Eddie Kendricks - People...Hold On (1972)
Eddie Kendricks 1972

Eddie Kendricks - People...Hold On (1972)

Funk / Soul Soul

Eddie Kendricks『People...Hold On』レビュー

テンプテーションズの主要メンバーとして知られるEddie Kendricksが、ソロ・アーティストとして存在感を強めていく時期の作品が、この1972年作『People...Hold On』だ。ファルセットを軸にした歌声で知られる彼は、グループで培った滑らかな歌唱をそのままソロ表現へ移し替えながら、70年代のソウル/ファンクの空気の中で自分の輪郭をはっきりさせていく。Tamlaからのリリースという点でも、モータウン系の洗練された作りと、当時の黒人音楽の新しい流れが接続された1枚として見やすい。

このアルバムは、Eddie Kendricksにとってソロ転向後の重要な段階にある作品だ。グループ時代のイメージが強い歌手ではあるが、1970年代のソロ活動では、より個人の声を前面に出した表現が目立つようになる。本作もその流れの中にあり、メロディの運びと歌の抜けの良さが中心にある。聴き進めると、派手に押し切るタイプではなく、細かいフレーズの置き方や、声の高低の使い方で引っ張る作りがはっきりしている。

作品の位置づけ

1972年は、モータウン周辺のソウルがグループ中心の時代から、ソロ歌手が自分の色を打ち出す方向へ進んでいた時期でもある。Eddie Kendricksはその中で、滑らかなファルセットを武器に、同時代のソウル歌手たちの中でもかなり独自の立ち位置を持っていた。Diana RossやMarvin Gaye、Smokey Robinsonのように、モータウン出身の個性派がそれぞれのソロ像を作っていく流れの中で、この作品もその一角に置ける。

タイトルにある「People...Hold On」という言葉も、時代の空気をよく反映している。社会の動きが速く、音楽もより直接的なメッセージを持ち始めていた時期で、ソウルのアルバムにもメッセージ性の強い曲名やテーマが増えていた。本作はそうした時代感を背負いながらも、Eddie Kendricksらしい歌の柔らかさを保っているところが特徴だ。

注目曲「Keep on Truckin'」

このアルバムを語るうえで外せないのが「Keep on Truckin'」だ。Eddie Kendricksのソロ代表曲として広く知られていて、彼のキャリアの中でも最も大きなヒットのひとつに数えられる。曲の骨格はシンプルだが、反復するリズムと歌の持続力が前へ進む感覚を作っている。ファルセットの伸びが、ただ高い音を出すだけではなく、曲全体の推進力として働いているのが分かる。

聴いていると、コーラスやリズム隊の支えの上に、Eddie Kendricksの声が軽く乗るのではなく、むしろその声が曲の中心を引っ張っていく印象が強い。テンプテーションズ時代の整ったハーモニーとは違い、ソロでは彼自身の声の質感がそのまま主役になる。ここではその個性が非常に分かりやすい形で出ている。

注目曲「Day by Day」

「Day by Day」は、ヒット曲ほどの即効性はないものの、アルバムの中でEddie Kendricksの歌の運び方をじっくり味わえるタイプの曲だ。フレーズを急がず、言葉を置くように進めていく歌い方が印象に残る。テンポ感に頼るのではなく、声のなめらかな流れで聴かせる構成になっているため、彼の持つソウル歌手としての基礎がよく見える。

この曲では、感情を大きく振り回すより、一定の温度を保ったまま歌を積み上げていく感じがある。そこがEddie Kendricksらしさでもある。テンプテーションズの華やかなアンサンブルを離れても、彼の歌が十分に成立することを示す1曲として置いておける。

アルバム全体の聴きどころ

『People...Hold On』は、派手なコンセプト盤というより、ソロ・シンガーとしてのEddie Kendricksの声を軸にした作品として見やすい。曲ごとの性格は違っていても、全体を通すと歌の滑らかさが統一感を作っている。ファンク寄りのリズム感が前に出る場面でも、歌そのものはあくまで端正で、そこにモータウン系の整った制作感が重なる。

同時代のソウルで言えば、より泥臭さを前に出すタイプとも、強いグルーヴを押し出すタイプとも少し違う。Eddie Kendricksは、そうした中で声の美しさとリズムの相性を丁寧に示していく人で、このアルバムもその持ち味がよく出ている。Tamla盤らしい音のまとまりもあり、1972年のソウル・アルバムとして筋の通った1枚だ。

結果として『People...Hold On』は、Eddie Kendricksがソロ歌手として歩みを固めていく時期の記録として見ると分かりやすい。大きなヒット曲を含みながら、アルバム全体でも彼の声の個性がぶれずに通っている点が印象的だ。テンプテーションズのファルセット・リードとして知られた歌手が、ソロの場でどのように自身の表現を組み立てたか、その輪郭が見えやすい作品になっている。

トラックリスト

  1. A1 If You Let Me 3:10
  2. A2 Let Me Run Into Your Lonely Heart 2:59
  3. A3 Day By Day 3:07
  4. A4 Girl You Need A Change Of Mind 7:30
  5. A5 Someday We'll Have A Better World 3:35
  6. B1 My People...Hold On 5:40
  7. B2 Date With The Rain 2:42
  8. B3 Eddie's Love 3:20
  9. B4 I'm On The Sideline 2:56
  10. B5 Just Memories 5:50

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