Morrissey Mullen - Happy Hour (1988)
Morrissey Mullen 1988

Morrissey Mullen - Happy Hour (1988)

Jazz Fusion Jazz-Funk

Morrissey Mullen『Happy Hour』について

『Happy Hour』は、サックス奏者ディック・モリシーとギタリストのジム・マレンによる英国のデュオ、Morrissey Mullenが1988年に発表した作品である。リリース国はUK、レーベルはCoda RecordsのCODA 29。ジャンル表記はJazz、スタイルはFusion、Jazz-Funkとなっており、実際にもジャズを軸にしながら、ファンク由来のリズム感やフュージョン期らしい滑らかな演奏感が前面に出る一枚である。

Morrissey Mullenは、1970年代の英国ジャズ・ロック/ジャズ・ファンクを代表する組み合わせとして知られる。ディック・モリシーはIfでの活動でも知られ、ジム・マレンはAverage White Band周辺を含む英国ファンク寄りの文脈でも存在感を示した。こうした経歴を持つ二人が組むことで、ブラス・セクションを大きく立てるタイプの派手さよりも、サックスとギターの掛け合い、リズムの粘り、コードの流れを重視した音像が形になっている。

作品の位置づけ

『Happy Hour』は、Morrissey Mullenの活動の終盤に置かれる作品である。AllMusicでは、1988年の本作の後に解散したとされており、長く続いた共同作業の一区切りに当たる。1970年代から積み上げてきた英国ジャズ・ロック/ジャズ・ファンクの流れが、80年代末の時点でどの地点にあったのかを示す記録として見ると、意味の大きいアルバムである。

グループの代表作としては『Badness』『Life on the Wire』『It’s About Time』などが知られているが、全英チャートで大きく跳ねたタイプではない。本作『Happy Hour』も商業的な大ヒット作というより、活動の最終局面でまとめ上げられた作品として受け止められている。1988年12月3日号のMusic WeekにはCodaからのジャズ作品として掲載されており、当時の新譜として流通していたことが確認できる。

レーベルと時代背景

発売元のCoda Recordsは、Beggars Banquet傘下のレーベルとして1983年から1989年まで活動した。新しい音楽ジャンルとして台頭していたニューエイジを英国で扱うために立ち上げられた経緯があり、落ち着いた音楽性の作品が多く並ぶレーベルとして知られている。その中で『Happy Hour』が出ている点は、80年代後半の英国インディペンデント・レーベルが、ジャズやフュージョンのような領域も受け止めていたことを示している。

レコードには「Contemporary Jazz」と記されており、収録曲はすべてKeeper Of The Garden Music Ltd.発行、ただしB3のみCongress Music Ltd.となっている。こうしたクレジットからも、アルバム全体が当時の英国ジャズ/フュージョンの実務的な制作環境の中で組み立てられていたことがうかがえる。

サウンドの印象

この作品の核は、モリシーのサックスとマレンのギターが前に出る編成にある。そこにジョン・モールのベースが加わることで、音の隙間を埋めすぎず、しかし推進力は保つというバランスが作られている。ジャズ・ファンクの作品によくある、リズムの反復だけで押し切る作りではなく、フレーズの受け渡しや曲ごとの展開に意識が向いている点が特徴である。

80年代後半の英国フュージョン作品として聴くと、派手な電子音や当時のクロスオーバー系ポップスに寄せた処理よりも、演奏そのものの手触りが残る。Morrissey Mullenの持ち味は、技巧の誇示よりも、長年の呼吸が揃ったアンサンブルにある。本作でもその性格は変わらず、サックスとギターが並走する場面にこのグループらしさが出ている。

同時代とのつながり

文脈としては、英国のジャズ・ロックやジャズ・ファンクの系譜に置かれる作品である。同時代の英国では、Soft Machine以降のジャズ・ロック、If、Nucleus、Brand Xのような流れがあり、そこからファンクやソウルの感覚を強めた演奏が広がっていた。Morrissey Mullenはその中でも、演奏の密度とソウル寄りのグルーヴを両立させた存在として見られてきた。

また、彼らの活動は、後の英国ジャズ・ファンクやスムーズなフュージョンを聴く際の参照点にもなっている。直接的な派手さより、リズムの置き方と旋律の運びで聴かせる点に、英国らしい実直さがある。『Happy Hour』は、その到達点を静かに示すアルバムとして整理できる。

まとめ

『Happy Hour』は、Morrissey Mullenの長い共同作業の最後を飾る1988年作であり、英国ジャズ・ファンク/フュージョンの一つの節目に置かれる作品である。大きなヒット作ではないが、ディック・モリシーとジム・マレンが積み重ねてきた演奏の関係性、そして1970年代から続く英国ジャズ・ロックの流れを、80年代末の時点で記録したアルバムとして存在感がある。Coda Recordsというレーベルの性格も含め、当時の英国インディー・ジャズの空気がそのまま封じ込められた一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Other Streams
  2. A2 Singing In The Acid Rain
  3. A3 Where?
  4. A4 Blueprint
  5. B1 Happy Hour
  6. B2 E-Scape
  7. B3 That's Jazz
  8. B4 Watch This Space

動画プレイリスト

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