Masayoshi Takanaka - Seychelles (1976)
Masayoshi Takanaka 1976

Masayoshi Takanaka - Seychelles (1976)

Jazz Latin Fusion Jazz-Funk

高中正義『Seychelles』(1976)について

『Seychelles』は、高中正義が1976年に発表した初期の代表作のひとつで、ソロ・ギタリストとしての輪郭がはっきり見えてくるアルバムだ。ジャズ、ラテン、フュージョン、ジャズファンクといった要素を含みながら、演奏の中心にはあくまでギターが置かれている。派手に技巧を見せつけるというより、リズムの上で音をどう運ぶか、どこで抜くか、どこで前に出るかが丁寧に組み立てられている作品という印象が強い。

高中正義は東京生まれの中国系日本人ギタリストで、若い頃から演奏活動を重ね、1970年代には日本のロックやフュージョンの場で存在感を強めていった人物だ。プロフィールにある通り、学生時代から演奏の場を持ち、プロとしての出発も早い。そうした経歴を踏まえると、『Seychelles』は単なるデビュー期の一枚ではなく、のちの“高中正義らしさ”につながる要素をかなり早い段階で示したアルバムとして見ておきたい。

1976年の日本のフュージョン文脈の中で

この時期の日本では、ジャズとロック、さらにラテンやファンクの感覚を混ぜたインストゥルメンタル作品が次第に広がっていた。海外ではウェザー・リポートやクルセイダーズ、ハービー・ハンコック周辺の動きがあり、日本でもそれに呼応するように、演奏の精度とグルーヴを前面に出す作品が増えていく。その流れの中で『Seychelles』は、いわゆる“和製フュージョン”の初期の一枚として位置づけやすい。

レーベルは1972年設立のKitty Records。1970年代の同レーベルは、ロックやシティポップ、インストゥルメンタルまで幅広く手がけており、『Seychelles』もそうした制作環境の中で生まれた作品と考えられる。録音年とオリジナル発売年が同じ1976年なので、当時の空気がそのまま閉じ込められた一枚として聴けるのも大きい。

タイトル曲「Seychelles」の役割

タイトル曲「Seychelles」は、このアルバムの顔になっている楽曲としてまず触れておきたい。曲名が示す通り、地名のイメージを持ちながらも、内容は観光的な情景描写に寄りすぎず、リズムとメロディの流れで引っ張っていくタイプだ。ギターは前面に出るが、常に歌い切るというより、バンド全体の推進力の中で軽やかに抜けていく。こうした作りに、高中正義の初期作品らしい機動力がある。

聴いていると、音数を増やすよりも、フレーズの置き方で景色を変えていく感覚が伝わってくる。ラテン寄りのリズム感と、ジャズ・フュージョン由来の和声感が同居していて、単独のジャンル名では収まりきらない。ここでのギターは、のちの大きなメロディ志向へ向かう前段階としても興味深い。流麗さはあるが、まだ硬質な推進力が残っているところが面白い。

アルバム全体に通じるジャズファンクの手触り

『Seychelles』全体を通して目立つのは、リズム隊の粘りとギターの切れ味だ。ジャズファンク的なビートの上に、ラテン系の打楽器感覚やフュージョンらしいコードワークが重なり、曲ごとに温度が少しずつ変わっていく。演奏はきっちり整っているが、機械的ではない。グルーヴの揺れが残っているため、音の流れに人間的な呼吸がある。

高中正義の初期作を追ううえでは、のちの明快なポップ感や、より広い層に届くメロディアスなソロ作との違いを見るのもポイントになりそうだ。『Seychelles』では、まだ演奏家としての手つきが前に出ていて、フュージョンの文脈の中で自分の音をどう立てるかを探っている段階に見える。そこに、後年の代表曲へつながる“歌うギター”の原型も確かにある。

高中正義というギタリストの出発点として

高中正義のキャリアをざっと見ると、バンド活動やセッションを経て、ソロでも強い存在感を確立していく流れがある。その中で『Seychelles』は、ギタリストとしての個性を作品単位で示し始めた時期の記録として重要だ。派手な看板曲だけで成り立つアルバムではなく、演奏の組み立て、音色、リズム感の総体で聴かせる内容になっている。

同時代の海外フュージョンと比べると、アメリカ勢の洗練された都会性とは少し違い、日本の作品らしい緻密さと、どこか身体感覚の近いノリが感じられる。そうした差も含めて、『Seychelles』は1976年の日本のインストゥルメンタル音楽を知るうえで外しにくい一枚だ。高中正義の名前を最初期からたどるとき、ここはかなり早い段階で立ち止まる価値のある作品だろう。

トラックリスト

  1. A1 Oh! Tengo Suerte 4:14
  2. A2 トーキョー レギー 4:20
  3. A3 蜃気楼の島へ 3:37
  4. A4 憧れのセーシェル諸島 6:07
  5. B1 Funkee Mah-Chan 5:00
  6. B2 サヨナラ...... Fuji さん 4:27
  7. B3 バードアイランド急行 3:43
  8. B4 Tropic Birds 8:49

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