of The Sun 4:48
- A2 Variety Is The Spice Of Life 2:50
- A3 Ships W/ Sails 7:38
- A4 Tightrope Ride 4:15
- B1 Down On The Farm 4:15
- B2 I'm Horny, I'm Stoned 3:55
- B3 Wandering Musician 6:25
- B4 Hang On To Your Life 5:36