Funkadelic - Let's Take It To The Stage (1975)
Funkadelic『Let's Take It To The Stage』(1975)レビュー
George Clinton率いるFunkadelicが1975年にWestbound Recordsから発表した7作目のスタジオ・アルバムが『Let's Take It To The Stage』だ。Funkadelicは、同じくClintonの周辺から生まれたParliamentと並んで、1970年代のファンク文化を形作った存在として知られる。この作品は、Westboundでの最後のアルバムでもあり、バンドの流れの中でもひとつの区切りに置かれる一枚になっている。Billboard 200では102位、R&Bアルバム・チャートでは14位を記録した。
長尺のジャムから、曲の輪郭が見える方向へ
初期のFunkadelicといえば、サイケデリック・ロックの感触を強く残した長い演奏、崩れたグルーヴ、雑多な音の重なりが印象に残るが、このアルバムではそうした要素を保ちながらも、曲のまとまりがはっきりしている。演奏の切れ味が前に出ていて、リズムの置き方も整理されている。P-Funkの土台はそのままに、曲単位での推進力が強い作り。ロックとファンクが同じ盤面でぶつかり合うというより、ひとつのバンド・サウンドとして噛み合っている感触がある。
実際に聴くと、全体の流れはかなりタイトだ。音数は多いのに、各パートがむやみに広がらず、ベースとドラムが先に立つ場面が多い。そこへギターやキーボード、コーラスが鋭く差し込まれる。派手さだけで押し切るタイプではなく、細かいフレーズの積み重ねで引っ張る構成。前作までの延長線上にありながら、より明確に「曲を聴かせる」方向へ寄っている。
表題曲のディス感覚と、P-Funkの言葉遊び
タイトル曲「Let's Take It To The Stage」は、このアルバムを代表する一曲だ。ライバルのファンク・バンドを皮肉った内容として知られ、当時のシーンに対する挑発がそのまま曲の推進力になっている。ヒップホップ以前のラップ的な語り口の先駆けとして語られることも多い。単なる悪口ではなく、リズムの上で言葉を転がし、ビートに乗せて相手を切るところに、この時期のFunkadelicらしさが出ている。
この曲の面白さは、メッセージの強さと演奏の軽やかさが同居している点にある。重いテーマを抱え込まず、むしろ笑いを含んだ攻撃性で進む。Funkadelicが持つブラック・ユーモアと、P-Funk特有の芝居がかった語り口がよく出た楽曲だ。
「Be My Beach」と「Get Off Your Ass And Jam」
「Be My Beach」では、Bootsy Collinsによるジミ・ヘンドリックスを思わせるボーカル・スタイルが目立つ。Bootsyの持ち味はベースだけでなく、声の処理にも表れていて、この曲ではそのキャラクターが前面に出る。演奏の重心は低いままなのに、歌のふるまいがどこか跳ねていて、Funkadelicの中でもかなり個性の強い場面になっている。
「Get Off Your Ass And Jam」は、後年のヒップホップで何度も参照された一曲として重要だ。Public Enemyなどによるサンプリングで知られ、P-Funkが後のブラック・ミュージックに与えた影響を示す素材にもなっている。ギターソロにまつわる逸話も有名だが、この曲自体の価値は、短い言葉と鋭いバンド・ヒットで一気に押し切る構成にある。ファンクの切迫感がそのまま録音されたような勢い。
Funkadelicの中での位置づけ
このアルバムは、FunkadelicがWestbound時代に残した作品群の締めくくりとして見ると分かりやすい。サイケデリック色の強い初期作から、より洗練されたP-Funkへ向かう途中に置かれた作品で、バンドの語法が整理されていく過程が見える。George Clintonを中心に、Bootsy Collins、Bernie Worrell、Eddie Hazel、Garry Shider、Junie Morrisonら、多数のメンバーが関わる大所帯ならではの厚みもあるが、ここではその人数の多さが散漫さではなく、まとまった圧力として機能している。
1970年代半ばのファンクは、Sly StoneやJames Brownの流れを受けつつ、より自由な形へ広がっていた時期でもある。その中でFunkadelicは、ロックの歪み、ソウルの身体性、ファンクの反復をひとつに混ぜ、独自の立ち位置を作っていた。この作品は、その混合がかなり整理された形で表れた盤として確認しやすい。派手な実験性だけでなく、演奏の精度と曲の輪郭が前に出る一枚。
まとめ
『Let's Take It To The Stage』は、Funkadelicの持つ混沌と鋭さが、比較的コンパクトな曲作りの中でまとまったアルバムだ。タイトル曲の挑発、Bootsy Collinsの存在感、そして「Get Off Your Ass And Jam」に残る後世への波及まで、1975年時点のP-Funkの輪郭がはっきり見える。Westboundでの最終作という位置づけも含めて、バンドの変化がそのまま刻まれた記録になっている。
トラックリスト
- A1 Good To Your Earhole 4:30
- A2 Better By The Pound 2:40
- A3 Be My Beach 2:35
- A4 No Head, No Backstage Pass 2:36
- A5 Let's Take It To The Stage 3:32
- A6 Get Off Your Ass And Jam 2:00
- B1 I Owe You Something Good 5:43
- B2 Stuffs & Things 2:11
- B3 The Song Is Familiar 3:05
- B4 Atmosphere 7:05